《2026|Web制作の現在地 Vol.4》小玉千陽(ium)が見つめる、変わりゆくデザイナーの役割

変化のスピードが速まるなか、Web制作・開発の現場は、いまどこに立っているのでしょうか。2025年を振り返りながら、2026年をどう見据えるのか。現場で向き合う人たちの言葉を手がかりに、現在地を探っていきます。第4回は、ium inc. 代表を務めるアートディレクター/デザイナーの小玉千陽さんにお話を伺いました。

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プロフィール

小玉 千陽
ium inc.

ium inc. 代表/アートディレクター/デザイナー。高校時代からデザイナーを志し、東京工業大学で建築を学びながらグラフィックデザインを修学。広告代理店でのアートディレクター経験を経て、2017年にデザインスタジオium inc.を設立。CI/VI、Web、グラフィックを横断し、企業やプロジェクトの本質に向き合うディレクションを行う。

2025年、制作の前提はどう変わったのか?

2025年を振り返ると、やはり一番大きかった変化は、AIの存在だと思います。デザイナーとして、AIとどう向き合うのかを、良くも悪くも避けられない1年でした。

生成AIの進化によって、一定水準以上の「それっぽい」アウトプットには、誰でも短時間で辿り着けるようになっています。だからこそ、単に形をつくること以上に、「なぜこのプロジェクトをやるのか」「どこを目指しているのか」といった、仕事の前提そのものを考える時間が増えたと感じています。

デザイナーに求められる役割や期待も、アウトプットの巧さだけでなく、意味や方向性を設計する側へと、少しずつ移行してきた1年だったと思います。

制作の現場で浮かび上がった課題感

2025年を通して強く感じた課題は、思考の深度とスピード感を、どう両立させるかという点です。

クライアントの方々もAIを使いこなし、デザインへの解像度が上がるなかで、アウトプットに対するクオリティやスピードへの期待値は、確実に高まっています。その一方で、私たちが本来力を発揮すべき「考える」という行為を、疎かにするわけにはいきません。

効率化できるところは徹底的に効率化しつつ、深く考えるべき判断には、きちんと時間をかける。そのバランスをどう取っていくかは、私自身まだ試行錯誤している部分でもあります。今後は、チームとしてその目線をどう揃えていくかが、大きな課題だと感じています。

2025年を通して、あらためて重要に思ったこと

2025年を通して、あらためて重要だと感じたのは、デザイナーという立場で「決めること」に責任を持つ姿勢です。

誰もが選びやすい正解や、データの蓄積から導き出される妥当な答えだけでは、どうしても辿り着けない場所がある。そう感じる場面が、以前よりも増えました。

それでも「これが良い」と判断し、そのための説明や責任をきちんと引き受けること。その行為こそが、人間が人間のためにつくるデザインの価値なのではないかと、思うようになりました。

説明できるかどうか、そして決め切る態度そのものが、仕事の強度を左右する。そう実感した1年でした。

2026年を迎えて、意識したい仕事のあり方

2026年に向けては、個人では辿り着けず、かといってAIが得意とする大量のデータ処理だけでも生まれないものを、どうチームとしてつくっていくかを、より意識していきたいと思っています。

感覚的な部分を曖昧なままにせず、ときにはぶつかり合いながら擦り合わせていくこと。そのプロセスを丁寧に積み重ねることで、iumというチームならではの強度を持ったデザインが生まれていくのではないかと感じています。

考え方や感覚を共有すること自体が、これからの仕事の基盤になっていく。そんな実感があります。

いま制作に向き合う人たちへ

AIによってできることが増え、答えに辿り着くスピードも、かなり速くなりました。だからこそ、これからの現場では「何をつくるか」以上に、「何を感じているか」「どう捉えているか」「何を信じたいのか」が、より大切になってくると思っています。

迷いながらでもいいので、一度自分なりにドシンと構えて立ってみること。その立ち位置を言葉にして、周りと共有しながら進んでいくことで、仕事は単なる制作を超えたものになっていくはずです。

正解を当てにいくよりも、前提を問い、考えながら決めていく。そのプロセス自体を楽しめると、デザインの面白さは、もっと広がっていくのではないかなと思います。

文:小玉千陽(ium)

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