
プロダクトマネージャーを仕事領域を視覚化した「プロダクトマネジメントトライアングル」の重要性
ユーザーリサーチは行っている方の中には、「いまいち施策への落とし込み方がわからない」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。そこで、書籍『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版』の著者であるリサーチャー・菅原大介さんに、ユーザーリサーチの意義や手法について聞きました。第3回目は、開発者・ビジネス・ユーザーの3者間に存在する業務領域を俯瞰で捉えるための「プロダクトマネジメントトライアングル」の重要性を解説します。
執筆者

菅原 大介さん
リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で出版社の学研を経て、株式会社マクロミルで月次500問以上を運用する定量調査ディレクター業務に従事。現在は国内有数規模の総合ECサイト・アプリを運営する企業でプロダクト戦略・リサーチ全般を担当する。著書に『ウェブ担当者のためのサイトユーザー図鑑』(マイナビ出版)、『売れるしくみをつくる マーケットリサーチ大全』(明日香出版社)がある。
プロダクトマネージャーの役割機能を補完するメリット
よくある課題:プロダクトマネージャーのロールが不在のまま運営が進む
プロダクト運営組織ではしばしばプロダクトマネージャーのロールが不在のまま運営が行われます。ビジネス・UX体験・テクノロジーに明るく、プロダクトをトータルでディレクションできるという人材要件はそもそもが希少です。
この状況下では一般的には開発マネージャーがその役割を代行・兼務対応していくことになりますが、役割定義が曖昧なままにこの体制が常態化してしまうと、管轄の開発部門では受け入れプロジェクト数に限度が出てしまいます。
特に課題となりやすいのは開発以前の領域です。事業目標(KGI・KPI)は存在していても、その前提となる提供価値やビジョンが不明瞭だったりすると、いくら数字を上げてもインパクトのあるグロースに至らない事態に陥ります。
リサーチがあると、プロダクトのWhy&Whatを導くデータを準備できる
リサーチスキルを持っていると、プロダクトのWhy&Whatを導くデータを揃えて、提供価値やビジョンの議論を前進させることができます。判断や実行はさておき、エビデンスの整理まではメンバー総員で集めることができます。
この時に活用したいドキュメントが「プロダクトマネジメントトライアングル」です。開発者・ビジネス・ユーザーの3者間に存在する業務領域を俯瞰で捉え、当事者部門の中間に位置する重要業務の存在を全員で認識するのです。
ユーザーリサーチはこの中の一つの業務領域でもありますが、リサーチの手法を通じて生み出す成果物の貢献領域は広く、プロダクトロードマップ、ビジョン、デザイン、デジタルマーケティング、広告、市場調査などで役立ちます。
プロダクトマネジメントトライアングルとは?
概要
プロダクトマネジメントトライアングルとは、プロダクトマネージャーの幅広い仕事領域をトライアングルの図で示したアウトプットです。
この図では三角形の3つの頂点にDevelopers(開発者)、The Business(ビジネス)、Users(ユーザー)を配して、その中心にプロダクト(プロダクトマネージャー)を据える構成になっています。

そして各頂点を結ぶことでできる横断的な領域を以下で説明するA・B・Cの業務領域として定義しています(図表の通り、責任領域・役割設定をCxOで捉えるとわかりやすいかと思います)
プロダクトマネジメントトライアングルの構成要素は、以下のようになります。
1.Aの領域(開発者とユーザーの間)
・コミュニティマネジメント
・ソーシャルメディアマーケティング
・SEO
・ユーザーリサーチ
・ウェブアナリティクス
・デザイン
2.Bの領域(開発者とビジネスの間)
・予算管理
・プロダクトロードマップ
・投資家対応
・ビジネスビジョン
・テクノロジーライセンス
・プロジェクトマネジメント
3.Cの領域(ビジネスとユーザーの間)
・事業開発
・広告
・マネタイゼーション
・戦略的パートナーシップ
・マーケットサイジング
・ビジネスモデル開発

書誌情報

- 定価(紙/電子):3,179円(税込)
- B5変:416ページ
- 978-4-8399-85554
- 発売日:2024年10月22日
Text:菅原大介