One’s View テーマ「EC」 三瓶亮さん

 本記事は、2021年6月発売号の『Web Designing』に掲載された「One’s View」の再掲記事です。

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“ こだわるショッパー” のカスタマージャーニー

 最近、オンラインでの買い物が少しストレスになってきました。買いたい商品が定まっているときは特に問題ないのですが、例えば誰かにギフトを贈りたい場合など「買わなければならないけれど、何を買うか決まっていない」時が困ります。


 私は購入するものは自分用・ギフト問わず、何かとこだわりたい派で「◯◯に喜ばれるギフト◯選」のような記事を読んだときに、できれば上位などからは選びたくないという、天邪鬼なタイプです(笑)。そういう人間にとって、ネットでのショッピングというのはなかなか大変なのです。


 検索をすればアフィリエイト目的のレコメンド記事が大量にヒットしますし、大手ECサイトのギフト特集なども一通り巡回します。商品がピックアップできたら、それぞれの商品の口コミなどももちろん見ていきます。最近ではYouTubeのレビューなども有用です。このように情報がいくらでもあるのは助かるのですが、逆に情報が揃いすぎて、購入の決め手に迷ってしまうことが多くなってきました。


 結果、買い物自体がとても面倒くさいものとなってしまっています。ワクワクしたい買い物なのに「あぁ、選ばなきゃいけないなぁ…」という気持ちの方が強くなってきました。


 コロナ前の買い物でそんな気分になることはありませんでした。我が家ではギフト選びをしたい時には街へ出て、デパートなどを歩き回りました。それはそれで効率は悪いのですが、今思えば買い物体験自体は良いものだったように思います。


 そこで、いい機会なのでオンラインの買い物体験で失われているものが何なのかを、改めて考えてみました。
 一つは「能動的に見つける」という体験です。以前はギフトコーナーや、それらしき商品がありそうなフロアに行くことで、偶然に思いもよらない商品に出会うことがありました。もちろん、ネットでもそういった出会いは可能だと思うのですが、ここで大事なのはそれを「自分で発見する」という体験です。


 ネットだと商品を「発見した!」という感覚よりも「レコメンドされた」という感覚の方が前に来る場合が多く、主体性に欠けるのです。これは最終的な意思決定をする時に大事な「直感」や「思い入れ」のような部分になるのだと思います。


 もう一つは「購入時・購入後の接客」です。私はギフトを選ぶ時に積極的に店員さんの意見を聞く派です。どうせ接客していただくなら、その方個人のオススメや一般的な売れ筋などの情報もあわせて知りたいので、誰に向けたギフトを探しているかなどの情報もすべて伝えます。


 ここでフォーカスしたいのは、買う商品を決める時、そして決めた後の接客対応についてです。そもそも私は優柔不断なので、店員さんの意見を参考にします。大事なのは、その場で私が悩む一連の流れを見ていたコンテクストのある店員さんが、意見をくれるという場面です。また、同じ店員さんが購入後も「きっと喜ばれると思います」と掛けてくれる一言により、何よりも「これでよかったんだ」と安心しているのだと気づきました。これはオンラインの買い物で得づらい体験かと思います(もちろん、そういったコンシェルジュ的なECサービスもあるかとは思いますが)。


 こう考えてみると、オンラインでのショッピングでもまだできることがあるかもしれません。私のこのジャーニーは決してマジョリティではないとは思いますが、こだわる人が対象のECサイトなどは、何かしら“クセのあるジャーニー”が背景にあるかもしれません。

先日好きなバンドのSNS 経由で、バンド名などが一切書かれていない怪しげなECに出くわしました。そこには燃えているハシゴの写真と「VINYL(アナログレコードの意)」のテキストだけ。興味本位で購入してみたら、そのバンドによる新譜レコードでした。「なんとなくそうかな」と思いつつも、少しドキドキクセのある購入体験でした(笑)

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