なぜ「会議」にプロジェクトマネジメントが欠かせないのか? 会議で成果を上げるための心得

多様で複雑化する社会状況を背景に、制作手法は多岐に渡り、人や組織によって働き方も異なります。だからこそプロジェクトの推進には、全体の動きを把握するプロジェクトマネジメント(以下PM)が欠かせません。そこで、PM業務に定評のある株式会社コパイロツトに取材。実務で活かせるPMのあり方を、事前の「計画」とプロジェクトの進行に欠かせない「会議」という2つの切り口を中心に、解説します。

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目次

教えてくれたのは……

株式会社コパイロツト

多様な目的やメンバーのプロジェクトにコパイロツト(副操縦士)として伴走するプロジェクトマネジメント集団。自社には制作部隊を持たない。デジタル領域を中心に、マーケティング戦略の伴走支援、新規事業開発、ナレッジマネジメント、組織づくりなどをサポートする。今回は、同社プロデューサーの船橋友久さん、プロデューサー/プロジェクトマネージャーの多田知弥さん、プロデューサー/プロジェクトマネージャーの三浦祐子さん、プロジェクトマネージャーの亀岡真由さんにお話を伺いました。

PART②|適切に会議を進めよう!

❶ なぜ会議がPMに欠かせないのか?

プロジェクトにかかわるメンバー(制作者、クライアント、ステークホルダー)で共有できるプロジェクト計画書やプロジェクトストーリーを構築したら、それらを拠り所としてプロジェクトを進行していきます。ここでもう1つ、とても大事になってくるのが「会議」です。

きちんと会議を機能させられることが、どのようにPMの成果にも直結していくのでしょうか? プロジェクトの推進とともに、改善しつづける場として「会議」をいかに機能させていくか考えていきましょう。

一般的に、時間が拘束されてしまい自らの業務が止まってしまうことなどから、会議を肯定的に受け止めていない人はいるでしょう。ですが定例会議の場は、特別に調整することなく、プロジェクトに必要な関係者が集う機会になるので、むしろ意思決定をする場やタイミングとしてはふさわしいはずです。

週次もしくは隔週に設定された会議のサイクルは、プロジェクトを推進し、現状を振り返りながら改善する場として活用できます。また、プロジェクト進行上、何か問題が生じてから動いても、日程調整だけで時間がかかります。定例でルール化された場があると、改めて時間を取る手間も省けます。会議の場が設定されていること自体を活かしていきましょう。

❷ プロジェクト内の会議の位置づけを理解する

では、会議が担う役割を捉え直しておきましょう。会議を、「人が無駄に集まって時間が拘束される場所」とするなら、非生産的かつ非効率な場でしかありません。ですが本来は、プロジェクトのゴールを達成するために積み重ねていく場が「会議」のはずです。そのためにも、きちんと会議を機能させなければなりません。

そこで会議を構造化して捉えてみましょう。まずは、1つの「プロジェクト」を複数の「フェーズ」という単位に分けていきます。会議は、各フェーズの目的を達成するために開かれているものだと捉えましょう。つまり、会議の積み重ねが該当フェーズの達成につながり、次のフェーズへと進んでいくわけです。

下図のように、プロジェクトを要素分解した際の単位の1つが会議であり、会議の積み重ねの先にフェーズの達成、さらにその先にプロジェクトのゴールがあるという構造を理解し、意識したうえで会議を実行することが大切です。

また会議は、1回ごとの会議で話しあわれる「アジェンダ(課題項目)」や「タスク」を確認して実行する場へと分解できます。このようにプロジェクト全体における会議の位置づけを押さえておきましょう。

会議を機能させるためには、会議の積み重ねの先にゴールがあるという構造を意識しましょう
プロジェクトの基本構造の中で、会議がどういう位置づけであるかを捉えておくと、毎回の会議にも臨みやすくなります

❸ 1回の会議をどのような構造で成り立たせるべきか?

今度は、1回ごとの会議の構成を見ていきましょう。前のセクションで会議を「アジェンダやタスクの集合体」と定義しました。会議では、まずアジェンダを組み立てることが大切です。会議に参加する人は原則アジェンダを用意し、プロジェクトマネージャーはその取りまとめを行いましょう。

会議では、これら3要素を意識して臨めると、手応えのある前進がしやすくなるはずです

次に議事録やToDoリスト(やることや決定事項)を会議内で明確にしていきます。最後に、会議で決めたことを活動に結びつけていったら、参加者一人ひとりが担うべき活動を進めていきます。

これらの連なりを「会議を通じた活動」として捉え、このサイクルをこまめに回して会議を積み重ね、徐々にゴールへと近づけていくのです。

では、ここまでの動きを会議の進行にあわせて整理します。「会議前」は、(全員がアジェンダを提出して)議題を参加者全員で出しあい、1人のプロジェクトマネージャーに依存せずチーム全体での関与を大切にします。

「会議中」は、ファシリテーターが1人で話をするのではなく、参加者全員が意見を出しあいます。誰もがアジェンダを出していれば、当事者意識を持って意見が出しやすいはずです。会議内で決定事項やToDoリストを確認できれば理想的で、立場の違いなどから認識の相違があれば、会議中に齟齬を潰していくのが最善の進め方です。そのうえで「会議後」は、個々の活動につなげていくために各項目の共有が重要になります。

