《2026|Web制作の現在地 Vol.10》カイト(KITERETZ inc.)が考える、制作会社の存在価値の再定義

変化のスピードが速まるなか、Web制作・開発の現場は、いまどこに立っているのでしょうか。2025年を振り返りながら、2026年をどう見据えるのか。現場で向き合う人たちの言葉を手がかりに、現在地を探っていきます。第10回は、株式会社キテレツ代表のクリエイティブディレクター/デザイナー/開発者であるカイトさんにお話を伺いました。
プロフィール

カイト
KITERETZ inc.
株式会社キテレツ(KITERETZ inc.)代表。クリエイティブディレクター/デザイナー/開発者。高校時代をシアトルで過ごし、早稲田大学商学部卒業後、ファッション、グラフィック、ウェブなど複数業界で、デザインからプログラミングまで幅広く経験を積み独立。ブランド設計、マーケティング、ウェブサイト制作、フロントエンド開発まで一貫して手がける。WordPress、React、Astro などの OSS へ貢献するほか、自身でも複数のオープンソースを開発している。
https://kiteretz.com
2025年、制作の前提はどう変わったのか?
実務におけるAIの活用が、最も大きな変化でした。アイデア出しや整理、調査・分析、コンセプトの文章化、各種書類の作成といった思考と言語化のプロセスから、イメージ生成やコピーライティング、コードのサジェスト、プロトタイプ制作、さらにはプロダクションレベルの実装まで、ほぼすべての工程にAIが入り込んだ1年だったと感じています。
その結果、アウトプットの初速と量は、以前と比べて劇的に向上しました。一方で、早く、多くつくれるようになったからこそ、「何を、どのようにつくるべきか」を定める設計力や、最終的なクオリティを担保する細部へのこだわりが、より重要になったとも実感しています。
制作の現場で浮かび上がった課題感
制作会社としての存在価値が、あらためて問い直される時代に入ったと感じています。単に「つくる」だけでは代替可能になりつつあるなかで、どこまで上流に踏み込むべきなのか。あるいは、制作や技術の専門性をさらに研ぎ澄ませる方向に進むべきなのか。もしくは、まったく別の選択肢があるのか。その最適解を探り続けています。
また、自社プロジェクトもいくつか進めていますが、受託業務と並行するなかで、十分な時間を確保できているとは言い難い状況です。その間にも、世の中はAIによって猛スピードで変化していく。焦りと現実とのバランスをどう取るかも、大きな課題だと感じています。
さらに、メンバーも増え、マネジメントや社内教育についても、常に試行錯誤を重ねています。
2025年を通して、あらためて重要に思ったこと
あらためて重要だと感じたのは、「ダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)」です。簡単に言えば、環境の変化に合わせて組織を進化させていく力のことです。
技術やトレンドは、猛烈なスピードで更新されていきます。従来のやり方に固執すれば、あっという間に取り残されてしまう。自社の強みや組織文化といった土台を大切にしつつ、必要に応じてやり方や役割を柔軟に変えていく姿勢が欠かせないと感じました。守るものと変えるものを見極めながら、環境の変化に合わせて自分たちをアップデートし続けることが、組織にとって不可欠だと実感しています。
2026年を迎えて、意識したい仕事のあり方
AIの活用によって初速はかなり速くなりました。だからこそ、まずは素早く形にして検証し、その分の時間をより本質的な部分に充てていきたいと考えています。調査や分析、企画の精度を高め、設計の解像度を上げ、細部に向き合い、クオリティをもう一段引き上げることに、より多くの時間を費やしていきたい。
また、AIによってさまざまなハードルが下がり、試行錯誤のコストも確実に低くなりました。これまで時間やリソースの制約によって踏み出せなかった新しい分野にも、より積極的にチャレンジしていきたいと考えています。
いま制作に向き合う人たちへ
技術の進化や環境の変化があまりにも速い時代のなかで、誰もが焦りや不安、迷いを感じていると思います。未来がどうなるのか、何が正解なのかは、誰にも断言できません。
悩み続けて立ち止まるよりも、まずは行動することが重要だと感じています。やってみて違ったら修正すればいい。遠回りに思えた経験も、後から振り返れば必ず糧になります。僕自身も、これまでたくさん遠回りをしてきました。
どんな時代であっても、完璧な答えを探すより、前に進みながら学び続けることのほうが大切だと思います。行動したことが無駄になることはない。僕はそう信じています。
文:カイト(KITERETZ inc.)





