中小ECサイト運営者が、今取り組むべき6つの施策●特集「ECサイト、次に打つべき6つの施策」

激動のEC時代の始まり

2016年、ECは激動の波に飲み込まれている。モールプラットフォームの変化、モバイルファーストからモバイルオンリーへの急速なシフト、超高速化してトルネードのように情報が乱れ飛ぶソーシャルメディア‥‥そんななかでEC市場は着々と成長している。

今の時代、このように大きな市場に成長する業界はほかになく、それゆえ、これまで本格参入していなかった企業も本腰を入れてきた。一方で、クラウドの普及が進み、今まで高額だったサービスが無料になったり格安になってきて導入しやすくなってきている。そういったサービスやツールを使った自動化や省力化は、特に中小のECサイトには福音であり、必須の武器になるはずだ。

本特集では、悩めるECショップの運営者に向けて、「SNS集客」「決済」「ステップメール」「チャット」「多店舗展開」「倉庫・物流」における「次に打つべき6つの施策」を紹介していく。

 

まずは現状把握をしよう

ECサイトの改善を考える際、まずは現状がどうなっているかの見直しが必要になる。現状を確認せずに、いきなり対策を行うのは非常に危険だ。たとえば、アクセスが減ってきたからといって、たまたま営業を受けた会社にSEOやリスティング広告を依頼すると、間違いなく失敗する。社内でアクセス分析のデータを収集し、何が原因であるのかを洗い出すことが先決だ。これをやらずに、ただ単に広告費用をかけても何もならない。

また、受注業務はボトルネックとなりやすいところだ。たとえば、納品書と送り状を別々に印刷すると、混乱が起きやすい。このとき、クレジットカード払いだけではなく、銀行振込や代引き、コンビニ払いといった支払い方法があると、さらに複雑になる。受注業務は、できる限りシンプルにしておくべきだが、あっという間にいろんな業務が複雑に絡んでくる。このように、まずは業務のどこに問題があるのかを洗い出そう。発送業務においては、注文商品をピッキングする際、倉庫内をあちこち移動しなければ商品が揃わないといったことも起きる。そういったコストを勘案すると、これらの業務を外注するという選択肢も考えられる。さらに、受注や在庫データを一元管理するツールの導入も視野に入ってくる。

ポイントは、「どこにボトルネックがあるか」だ。チェックリストを用意したので、ぜひ確認してみてほしい。マネジメント側、実務スタッフ側でそれぞれ認識が違うことも多いので、各方面からチェックすることをお勧めする。双方でチェックが入った項目は、すぐに手を打つべき業務といえるだろう。

 

悩める中小のECサイトが次に打つべき6つの施策

では、中小のECサイトが、次に打つべき6つの施策の意味、導入のためのポイントなどを紹介していこう。

01:集客

超高速コミュニケーションの時代である。SNSを通じて良いことも悪いこともあっという間に拡散してしまうが、今や集客の大事なツールでもある。最終的に購入に至る前に、クチコミサイトやTwitterなどのソーシャルメディアを確認する人は多い。ECを利用する際の情報源として、日本ではクチコミサイトを挙げた人が約40%、中国ではミニブログ(おそらく微博)を挙げた人が20%もあることには注目したい。ここでチェックされるのは、ショップの対応や商品の評判である。つまり、SNSでは「安心材料」を伝える必要があるということだ。

各SNSには特徴があり、その仕様も変わりやすい。したがって、細かく対応していくといくら時間があっても足りないが、自動化・効率化できれば、セグメント化されたターゲットにあわせた強力な集客ツールとなる。

手間のかかるSNSマーケティング。本気で取り組むならツールが役立つ

最新デジタルツールレポート①:コムニコ マーケティングスイート

 

02:決済

スマートペイメント(現金を使わない決済方法)市場は2021年には90兆円規模になると言われており、拡大の一途をたどっている。さまざまな決済方法が導入されており、なかでも「ID決済」は2015年のEC業界でブレイクした。ID決済は、ユーザーが住所などの情報を入力しなくても簡単に購入できる一方、ショップ側にもユーザー情報を持たずに高いセキュリティの決済サービスを使用できるというメリットがある。

さまざまな支払いの選択肢を用意しておくことは重要だが、複数の決済があるとお客様も混乱して、「カゴ落ち」につながる可能性もある。ショップ側も複数のフローで受注と入金処理を行う必要があるため、一括管理できるツールの導入なども併せて検討しよう。

