One’s View テーマ「オンラインセミナー」 三瓶亮さん

 本記事は、2021年10月発売号の『Web Designing』に掲載された「One’s View」の再掲記事です。

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オフラインとオンラインの棲み分け

 オンラインでのイベントやセミナーが当たり前な世の中になってきました。去年などはまだ「ウェビナーってどうやるの?」「オンラインのお作法って?」と言っていた人たちも今や息を吸うようにウェビナーを開催しているのではないでしょうか。


 私自身も必要あればオンラインでのイベントやワークショップを開催することもあるのですが、さんざんオフラインでのイベントを開催してきた身としては、やはりいくらやってもオフラインの価値は再現できないと感じることが多くあります。


 そこで今回のコラムではオンラインやオフラインでイベントを開催してきた身として、双方のメリット・デメリット、どう使い分けていけばいいのかを改めて考えていきたいと思います。

 まずはオンラインですが、何よりのメリットとして参加への敷居の低さが上げられるます。ちょっと気になってZoomのリンクをクリックすれば参加できるのは、ユーザーにとっても圧倒的に効率的ですし、参加モチベーションがそこまで高くない人でも気軽に参加できるのは大きなメリットでしょう。


 ただ、裏を返せばすぐ離脱できてしまうのがデメリットです。覗き見したい程度で参加できる代わりに、退出してしまえばそれでさようなら。場合によっては同日同時刻でイベントが被った場合、ユーザーはブラウザの別ウィンドウで他のイベントも視聴している可能性すらあります。つまり、ユーザーのエンゲージメントが低いということです。参加者同士の交流やつながりを意識しづらいのも、その構造に拍車をかけています。


 対して、オフラインのメリットはその逆です。オフラインの最大のメリットはユーザーエンゲージメントの高さやインタラクティブ性です。登壇者のみならず、参加者同士での交流が望めるという点で、オンラインとは大きく違います。参加者としては同じような関心のある仲間と出会う可能性がありますし、運営者としてはその対象ユーザーと触れ合ったり、観察したりできることが大きなメリットです。


 もちろんデメリットは時間・場所的な制限が生まれてしまうこと。参加者は交通費を出して会場に赴かねばならないですし、運営者は会場を確保しなければならないのは想像に難くないところでしょう(ただ、デメリットとも言い切れない点としては、そうまでして来ていただくゆえに参加者のモチベーションが保たれるという捉え方もできるかもしれません…)。


 双方のメリット・デメリットを簡単に触れてみましたが、ではどのように棲み分けていけばいいのでしょうか。
 まず、オンラインに関しては一方的な情報発信が主体のイベントが向いています。先にも触れたようにユーザーのエンゲージメントを求めるようなイベントは不利です。浅く広くアプローチできるので、知らない人に知ってほしい場合など、少しでも気になる人に見てもらいたい時には有用でしょう。


 それに対しオフラインは、より参加者のコミットメントやインタラクションが求められるものが向いています。運営目的としてはテーマやトピックに関心ある人と繋がりたい時や、用意したコンテンツの反応を見たい時などはオフラインの方が得るものは多いでしょう。労力を割いて足を運んでくれる参加者がいるので、ながら見の参加者よりかは得られるインサイトは多いはずです。そう考えると、ワークショップや交流を用意した方がリターンは大きいと考えられます。


 オフラインはなかなか開催できない状況ではありますが、目的によって使い分けできるとより効果的なイベント運営ができることでしょう。

以前に私が主宰した「UX MILK Fest 2019」では、地べたに座れるようなスペースを設け、友人などと座って雑談しながらセッションを聞けるようにしました。一方向ではなく、参加者が互いに対話する余白を生むのがオフラインの魅力です

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