データで見渡すCMSの現状

誰でも簡単にWebサイトのコンテンツを運用・管理できるのが「CMS」です。しかし、自社以外が何のCMSをどのように使っているのかを知ることは案外難しいものです。そこで、ここではWeb解析のさまざまな調査データからCMSの現状を知るための数値やトレンドについて解説します。

オープンソース系CMSはWordPressが圧倒的

CMS(Content Management System)はWebサイトを管理・更新できるシステム全般のことを指します。そのため、広い意味ではブログサービスやSNSもCMSに含まれます。そこで、ここでは「CMSツール」として認知されているサービスを対象とした市場シェアを調べてみました。

調査会社によって多少結果は異なりますが、オーストリアのQ-Success社が運営する「W3Techs」によれば、オープンソース系のCMSである「WordPress」が2010年の調査開始以来、常に6割以上の市場シェアでトップを維持しています(図1)。また、同調査では800種類以上あるとされるCMSツールのうち、612種類をモニターしていますが、600以上が市場シェア1%未満となっています。

日本国内のCMS市場シェア調査はW3TechではWordPressが93%、次いで「Adobe Dream weaver」(3.4%)「EC-CUBE」(2.5%)となっていますが、こちらは開発者向けのプロファイリングサービス「BuiltWith」による調査(図2)と併せて見ていくと実態を捉えやすいと考えられます。

(1)グローバルのCMSシェア

W3Techsが全世界を対象にモニターしているWebサイトのうち、CMSに利用されているツールの首位はオープンソース型の「WordPress」となっています https://w3techs.com

(2)日本国内のCMSシェア

国内でCMSを利用するWebサイト6万3,950件のうち、首位はWordPressでした。グローバルと異なり「Jimdo」や「MovableType」など国内での利用率が高いツールがあるのも特徴です  https://trends.builtwith.com/cms/country/Japan

商用CMSは規模や目的で選ばれる

CMSツール全体のシェアとしては1割にも満たないのですが、もうひとつの重要な存在が主に法人向けに提供されている「商用CMS」です。こちらは企業や組織がWebサイトに求める目的や規模感によってさまざまなソリューションが提供されています。

例えば、数万ページ以上が必要なエンタープライズ分野で存在感を示しているプラットフォームとして、アドビ システムズの「Adobe Experience Manager」や、「Acquia」「Hippo」「Sitecore」などが挙げられます(図3)。

また、数千ページ程度までの中~大規模サイトに適したCMSで、国内における金額ベースでのシェアが高いものとしては「HeartCore」「NOREN」などが挙げられます。また、それよりもやや小規模向けの「WebRelease」や「PowerCMS」も知られています(図5)。

なお、商用でも比較的予算規模が小さく総ページ数が50ページに満たない場合には、オープンソース系CMSの「Drupal」や「WordPress」、EC向けでは「EC-CUBE」などが採用される傾向もあります(図4)。

提供形態はクラウドや仮想専用サーバで利用するSaaS(Software as a Service)やオンプレミスで自社サーバにインストールするタイプなどさまざまです。

(3)商用CMSの格付けランキング

リサーチ会社Forresterでは「実効性」「戦略」「市場影響力」の3軸で評価する「Forrester Wave」を発表しています。商用CMSの分野では評価の高い順に「リーダー」「ストロングパフォーマー」「コンテンダー」と分類しています  

(4)ECに特化したCMS

CMSには汎用的なものと機能特化型のCMSがあります。市場シェアや価格だけではなく目的に合ったCMSを選択することが重要です。図はECサイト構築に特化したオープンソース系CMS「EC-CUBE」です 

(5)国内の主要な商用CMSマップ

商用CMSはWebサイトのページ数や目的、運用体制や予算規模によって適切なスケーラビリティ(規模感)があります。ここでは参考として日本国内で用いられる主な商用CMSを紹介します。参考とした資料では各ツールが得意とするゾーンが図のように配置されています

CMSの裏側で用いられるテクノロジー

W3Techsの調査では、CMSのバックグラウンドで用いられているテクノロジーの利用率や市場シェアについても公表しています。全世界的な傾向調査のため、市場シェアの高いWordPressで標準的に用いられている技術が採択される率が高くなりますが、細かな技術トレンドを見ていくと数年単位で順位の変化が生じていることもあります。このトレンドはエンジニアのみならず、マーケティング担当者もチェックしておきたいところです。

例えば、サーバサイドのプログラミング言語として「PHP」はトップシェアですが、伸び率としてはスクリプト言語の「Ruby」が2番目に位置しています。また、クライアントサイドのスクリプト言語はモバイル化の進展に伴いFlashのシェアは減り続け、JavaScriptが9割以上を占めています(図6)。

また、アドネットワークは「Google Ads(旧称AdWords)」、アクセス解析は「Google Analytics」と定番のGoogleサービスが高い利用率を示しています。しかし、SNS連携では2019年4月2日に一般向けの「Google+」のサービスが終了するなどの動きもあり、CMSの管理担当者はこうした技術トレンドにも適切に対応していく必要があります。

(6)CMSで使用されているプログラミング言語

CMSがどのような言語で開発されているかは開発者でなくても知っておきたいところ。WordPressで用いられているスクリプト言語でもある「PHP」は全体の約8割近いサイトで利用され、拡張機能(プラグイン)の開発にも用いられています 2019年1月現在、W3Techsより

(7)マーケティング関連でのCMS利用状況

CMSを利用しているサイトのうち、アドネットワークはGoogle Adsが94.8%の圧倒的シェアを誇っています(利用率は28.6%)。SNSとの連携はFacebookとTwitterが拮抗しています。また、アクセス解析は55.7%のサイトがGoogle Analyticsを利用しています 2019年1月現在、W3Techsより

Text:栗原亮

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