カード決済をしない顧客に最適な支払い方法を提供する「導線」を

最新デジタルツールレポート②:Amazonログイン&ペイメント

 

03:ステップメール

ECサイトからのメールは、今でもお客様のロイヤリティを高めるのに有効な手段である。メールマガジンを継続的に配信することも重要だが、本来的にメールは1対1のコミュニケーションツールであり、お客様には1対1で対応したい。しかし、それは現実的ではない。

このような1対1に近いメールの自動化・効率化を実現するのが、「ステップメール」だ。お客様の行動に応じたタイミングで、適切な内容のメールを自動的に送信する。さまざまなツールやサービスがが提供されているが、「このタイミングで、この内容のメールを送信する」といった「シナリオ」の作成が必要になる。最初から完璧なシナリオを作ろうと考えがちだが、まずはやってみて、少しずつ改善していくのがよいだろう。

シナリオに沿って内容を変え、自動送信する「ステップメール」

最新デジタルツールレポート③:アスメル

 

04:チャット

ECサイトでのチャット活用が重要になってきている。米BoldChat社がイギリスとアメリカの消費者を対象に行った調査では、31%の人がチャットで質問や問題が解決した後に、そのサイトで購入すると回答している。これらの調査から、チャットは顧客満足度だけでなく、購買意欲の向上にも貢献していることがわかる。また、中国のECでもチャットでの応対が当たり前になっている。

業種や取り扱い品数などで向き不向きもあり、対応するオペレーターを置かなければならないなど、少しハードルが高いように思えるかもしれない。しかし、最近では低価格のツールもあるので、期間限定での対応からはじめるなど、ぜひ検討してみよう。

Webにおける「おもてなし」の接客を実現する「チャットツール」

最新デジタルツールレポート④:Zopim

 

05:多店舗展開

実店舗、自社ECサイト、ECモールなど、お客様との接点を広げることは販売のチャンスを拡大することになる。このような多店舗展開が向いているのは、グルメやファッション、インテリアなどの分野だ。また、ECモールでも向き不向きがあるので、そのECモールを追加することが自社サイトにあっているかも確認しておく必要がある。

このような多店舗展開を行う際、人手をかけて対応するのは現実的ではない。商品情報、画像情報、在庫情報、受注情報、顧客情報、入金チェックなどを一括管理できるツールが、いくつもリリースされている。自分のショップにあうツールを見つけて、接点の拡大と、自動化や省力化を両立させよう。

モール間の管理・連携を自動化してくれるツールがすごい

最新デジタルツールレポート⑤:ネクストエンジン

 

06:物流

Amazon.co.jpの「お急ぎ便」や楽天市場の「あす楽」など、即日あるいは翌日に届くことが当たり前のサービスになってしまった。これを自社でまかなうのは難しいが、対抗できる物流サービスが低価格でも利用できる環境が整ってきた。

物流はECにおけるもっとも重要なユーザータッチポイントである。この大事な接点を活かすためには、受注から納品書の印刷、送り状の印刷、ピッキング、同梱物、梱包、宅配業者への受け渡しなど、チェックポイントは実に多く、ボトルネックにもなりやすい。

買い物した後からお客様の手元に届くまでを「接客」と考え、自動化や省力化を進めたい。コストとのバランスを鑑みて、物流を自社でまかなうのか外部に委託するかなどを考えよう。

使いやすく独自色の強い新しい物流サービスに注目を

最新デジタルツールレポート⑥:オープンロジ

 

自社サイトに最適な対策を

これらの施策は、成功しているショップでは、すでに導入しているところも多い。しかし、EC業界が成長し、ショップの方針も多様化しているため、この6つの施策がすべてのショップに当てはまるというわけではない。

チェックリストを利用して、自社ショップのどこにボトルネックがあるのかを割り出し、以降の解説や事例紹介を参考に、改善策を検討してほしい。

02 ボトルネックを発見チェックリスト

それぞれの段階ごとにチェック項目を用意した。マネジメント(運営)と実務スタッフの双方でチェックしてみて、どちらからもチェックがついたところは、すぐに対応すべきボトルネックになっている

 

Text:川連一豊
JECCICA(社)ジャパンE コマースコンサルタント協会代表理事。フォースター(株)代表取締役。http://jeccica.jp/
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