
[オムニチャネル・O2O]スマホの浸透で効果を発揮する実店舗とインターネットの連携施策●特集「スマホ最適化」
スマホの浸透で効力を持ったオムニチャネル
伊藤圭史氏が代表を務めるLeonisは、戦略コンサルティングサービスやオムニチャネルマーケティングシステムの提供を業務としている。まずは、そもそもオムニチャネル・O2Oとはそれぞれどういう概念なのかを説明してもらった。
「原義で言うとオムニチャネルは、インターネットなどの発達で多様化した顧客接点(マルチチャネル)を統合(オムニチャネル)していくことです。ただ、各社が取り組む際にはこのような特定の手法にこだわるのではなく、お客さんの購買行動が変化してオムニチャネル化してきたことに対して、企業がどう対応していくべきかと定義して検討を進めたほうがよいと思います。また、O2O(Online to Offline)という言葉は、オンライン上にたくさんお客さんが集まったからそこから店舗に集客する、という発想のプロモーション手段で、オムニチャネルの一部分と捉えています」
国内でオムニチャネル・O2Oという言葉が注目されるようになってきたのは、ここ2~3年のことだ。
「以前は実店舗とインターネットを繋ぐデバイスがなかったのが、スマホの浸透で繋げるようになったのが大きいです。国内では2012年頃からO2Oの先進的なサービスが出てきましたが、世の中で一気に注目を浴びたのは、2013年冬にセブン&アイ・ホールディングスとイオンがオムニチャネル宣言をしたことがきっかけではないでしょうか。それ以降、企業の反応が大きく変わり、弊社のお仕事も一層増えました」

01 東急百貨店アプリのトップ画面。店名のロゴを左右にスライドすることで、他の店舗の画面へと切り替えられる。お気に入りの店舗が最初に表示されるよう、設定しておくことも可能。2015年7月末時点で 5万2,000件ダウンロードされている

大きな集客効果を持つ東急百貨店アプリ
Leonisは、世の中の流れに先んじて、2012年頭から東急百貨店とのオムニチャネル施策に取り組んでいる。そのきっかけは、2012年4月に渋谷ヒカリエが開業したことだった。ここの商業施設ShinQs(シンクス)を、東急百貨店が運営している。
「東京・渋谷にある東急百貨店の本店や東横店では、50~70代がメインの顧客層でした。しかしShinQsは、20~40代の女性をターゲットにしていて、それまでと違う顧客層へのアプローチが必要になるタイミングでした」
既存のO2O系サービスのトライなどを経て、2013年4月に東急百貨店のアプリをリリースした(01)。プレゼントがもらえるクーポンを配信し(03)、閲覧した人のうち10%、多い時には20~40%もの人が交換に来るという驚異の集客力を誇り、話題となった。
「40%の人が引き換えてくれたのは、ShinQsでメモ帳を配ったときです。食べ物など、ユーザーの嗜好を限定しないものが好評です」
クーポンの引き換えをすると、店員さんが暗証番号を入力するか、画面上のクーポンに「使用済みスタンプ」が押印される電子スタンプが押される(04)。この仕組みも開発した。
「テナントが多いこともあって、店員さんの入れ替わりが頻繁にあるので、アプリの電子クーポンをこれまで通りのオフラインと同じようなオペレーションで扱えるようにと考えました。電子スタンプは、紙のクーポンに使用済みスタンプを押すのと同様の手順で使えます。アプリの利用者はShinQsが多いのかと思ったのですが、本店や東横店でも年配の方がタブレットで利用してくれているそうです。よく、企業の方は、うちの顧客層はまだそこまでデジタル化していないと言われることがありますが、顧客のデジタル化は、もう見くびっていられない状況にきていると思います」
スマホやタブレットの浸透が進む一方の昨今。店舗を持つ企業にとって、オムニチャネル施策は、検討せざるを得ないマーケティング手段になっていると言えるだろう。



- 伊藤圭史
- 2011年12月、Leonis & Co.を設立。オムニチャネルの専門家としてさまざまな企業を支援。現在は、トランスコスモスグループのオムニチャネル推進支援サービスの中核企業として、オムニチャネルマーケティングシステム「OFFERs」の提供を主軸とした展開を行う。http://leonisand.co/