One’s View テーマ「ファシリテーション」 小島香澄さん

 本記事は、2021年8月発売号の『Web Designing』に掲載された「One’s View」の再掲記事です。

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会議は苦手…だからこそできた!

 今回のテーマ「ファシリテーション」は、苦手意識を持っている方も多いのではないかと思います。私自身も苦手意識が強く、そもそもファシリテーターはおろか、会議で発言することもできず、一言も発さないまま会議が終わる…なんてこともしばしばありました。


 そんな私ですが、ほとんど勢いで「職場にたった一人のデザイナー」に転職した結果、デザインの方向性や制作の打ち合せなどで必然的にファシリテーションをしなければならない立場になりました。以前の職場では、必ず上司が同席していたので、議論が滞ってしまったときにはサポートしてもらえたり、ヒントを教えてもらえる環境でしたが、現在の職場では、手探りで進めていくという道しか残されていません。「全く準備をせず会議に臨んだ結果、時間内に何も決まらない」「脱線した議論を元に戻せず、今必要ではない議論に時間が割かれてしまう」といった失敗も、初心者ファシリテーターとして何度か繰り返しています。

 丸2年以上試行錯誤を繰り返し、最近ようやく自分の中で比較的上手くファシリテートできたと思ったのが、社内で進めているプロジェクトの会議です。代表も含めて参加者5名程度の小さな会議ですが、事前のタイムスケジュールやアジェンダの共有が功を奏して、なんとか決めたかったことを引き出せたのではないかと思っています。
 

 冒頭で「一言も発さないまま会議が終わったことがある」と書いたのですが、その根底には、「発言したいけど、これって誰でも思いつく当たり前のことだよな」とか、「こんなしょうもないこと発言したら、時間が無駄になりそう」といった不安が少なからずありました。今回の会議でも、参加者に「こうしたテーマで話すので、頭の片隅で考えておいてください」と事前に告知していたのですが、やはり実際に会議が始まると議論が止まってしまうことも…。自分自身の経験上、議論が止まってしまうときは「自分事として捉えられていないとき」や上述した「発言に対する周りの反応への不安」が大きな理由だと感じていたので、「ちょっとずれてるかも、と思っても大丈夫なので、思ったことを話してみてください」と伝えてみたり、もらった意見やキーワードに対して、「それってどういうところからそう感じましたか?」と深堀りしてみたり、一つひとつの発言になるべく寄り添う形で進めていきました。


 本当はタイムスケジュール通りに進めたかった部分もありますが、多少の脱線に目を瞑ったりしながら、全員が対等に発言できる会議であることを最優先に進めました。私自身が会議での発言に苦手意識があったからこそ、同じく苦手な人が発言しやすくなる会議の場づくりがイメージしやすかったのかなと思います。苦手意識や数々の失敗も、ここに来て捨てたものではないと感じることができました。


 などと、上手くまとまったように書いたのですが…会議が終わったあとに「ここの議論、まだ詰めが甘かったな」という部分も出てきたので、理想形には残念ながらまだまだ遠いです。とはいえ、こうした小さな成功体験ができたことで、これまでの失敗が報われたような気がしています。根底にある苦手意識をうまく活かす視点も持ち、会議での失敗や成功の体験を重ねながら、これからもファシリテーションスキルの向上に試行錯誤していきたいです。

アジェンダ・タイムスケジュールはSlackで参加者に事前送付。なかなかこの通りには進みませんでしたが、おおまかな目安として共有できていたことで、参加者全員で会議のイメージを持っておくことができました。議題が公開前の内容だったため、ぼかしが多くてすみません…

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