《ウェブデザインの思考法#1》「機能性」と「情緒性」を軸に、デザインの「方針」を策定する

UIデザイナー/Webデザイナーの金成奎さんによるデザインのメソッドを体系化した書籍『ウェブデザインの思考法【第2版】』(マイナビ出版)が、2025年3月3日に発売されました。同書では、デザインを「機能性」と「情緒性」という2軸で捉え、Webデザイン‧UIデザインの方針と基準を策定し、その方針と基準に則ってデザインを作業を進行するメソッドを解説しています。今回は同著より、「デザインの方針策定の全体像」について、一部抜粋・再編集してお届けします。

著者

目次

方針策定の準備をする

企画内容・オーナー・プロダクト・ユーザーの視点からプロジェクトを調査・分析する

まずはデザインの方針を策定する前の準備段階の作業です。デザインの方針を正しく策定するためには、対象となるプロジェクトについて深く理解することが重要です。プロジェクトの前提の理解が曖昧であったり誤っていたりすると、デザインの方針も的外れなものになってしまいます。

具体的には企画内容・オーナー・プロダクト・ユーザーという4つの視点から対象となるプロジェクトを多角的に調査・分析し、得られた情報をもとにデザインの方針を具体化していきます。

デザインの方針を策定する

デザインの「方針」とは何か

プロジェクトを調査し全体像を把握したら、その前提を踏まえて「このプロジェクトにとって最適なデザインとは何か? どういった点に配慮してデザインすべきか?」を深く掘り下げて考えます。これがデザインの方針策定作業の核心部分です。

ここで「デザインの方針」とはどのようなものなのか、改めて考えてみましょう。デザインの方針とはつまるところ目指す方向性、つまり「どのようなデザインにするか」ということです。いくつか平易な書き方で例を挙げてみます。

・かっこいいデザインにする
・かわいいデザインにする
・シンプルなデザインにする
・使いやすいデザインにする
・楽しいデザインにする
・覚えやすいデザインにする
・すっきりとしたデザインにする
・分かりやすいデザインにする
・おしゃれなデザインにする
・使う人にとって便利なデザインにする

デザインは機能性と情緒性で構成されている

こうして色々な方針の例を見てみると、「どのようにデザインにするか」の「どのような」の部分、すなわちデザインに求められる役割や効果は大きく2つの種類に体系化できそうです。

例えば「使いやすい」「分かりやすい」「覚えやすい」。これはより使い勝手が良くなる・便利になるといった機能に関わる役割や効果のことです。一方、「かっこいい」「かわいい」「おしゃれ」。これは便利さや使いやすさとは直接関係のない、そのプロダクトに触れた時に感じる印象や心の機微、感情や情緒に関わる反応のことです。

つまり、デザインの役割や効果は、有用さや機能に関わるものと、感情・情緒に関わるものに二分することができます。

本書では前者を「機能性」、後者を「情緒性」として定義します。ウェブデザイン・UIデザインとは、プロジェクトの目的を達成し課題を解決するために、使いやすさや便利さを実現する機能性と、魅力を感じたり感情が動くような体験を提供する情緒性を、ユーザーインターフェース上に設計する行為なのです。

機能性と情緒性からデザインの方針を検討する

そして本書では、この「機能性」と「情緒性」をデザインの方針を考える上での切り口・軸として活用していきます。つまり、今回のプロジェクトにおけるデザインは使いやすさや分かりやすさという機能面でどうあるべきか、かっこよさやかわいさといった情緒面でどのような点に気をつけるべきか。この2つの視点からデザインで目指すべき方向=方針をまとめていきます。

方針とあわせて、方針を達成するための「基準」も策定する

また、方針だけでは実際にデザインに落とし込み、可視化する上では具体性に欠け不十分です。そこで、方針を達成するために「基準(方針を達成するために具体的にやるべきこと・守るべきこと)」も、方針とあわせて設定していきます。デザインの「方針」と「基準」が揃うことで、作る側も評価側もデザインで達成すべき品質や向かうべき方向を正しく把握することできます。

書誌情報

ウェブデザインの思考法【第2版】

●定価(紙/電子):2,739円(税込)
●判型:B5/272ページ
●ISBN:978-4-8399-83000
●発売日:2025年3月3日

「機能性」と「情緒性」という観点からウェブデザイン‧UIデザインの方針を策定することで、使いやすさや便利さとビジュアルのクオリティを両立でき、高品質なデザインを実現できます。結果として、ステークホルダー間でデザインの合意形成がしやすくなりプロジェクト全体の成功に寄与できます。デジタルプロダクトの設計‧開発に関わる、全ての関係者にとって、円滑なプロジェクト進行を実現するための手がかりとなる一冊です。

【第2回|《ウェブデザインの思考法#2》企画内容・オーナー・プロダクト・ユーザーの視点から、プロジェクトを徹底的に調査/分析する】

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