CMSの今までとこれから
CMSには、どんな歴史があり、どんな未来が待っているのでしょうか。3つの時期の観点から、機能や役割の変遷、CMSの将来像についてまとめました。
黎明期 (2000─2005)
ブログツールの高度化とWebCMSのはじまり
まず、インターネットの一般普及はWebとともに始まり、’90年代後半にはホームページづくりが流行しました。個人も企業もWebサイトを開設すること自体を目的としている中、個人が日記のようにWebを更新するようになってブログが始まります。米国ではRadio UserLandやBloggerなどのツール、サービスが登場しました。
2000年過ぎからブロードバンドの普及が本格化します。2001年には、Movable Type(以下MT)が登場、ブログツールでありながらRDBMSを利用し、CMSの要素を取り込んでいたため人気を博しました。同時期にWordPressやDrupalなど多くのツールが登場し、ブログがブームとなりました。背景には、LinuxやBSDなどPC向けUNIX環境が登場し、低価格化したことも要因でしょう。
さらに、’00年代中盤より企業が活用する動きも出てきます。ブログを利用していく中で、ブログツールをWebサイト構築用のCMSとして利用すれば、サイト運営のハードルが下がるのではと気づいたわけです。
定着期 (2005─2020)
企業利用の一般化と高まる重要性
ブログの登場以降、Webコンテンツの流通量が爆発的に増大し、検索サービスの重要性が増し、SEOも重要視されるようになります。ブログサイトに特徴的なパーマリンクや内部リンクがSEOに効果的であったことから、SEO目的の企業利用も進みましたが、CMSとしてみると機能面での割り切りも必要でした。2010年代に進むにつれ、Webの普及と歩調をあわせるように機能が増え、あらゆる規模の企業で使われ始めます。
2010年代は、すでに「Webは当たり前」という時代です。スマートフォンの普及、SNSの流行もあり、さまざまなWebマーケティングツールも登場しています。そういった状況から、Webコンテンツの鮮度を保ち、高度に管理する役割を担うCMSの重要性も自ずと高まりました。
一方、クラウドの普及やマーケティング目的でのWebの利用が増えることで、導入や立ち上げのスピード感がより求められるようになりました。CMSの用途も目的もそれぞれ異なり複雑です。用途にあったCMSを導入するためには、より一層、目的の明確化が求められるようになっています。
発展期? (2020─
進む多様化と用途の拡がり
2010年代後半から、さまざまなCMSで「APIの整備」が進みました。アプリやサイネージなど、Web以外へのコンテンツ配信も行われているほか、マーケティング活用のために、他のシステムと連携する動きもあります。より柔軟で高い表現力を求めてCMSとパブリッシングを分離するヘッドレス化も進んでいます。現状、制作の敷居は低くありませんが、今後、汎用的な仕組みが登場すれば、もっと拡がっていく可能性があります。
また、製品コンセプトの多様化は今後も進みそうです。各製品がそれぞれ進化を模索しており、例えば、MTは「コンテンツをより整然と管理すること」、SaaS型のMT.netは「高機能なWebCMSを広く使ってもらうこと」を志向しています。そのほか、高度化・複雑化するもの、より簡易さを求めるものなど、CMS市場の拡大とともに方向性も多種多様です。
一方、「情報を整理する」「出力先に最適化する」といったCMSの得意な領域は、例えばAIの学習データ管理やIoT機器との連携など、新しい用途にも適しており、今後こうした事例も増えるかもしれません。そもそも未来は読めない部分も多いですが、その分、楽しみでもあります。
Text:編集部