《2026|Web制作の現在地 Vol.2》佐々木祐真(アイスリーデザイン)が描く、AI時代のデザイナー像とは?

変化のスピードが速まるなか、Web制作・開発の現場は、いまどこに立っているのでしょうか。2025年を振り返りながら、2026年をどう見据えるのか。現場で向き合う人たちの言葉を手がかりに、現在地を探っていきます。第2回は、株式会社アイスリーデザインで執行役員 デザイン部部長を務める佐々木祐真さんにお話を伺いました。
プロフィール

佐々木 祐真
株式会社アイスリーデザイン
株式会社アイスリーデザイン 執行役員 デザイン部部長。 武蔵野美術大学卒業後、同社に入社。UI/UXデザインを専門とし、BtoB/BtoC問わず大規模なサービス開発やアプリのリニューアル、デザインシステムの構築を多数手掛ける。現在はデザイン組織のマネジメントに加え、AI駆動開発とデザインの融合による新たな開発プロセスの実践・推進に従事している。
2025年、制作の前提はどう変わったのか?
昨年のもっとも大きな変化は、生成AIの活用が「実験」から「現場の標準」へと浸透してきたことです。特にCursorなどのバイブコーディングツールの普及や、Figma to Codeの進化は、私たちを「デザインをコードに書き写す」という現代の写経から解放しつつあります。
その結果、UIデザイナーはフロントエンド領域へ、喜んで、あるいは半ば強制的に染み出していくことになるのだと思います。とはいえ、だからといってFigmaが不要になったわけではありません。私たちの頭の中にある抽象的なイメージを定着させるツールとしては、依然として最適な存在です。
これからは、Figmaを「正」とする従来のワークフローを見直しながら、コード生成までを含めた新しいデザインの作法を模索していく必要があります。デザイナー自身も、旧来的なデザイナー像から離れる覚悟と勇気を持たなければならない––––そう強く感じた1年でした。
制作の現場で浮かび上がった課題感
特に感じている課題としては、AIにおける「文脈の維持」と「ソースの質」です。AIは局所的なコード生成やデザイン出しを得意とする一方で、情報量が増えるにつれて文脈を保つことが難しくなり、プロジェクト全体のような「大きな文脈」を継続的に扱うのは不得意です。
人間同士であれば阿吽の呼吸で通じていたことも、AI相手ではそうはいきません。意図どおりに動いてもらうためには、入力以前の段階で「ソース(情報源)」をきわめてロジカルに再構築する必要があります。
つまり、仕事の重心を「作る」ことから、AIが迷わないための「コンテキストエンジニアリング(文脈設計)」へとシフトしていかなければなりません。
加えて、AIはもっともらしい成果物を高速で提示してくるため、それをビジネス価値に照らして瞬時に判断する「目利き」の力も不可欠です。「設計」と「検品」という、最もカロリーの高い上流と下流だけが人間に残された──それが、いまの現場におけるリアルな感覚だと捉えています。
2025年を通して、あらためて重要に思ったこと
デザインシステムは、人間よりもAIに読ませるためにある──そんな側面が、これからはより強まっていくのかもしれません。つまり重要になるのは、「マシンリーダブルであること」です。
これまでのデザインシステムは「人間が参照するルールブック」として設計されてきましたが、正直なところ、そのガイドラインをどれほどの人が熟読していたでしょうか。多くの現場が、運用面で課題を抱えていたはずです。
AI時代において、デザインシステムは「人間へ啓蒙して活用するもの」ではなく、「AIへの命令セット」として機能させるべきだと感じています。AIに一貫性のある出力をさせるためには、曖昧な指示ではなく、システム化されたルールを読み込ませる必要があります。
単にコンポーネントを整備するだけでなく、AI駆動開発を前提とした「AIが正しく解釈・実行できるインフラ」としてデザインシステムを再定義すること。その重要性を、あらためて痛感した1年でした。
2026年を迎えて、意識したい仕事のあり方
デザイナーは、ビジュアルだけを作る「お絵描き」のような仕事から卒業しなければならないと思います。また、世間からの認知としても、そのような存在から脱却し、アップデートを図る必要があります。AIに的確な実装を任せるためには、デザイナー自身がビジュアルだけでなく、データモデルや挙動のロジックなども理解する必要があります。
これは「AIのためのインフォメーションアーキテクチャ」の一環と捉えられますが、要はAIに対する「教育係」としてのスキルです。単一の画面を描く作業よりも、システム全体のエコシステムを設計し、AIとエンジニアを迷わせない「設計図」を引く。クリエイターというよりは、現場監督のような立ち回りが、今後さらに強化されていくことでしょう。
いま制作に向き合う人たちへ
面倒な作業をすべてAIに任せられることは、喜ばしいことだと思います。
AIの進化によって「つくる」ことのハードルは下がりましたが、それによって私たちの仕事がなくなるわけではありません。むしろ、面倒な作業をAIに任せることで、本来注力すべき「ユーザー体験」や「本質的な課題解決」に、より多くの時間を使えるようになったと捉えるべきです。
新しいツールや変化に、過度に身構える必要はありません。便利なパートナーとしてAIを使いこなしながら、人間ならではの「こだわり」や「偏愛」というノイズを混ぜ込んでいく。そうやって生まれるクリエイティブのほうが、きっと仕事としても面白いはずです。
文:木村浩康(Flowplateaux)