❹ アジェンダのつくり方を習得する

ここまでの解説からも予想できるとおり、会議前に持ち寄るアジェンダの質が高ければ、会議中の議論がより深まりやすくなります。

アジェンダの書き方で意識したいのが、「~について」と項目を出しただけで、「何かを書いた気」にならないこと。必ず「What」「Why」「How」の要素を書き出して、具体的にどのような議論を求めるのかについて明確化したアジェンダをつくりましょう。アジェンダ用フォーマットのサンプルを用意したので、ぜひチェックしてください。

タイトルや所要時間、誰宛のアジェンダであるかも必須項目です。会議体によっては大人数のもの、時間が限られているものがあるので、これらの項目を明記すると、持ち寄ったアジェンダの中で優先順位がつけやすくなります。

全項目を埋めるのが難しい場合、目的に応じて要素は絞ってOK! 大事なのは、事前にこれらを想定して臨むことです

❺ 会議終了後にすぐ次回の準備をしよう

1つのフェーズの中で複数の会議を想定するとき、大事なのは1回の会議の充実度が高いことだけでなく、次回以降の会議もきちんと機能させることです。理想は会議内に決定事項やToDoリストを参加者全員で確認し、齟齬や解釈違いがあればその場で訂正することですが、終了ギリギリまで議論が続くこともあります。

例えば、「週次の定例会議の終わりには、仕上げを意味するラップアップミーティングも(必要なメンバーに絞って)必ず開催する」といったルールを設けておきます。そうすれば、参加者の頭の中に会議の議論が残った状態を保ちながら、決定事項やToDoリストの確認に加えて、次の会議で「何をどう話し合い、決めるのか」という「次の会議用のアジェンダ」を設計できます。こうしておくと、週次の会議であれば次回開催までの1週間を有効活用でき、適宜アジェンダのアップデートも可能になります。

よくあるのが、前回までのやりとりがリセットされた状態で、次回会議の直前に慌ててアジェンダの用意に取りかかることです。これでは準備の時間が確保しづらく、アジェンダの質が担保できません。つまり、会議の質の低下につながります。

取り扱うアジェンダに追加や変更がないか、優先順位を確認しながら最終調整を行うため、会議の冒頭でアジェンダを必ず確認してから始めます。こうして会議の連なりを意識した持続的な運用を実践しましょう。

会議の最後は「次回のミーティングでやるべきことがはっきりしている状態をつくる」ことを仕組み化し、常に次を意識した運用ができるとよいでしょう

❻ 会議終了後にすぐ次回の準備をしよう

ここまでアジェンダの質が会議の質を左右すること、加えて会議に持ち寄るアジェンダは参加者全員で出しあうことが大切だと解説しました。

アジェンダを全員が出すことについて、中には疑問に思う人もいるかもしれません。「全員で持ち寄るのは、プロジェクトマネージャーが楽をしたいから」と誤解する人もいますが、チーム全体で参加することの意味は小さくありません。

会議の参加者は、人それぞれで求められる役割が異なります。1人のプロジェクトマネージャーがどれほど優れた人でも、必要な論点をすべて把握するのは難しいです。役割や責任を1人に押しつけた進め方は、さまざまな論点が検討されるべき会議において、プロジェクトに必要な視点が漏れるリスクが高まります。

人は、基本的に自らの役割や、自らが置かれた視点(だけ)でプロジェクトに関与するものです。そのため、異なる役割を担うそれぞれの参加者がアジェンダを持ち寄ることで、抜けや漏れを防ぎながら会議のための論点を集めることが可能になります。アジェンダのフォーマットをはじめ、アジェンダの持ち寄り方や次の会議を意識したサイクルも含めて、チーム全体が活気づく会議の取り組み方が習慣化できるといいでしょう。

参加者全員がアジェンダを持ち寄り、会議を実行。会議前後の動きを細かく回し、プロジェクトのゴールへと近づいていきます

|COLUMN|  会議体を見直す判断は?

最後に、ここまで説明してきた内容を取り入れて会議を実践してみたけれど、結局うまくいかないケースも考えましょう。

ここまでは、私たちが考える会議のあり方や進め方、備え方における“理想”をベースに解説してきました。そこで本企画の冒頭では、プロジェクト計画を立てる際に会議体のルールも決める、と説明しました。しかし、決めたルールに則り会議を進めてきたものの、会議に必要なメンバーや頻度、1回あたりの時間、会議の形態など、実際に進めてみて実情と合う、合わないが出てくることがあります。その場合は、柔軟にあり方を見直しましょう。解説してきた内容は、寸分違わぬ形での実現を求めるものではありません。実情に応じた形で取り入れながら、適切な会議の運用につなげてほしいです。

業務別に会議体が分かれるだけでなく、構想策定、要件定義、基本設計などフェーズの移り変わりに応じて各会議の種類や目的が変わってくるものです。そのため、目安としてはフェーズ単位で会議体の設計を見直してみましょう。1つのフェーズが終わるごとに、実施してきた会議体を振り返るのです。

機能しない要因が参加メンバーの構成なのか、参加人数なのか、会議形態なのかなど、引っかかる点を洗い出して、該当する会議の最適化を図ります。プロジェクトマネージャーは、その判断の責任を果たす立場として、会議が機能しているかどうかを常に見極める必要があります。

《Vol.3へ続く》

取材/文:遠藤義浩
※本記事は「Web Designing 2025年4月号」に掲載した内容を一部再編集して公開しています。

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