《2026|Web制作の現在地 Vol.3》天辰一希(アクセンチュア)が考える、AIと並走するフロントエンドの現在地

変化のスピードが速まるなか、Web制作・開発の現場は、いまどこに立っているのでしょうか。2025年を振り返りながら、2026年をどう見据えるのか。現場で向き合う人たちの言葉を手がかりに、現在地を探っていきます。第3回は、アクセンチュア株式会社 / ゆめみでフロントエンドエンジニアを務める天辰一希さんにお話を伺いました。

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プロフィール

天辰 一希
アクセンチュア株式会社 / ゆめみ フロントエンドエンジニア

2025年2月株式会社ゆめみ入社、同年12月には経営統合に伴いアクセンチュア株式会社にジョイン。Web開発業務に従事の傍ら、社内にFigma MCP研究チームを立ち上げ、Figma AIの研究開発や顧客向けFigma MCPデモセッションを通してFigmaプラットフォームの推進に取り組んでいる。

2025年、開発の前提はどう変わったのか?

2025年を振り返って、最も大きかった変化は、Figma AIによってもたらされた開発プロセスの進化です。

2025年6月にFigma MCP Serverのベータ版が公開され、AIエージェントがFigmaのデザインファイルから直接デザインコンテキストを取得できるようになりました。これにより、デザインから実装へのハンドオフは大幅に減少しています。さらに、2025年10月のSchema 2025ではFigma MCP Serverが正式リリースされ、全ユーザーが利用可能となりました。

加えて、Remote MCP ServerやCode Connect UIといった機能も追加され、今後さらに活用の幅が広がるイメージを持っています。Figma MCP Serverだけでなく、Figma Makeを活用したプロトタイプ開発を前提とした開発プロセスの変化にも注目しています。

これら一連の進化によって、デザイン設計の意図を保ったまま、よりスピーディに実装を進められるようになりました。その結果、現場における作業効率と品質の双方が、大きく向上したと感じています。

開発の現場で浮かび上がった課題感

2025年を通して特に「課題感」を覚えたのは、生成AIツールの進化に対して、キャッチアップできている人とそうでない人の差が、急速に広がった点です。

新しい生成AIツールが次々と登場するなか、個人レベルでは「生成AIをどう使いこなすか」が問われる状況になりつつあります。一方で、チームや組織全体にその前提を共有していくことには、大きな労力が伴います。

その結果、生成AIを積極的に活用する人と、そうでない人のあいだで、生産性やアウトプットの質に明確な差が生まれた一年だったと感じています。

この課題は、生成AIツールそのものというよりも、学習コストや心理的ハードル、さらには「どのように業務へ取り入れるべきか」という判断基準が曖昧なまま進んでしまったことに起因しています。Web制作やフロントエンドの現場全体に共通するテーマだと捉えています。

2025年を通して、あらためて重要に思ったこと

2025年にあらためて「重要だ」と気づいたのは、デザインの意図や背景を正しく理解し、それを適切に生成AIへ渡すことでした。

生成AIを活用した開発が当たり前になるなかで、生成AIにとって最も難しい工程は、マークアップであることを強く実感しています。そこで2025年は、特にFigma MCPに着目し、研究を重ねてきました。

生成AIを使ってマークアップ実装を行う場合、単に見た目を再現するだけでは不十分です。なぜその構造や振る舞いが必要なのかといった文脈を理解しない限り、品質の高いアウトプットにはつながりません。

一方で、デザイン意図や背景を適切に整理し、Figma MCPやCode Connectを活用して生成AIにデザインコンテキストを渡すことができれば、実装のスピードだけでなく、品質も大きく向上させられると感じました。

人が担うべき「理解」と「判断」の部分を、どれだけ丁寧に扱えるか。その姿勢こそが、今後の開発において、ますます重要になっていくと考えています。

2026年を迎えて、意識したい仕事のあり方

2026年に向けて、より意識して取り組むべきだと感じているのは、個人最適ではなく、チーム全体で生成AIを使える状態をつくることです。

2025年を振り返ると、生成AIを積極的に活用できる人と、そうでない人の差が、そのまま生産性やアウトプットの差として顕在化する場面が増えました。生成AIは個人の工夫だけでも一定の効果を発揮しますが、現場全体の成果につなげるためには、チームとして共通の前提や判断基準を持つことが不可欠だと感じています。

どの工程で生成AIを使うのか、どこは人が判断すべきなのか。あるいは、デザイン意図や背景をどのように整理して渡すのか。こうした考え方を共有できなければ、生成AIの活用は一部の人に留まってしまいます。

今後は、ツールの使い方そのものだけでなく、生成AIを前提とした開発プロセスや思考の流れを、チームに浸透させていくことに、より意識的に関わっていきたいと考えています。フロントエンドエンジニアとして、実装とデザイン、そしてAIをつなぐ橋渡し役を担うことが、2026年に向けた自分の役割だと捉えています。

いま制作に向き合う人たちへ

いま現場にいる人へ伝えたいのは、「生成AIの進化に追いつけていなくても、悲観する必要はない」ということです。生成AIの進化は非常に速く、不安や焦りを感じる場面も多いと思いますが、すべてを完璧に理解してから取り組む必要はありません。

むしろ、生成AIが進化すればするほど、実装スピードや一定水準の品質だけでは、プロダクト間の差がつきにくくなっていくと感じています。その結果、他のプロダクトと差別化するうえで、デザインはより重要な要素になっていくでしょう。

今後は、デザインの意図や背景を理解し、それを実装へと正しくつなぐ力が、これまで以上に求められていくはずです。見た目を再現するだけでなく、なぜその構造や体験が必要なのかを説明できる人が、現場で価値を発揮していくと考えています。

デザインと実装の両方に関わるフロントエンドエンジニアだからこそ、その橋渡し役としての強みを活かせる時代が来ている──そう感じています。

文:天辰一希(アクセンチュア)

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