AI時代にノーコードツールで真の価値を発揮する方法とは? ZIZO DESIGN・坂口隆俊さんが「Wix Studio」に魅了される理由
東京と大阪を拠点に、Webサイト制作をはじめブランディング、映像、インスタレーションなど幅広いアプローチでクライアント支援を行うZIZO。近年は、クライアント案件においてノーコードツールを活用する機会が増えているといいます。
数あるノーコードツールのなかで、同社代表取締役でプログラマー/テクニカルディレクターの坂口隆俊さんが注目しているのが、Wixの高度なWeb制作ソリューション「Wix Studio」です。その魅力や導入によるメリットはどこにあるのでしょうか。今回は、Wix.com Japan株式会社シニアマーケティングマネージャーの今村桃子さんも交え、坂口さんにWix Studioの使用感や活用の可能性について話を伺いました。
クライアント案件での活用が進むノーコードツール
––––坂口さんはノーコードツールにどのようなイメージをお持ちですか?
坂口隆俊(以下、坂口) この2〜3年で、ノーコードやローコードツールを案件に活用する機会が増えてきました。以前は第2、第3の選択肢として提案することが多かったのですが、ここ1年ほどは第1候補としてお客様に提示するケースも出てきています。
背景には、ツール自体の進化に加え、導入事例が増えたことで「こうした場面にノーコードツールが適している」という知見が蓄積されてきたことがあります。これは弊社に限らず、Web業界全体で共通の傾向ではないでしょうか。実際、お客様から「ノーコードで制作してほしい」と依頼されることもあり、認知が確実に広がっていると感じています。

––––ZIZOでは、どのような場合にノーコードツールを使用しているのでしょうか。
坂口 比較的ページ数が多くないWebサイトで活用するケースが多いですね。また、ノーコードツールを導入して減らすことができた工数をほかの領域に回す場合もあります。例えば写真撮影やイラスト制作に充て、ビジュアルのクオリティを高めるといった形です。そうした意味でも、ノーコードツールはいまやお客様に価値を提供するための有効な手段のひとつになっています。
––––これまでWix Studioを使ったことはありましたか?
坂口 誰でも使えるノーコードツールとして知られている「Wix エディタ」を使った経験はありましたが、プロ向け仕様である「Wix Studio」は最近初めて触れました。Wix エディタよりも実現できることが圧倒的に増えていて、実はクライアント案件への提案にも早速取り入れているんです。
––––そのほかのノーコードツールと比較した際、Wix Studioならではの特徴や強みをどのように捉え、どんな場合に提案していますか。
坂口 ほかのノーコードツールと比べて、バックエンドの機能などが充実していて、柔軟性も高い。単なるWeb制作ツールというよりも、お客様の事業成長を長期的に支える「ビジネスプラットフォーム」という印象ですね。
例えば、お客様とのヒアリングのなかで「将来的にECサイトを開設したい」「事業拡大に合わせて会員機能や予約システムを導入したい」といった話が出るケースがあります。そうした場合に、Wix Studioなら必要に応じて機能を柔軟に拡張できる点が強みになります。「ノーコードツールは制約が多い」という印象を持っている人も多いと思いますが、Wix Studioは拡張性を兼ね備えている点が魅力ですね。
さらに、Wix自体がグローバルに展開しているため、多言語サイトを構築しやすい仕組みが整っている印象です。そのため、国内市場にとどまらず、将来的に海外進出を視野に入れる企業にも適しているのではないでしょうか。

デザイナー自身での実装が可能になり、手戻りを削減
––––Wix Studioのようなノーコードツールを活用することで、制作フローや制作体制はどのように変わりますか。
坂口 弊社ではFigmaでデザインをつくることが多いのですが、Wix Studioのインポート機能を使えばWebサイトにほぼそのまま再現できます。カーニングなど細かな部分に多少の調整は必要ですが、修正も簡単で大きな手間はかかりません。
また、ノーコードツールを使うことでエンジニアを介さず、デザイナーだけで実装できるようになります。特にアニメーションは言語化して伝えるのが難しい部分も多いため、デザイナー自身で調整できるのは大きなメリットです。
私たちはスクラッチでの実装、特に3DやWebGLなど表現力の高い演出を求められることが多いため、デザイナーが映像でアニメーションモックを作成し、エンジニアが調整用ツールを開発。デザイナーがそのツールで数値を調整し、その結果を本番サイトに反映する……といった手順を踏んでいます。
一方、ノーコードベースの制作ではデザイナーが直接本番サイトに設定できるため、お客様にすぐ実際の動きを確認いただけます。その場で一緒にすり合わせができ、コミュニケーションコストも大きく下がっていると感じます。

