【Q&Aで現場力アップ!】UX視点のWebデザイン制作 実践講座(準備編)

近年、Web制作においてUXを意識する重要性が高まっています。しかし、具体的にはどうすればよいか、悩むデザイナーも少なくないでしょう。よいUXに貢献するWebデザインの考え方・つくり方を、UI/UXデザイナーの金成奎さんにおうかがいしました。(『Web Designing 2025年10月号』より抜粋)
プロフィール

金 成奎
プロダクトデザイナー/UIデザイナー/Webデザイナー
早稲田大学第一文学部卒業後、Webデザイナー/UIデザイナーとして事業会社、広告代理店、制作会社などで経歴を重ねる。行政・保険・交通・教育などの分野でコーポレートサイト、サービスサイト、業務アプリケーションなど、デジタルプロダクトのUIデザイン・ビジュアルデザイン・アートディレクションを数多く手がける。
https://x.com/seikei_kin
スマートフォンの普及で変化した
プロダクトとユーザーの“関わり方”
WebデザインにおいてUXが重視されるようになった一つの大きな要因に、スマートフォンの登場が挙げられます。
それ以前のWebは、パソコンの前に座り、ブラウザ上で操作・閲覧されるものでした。また、利用方法も、情報収集のための閲覧やお問い合わせフォームの入力程度のものであり、ユーザーの利用状況を考慮する必要は多くはありませんでした。
しかし、スマートフォンの広がりにより、その風景は一変します。スマートフォンは私たちの生活の一部となり、場所や時間を選ばず、エンターテイメントやヘルスケア、SNSなど、さまざまな分野でアプリケーションが利用されています。
こうした変化の中、アプリケーションなどのプロダクト開発においては、ユーザーがプロダクトを用いるシチュエーション、画面上での操作、ユーザーとプロダクトのタッチポイント(ユーザー行動の中での接点)、そしてユーザーがプロダクトに求める価値など、さまざまなことを考えなければ、真に価値のあるものを提供することが難しくなってきました。
その結果、ユーザーを中心にプロダクトを捉える視点が、今日の「UX(ユーザー体験)」として認識されるようになったのです。そしてそれは、プロダクトと密接な関係を持つWebデザインとも無縁ではありません。
コモディティ化する
Webデザイン
加えて、Webデザイン自体の「コモディティ化」も、もう一つの要因として挙げられるでしょう。
Webにおけるデザインや制作の技術もひと通り成熟すると、純粋にスペックだけを追求していた時代はやがて限界に近づきます。電化製品などと同様で、高性能や多機能なだけでは使ってもらえない、むしろ人間の理解能力を超えてしまい、それを使いこなせない場合もあります。
だからこそ、利用するユーザーのニーズやペイン(課題や困りごと)に寄り添うデザインが求められるようになりました。
UXは難しくない!
その本質は「ユーザーに寄り添う」こと
近年、UXに関するさまざまな理論やリサーチ方法が提唱されており、UXは、なにか特別で複雑なことのように感じるかもしれません。しかし、その根本は、ユーザーに寄り添い、より満足できる利用体験を提供する姿勢にあります。
それは、デザイナーであれば自然と身についている所作や態度であり、決して難しいものでも新しいものでもないのです。
準備編|UXリサーチをデザインプロセスにどう組み込むか?
主なUXリサーチの概要と役割を理解しよう
デザイン制作に入る前に、UXに関連して行われるリサーチやタスクを、制作フローとひもづけて見ておきましょう。
実際のリサーチに関わらずとも、質の高いアウトプットを出すには、デザイナーもリサーチの意義を知ることは不可欠です。何を目的に、何に着目して調査しているのかを理解することは、デザインに必要なデータを読み解くのに役立ちます。

1UPを目指す!実践Q&A
Q. デザインに向けて、リサーチをどのように読み解けばよいかわかりません。
A. ユーザーのイメージや望ましい体験を設計する。
具体的な制作に入る前に、リサーチや企画書から、つくるべきもののインプットとなる情報を整理しましょう。具体的には、❶企画内容(現状の課題や理想など)、❷制作物(デバイスやコンテンツなど)、❸ユーザー、❹ビジネスオーナー(CIや競合など)の観点から分析していきます。
特にユーザーに関しては、左図に挙げたリサーチの内容を参照し、ユーザーのニーズやペイン(課題や困りごと)、プロダクトの利用シーン、達成したい目標・理想などを把握し、ユーザーイメージをしっかりつかみましょう。
どのようなユーザーであり、どのような体験をしてほしいのか。準備段階でユーザーに対する解像度を上げていくことが、UX視点での制作に繋がります。
Q. デザイナーとしてリサーチに貢献するためには?
A. 目に見える「形」をつくって議論のきっかけをつくろう。
デザイナー主導で、簡単なビジュアル案やモックアップなど、実際に見たり触ったりできるものをつくって、ステークホルダーをうまく議論に巻き込みましょう。
ゼロベースの議論は難しくとも、なにか「形」があれば、それに対する要望や不満などは比較的容易に出てきます。それを足掛かりにすることで、建設的なヒアリングや、より本格的なユーザーリサーチへの移行もスムーズに行えるでしょう。
また、リサーチは公開後も続く作業です。実際のリアルなユーザーの声やリアクションを取り入れてデザインを改善していく。そのためにデザイナーもデータに敏感になっておく。それもUXのために行うデザイン作業の一つです。
書誌情報

著作:金 成奎
書籍:2,739円
電子版:2,739円
B5:272ページ
ISBN:978-4-8399-83000
発売日:2025年03月03日
<内容紹介>
最適なウェブサイト・アプリケーションのデザイン決定方法を論理的に解説!
「機能性」と「情緒性」という観点からウェブデザイン‧UIデザインの方針を策定することで、使いやすさや便利さとビジュアルのクオリティを両立でき、高品質なデザインを実現できます。結果として、ステークホルダー間でデザインの合意形成がしやすくなりプロジェクト全体の成功に寄与できます。デジタルプロダクトの設計‧開発に関わる、全ての関係者にとって、円滑なプロジェクト進行を実現するための手がかりとなる一冊です。
ウェブサイトやアプリケーションなど、デジタルプロダクトの現場では、作業者にとってはデザイン案がなかなか承認されない、評価者にとってはチェックする基準が曖昧なため的確なフィードバックが難しいなど、作業者と評価者の間で認識の齟齬が生じる場合があります。プロジェクトの進行に支障をきたしたり、品質に問題が生じることも少なくありません。
これらの課題解決のために、本書ではデザインを「機能性」と「情緒性」という2軸で捉え、ウェブデザイン‧UIデザインの方針と基準を策定し、その方針と基準に則ってデザインを作業を進行するメソッドを解説します。その結果、使いやすさや便利さとビジュアルのクオリティを両立できる、高品質なデザインが実現でき、以下のような効果が期待されます。
‧ デザインに対する合意形成が促進され、手戻りや修正作業を削減することができる
‧ 関係者間の認識の齟齬の未然に防ぎ、円滑にコミュニケーションを行うことができる
‧ 最終的な成果物に対する品質や満足度を上げ、プロジェクト全体の成功に貢献できる
本書で示した手法を参考にすることで、デザイン制作を円滑に進め、デザインをより論理的に捉えることのできるデザインの考え方=思考法がきっと身に付きます。
取材・文:原明日香(アルテバレーノ)