––––確かにデザイナーにとっては、非常に多くのメリットがありそうです。ではエンジニアにとっては、どのように活用できると考えていますか?
坂口 Wix Studioはノーコードツールでありながら必要に応じてコードを書き込めるハイブリット型なので、実現できる幅が広く、クライアントに対して多彩な選択肢を提案できます。
さらに外部APIとの連携もしやすく、例えばログインが必要な会員ページの作成など、Webアプリケーション的な機能をセキュアかつ少ない工数で実装しやすいと感じました。
あの、僕からもお聞きしたいのですが、Wixさんご自身はWix Studioの特長をどのように捉えていますか?
今村桃子(以下、今村) 坂口さんのお話にもありましたが、ECや会員サイト、予約システムをはじめとする豊富なビジネスアプリに加え、デザインの自由度やAIによる効率化までワンストップで実現できる“総合力”がWix Studioの特長です。
また、2006年設立のWixは、Web制作ソリューションの老舗的存在として世界中で約3億人に利用されています。長年のフィードバックを製品改善に活かし、制作現場でも安心して使える「使いやすさ」と「安定した基盤」を築いているのが強みです。
––––実際に使ってみて、「もっとこうなるといいのに」と感じた点はありますか。
坂口 例えば機能が豊富なだけに「あの機能はどこにあるのだろう?」と、目的のメニューがすぐに見つからないこともあります。そこがもう少しスムーズになると、さらに使いやすくなると思います。
今村 確かにそう感じられる方もいらっしゃいます。検索バーから探す方法もありますが、Wixのダッシュボードに搭載されているAIアシスト機能「Astro」の活用がおすすめです。自然言語で質問すれば必要な機能を呼び出せるほか、パフォーマンス分析やSEO改善のヒント、レポート作成まで支援します。制作に直結するAI機能とは少し異なりますが、日々の運用を支える“頼れるアシスタント”です。

AI・ノーコード時代にクリエイターが果たすべき役割
––––Web制作の場ではAIの活用も進んでいますが、ZIZOでも使用していますか。
坂口 はい。デザイナーは、AIを使ってUIのパターンを複数出したり、自分がデザインしたアプリのUIをチェックさせたりしています。人間以外の“第三の目”として、議論の相手やレビュー役を担ってもらっているイメージです。
エンジニアは、AIエージェントにコーディングを指示し、生成されたコードを人間が確認・保証するという形で活用しています。例えばセンサーを使った体験型コンテンツなど複雑な仕組みをつくる際には、AIに構成図を書かせて実現可能性を確認することもあります。また、大規模な既存コードを引き継ぐ案件では、AIに「◯◯は実装されている?」「この機能はどういうコードで書かれている?」と質問しながら確認し、工数を削減しています。
ディレクション領域でも、案件リサーチや他社事例の収集、ブレストでのアイデア出しなど、幅広くAIを活用しています。提案案件では「この要件が作った提案書に含まれているか?」をAIに確認したり、伝わりやすい表現をトークスクリプトとして生成させたりするケースもあります。
こうして数え上げればきりがないほど、さまざまな場面でAIを使っています。いまや「AIを活用することを前提に工数を考える」というスタンスになっていますね。
––––制作効率が上がれば、手掛けられる案件の数も増えますね。
坂口 AIは24時間稼働させることも、同時に複数動かすことも可能です。そのため時間や人的コストはこれまでとは比べものにならないほど抑えられます。結果として、スモールテストやスクラップ&ビルドを何度も繰り返せるようになり、最終的なクオリティの向上にもつながります。
––––AIの観点から見て、Wix Studioをどのように評価していますか。
坂口 Wix Studioには、レスポンシブデザインのブレークポイントをAIが自動で最適化してくれる機能がありますよね。こうした「必要だけれど手間のかかる作業」を効率化する仕組みから、制作者の負担を減らそうとするWixさんの姿勢を感じます。WixではAIについて、どのような取り組みをされているのでしょうか。

今村 弊社はAIの活用にも力を入れており、Wix Studioでは大きく3つの機能に組み込まれています。1つ目は今ご指摘いただいたレスポンシブ自動調整機能「レスポンシブAI」。2つ目はチャット形式の質問に答えるだけでビジュアルサイトマップやワイヤーフレームを自動生成できる「ビジュアルサイトマップ&ワイヤーフレーム生成ツール」。3つ目はランディングページをAIが作成してくれる「AIサイトビルダー」です。
さらに、自然言語で指示を出してアプリ開発ができる「Base44」の買収など、未来の制作環境を見据えたAI施策も進めています。

坂口 なるほど。今後のAI活用によるWix Studioの進化が楽しみですね。
––––AIやノーコードツールの登場によって、従来Web制作者が多くの時間を費やしてきたコーディングやデザインの手間は軽減されました。そうした中で、Web制作者はどのような意義を発揮し、どのようなスタンスで取り組んでいくべきだと考えますか。
坂口 AIやノーコードツールを使ったとしても、それだけで100%完成することはありません。必ず人のチェックや修正が必要です。ツールが80%まで仕上げてくれるとしたら、残り20%のクオリティを高めていくのが制作者の役割だと思います。
お客様の要望を限られた予算の中で最適な形に実現することが重要です。そのために、どう価値を発揮するかに注力すべきではないでしょうか。実作業がツール化・自動化されるほど、制作者ならではの視点や提案力、そして熱量の示し方がますます問われるようになると思います。

■取材場所
Casa ZIZO – studio&wine
東京メトロ銀座線 外苑前駅 1a出口より徒歩1分
約1,000本のワインとプロ仕様のキッチン、バーカウンターがあるスタジオ。
撮影、配信、イベント、ミーティングなど幅広い用途でご利用いただけます。
Instagram:https://www.instagram.com/casa.zizo_/
取材/文:平田順子、撮影:山田秀隆、撮影協力:Casa ZIZO -studio&wine-
