事例から考えるネット施策の是非❶|失敗事例から学ぶホームページの意義

ホームページやSNS運用等、ネット試作は今やなくてはならないものです。しかし無計画に「ただやればいい」というものでもありません。焦って失敗してしまった事例から、ネット施策の意義を考えましょう。

目次

「ネット施策」に対する過度な期待


ホームページはつくっただけでは、まず見てもらうことすらできません。ホームページへの集客施策や買いたくなる魅力的なコンテンツなど、さまざまな要素がそろって初めて数字につながります

最初にガツンと伝えておきたいのですが、手垢のついたノウハウや他人の成功談は捨ててしまいましょう。10年前のネット事情とは異なり、技術の進化や社会の変化によって、ネット施策とひと口に言っても、かつての「小手先の技術」でどうにかなるものではなく、企業・事業者の「本質」が問われるものに変化してきていると感じます。考えてみてください。もし無料で簡単に確実な成果の出る魔法のような施策があるなら、今ごろ誰もが成功者のはずです。

会社サイトやECサイトの制作に関するご相談は現在も多いですが、お話をお伺いしていると「ホームページさえつくれば万事うまくいく」と、なんとなく魔法の存在を期待されているように感じる時があります。白状すると、筆者もWebディレクターでありながら独立時にはそんな甘い考えを持っていました…。

そこで導入として、「安易なホームページ制作」が招いた悲劇を紹介したいと思います。(よくあるご相談をベースにしていますが、業種や背景、施策内容は架空のものです)

ホームページが招いた悲劇


「ホームページを通じて、まだ店を知らない人にも知ってもらいたい!」という思いで作成したホームページ。しかし、よかれと思ってしたことが、予想外の事態を招いてしまうのです

舞台はとある郊外にある3代続く老舗フランス料理店。有名店で修行したシェフの、本格フレンチを家庭的にアレンジした料理に定評のある「地元の名店」として、近隣の方々に愛されるお店でした。子どもの頃、ちょっとおめかしして連れて行かれた、そんなお店を想像してください。

3代目オーナーになってから、稼働の落ちる平日も一皿料理を充実させ、ワイン好きの方を中心ににぎわっていて、ますます繁盛するように。順風満帆…のはずでした。

実はオーナーは以前から、自店のホームページを持ちたいと思っていました。やはりネット全盛のこの時代、ホームページもSNSもないのは、集客の面で不安に感じていたのです。そんな折、知人から「無料でホームページがつくれるサービス」があると聞き、早速調べてみると、意外と簡単にホームページを立ち上げることができました。

公開して数カ月後、特に新規のお客様が増え、一時的に予約待ちが出るなど、お店は従来以上の賑わいに。しかし1年後…来店ゼロの日もあるピンチに陥ってしまったのです

水面下で起こっていた危機

原因はオーナーがつくったホームページ。念のために前置きしておくと、無料ホームページ作成サービスが悪い、というわけではありません。注意すべきは、このホームページを見た人が、店にどういう印象を持つか、ということです。パッと見「焼肉食べ放題」のお店のように見えませんか? なにか技術的な問題があるのではなく、店の実態と異なる印象を伝えてしまっている点が問題なのです。

その結果、まず起きたのか「アンマッチ層」の増加です。一時的に新規客が増えたというのが、ホームページの印象で焼肉店と勘違いした若い男性グループ客でした。もちろん、彼らが悪事を働いたわけではありません。単純に「美味しい焼肉が食べたい」と思って来店しただけです。しかし実際は落ち着いた雰囲気のフランス料理店。これには来店した彼らも戸惑い、「期待のズレ」が苦情や悪い口コミとなって表れてしまいました。

初めての悪評価に、パニックになったオーナーは、シェフに「若者ウケするようなメニューを」「材料のランクを落としてもいいから安く」などと指示。これで「地元の名店」にプライドのあったシェフやスタッフの士気が低下してしまいます。

そして料理の質の低下や店の雰囲気の変化から、もとの常連客が疎遠になってしまい、しかし新規客のリピートはなく、売り上げの低迷から店内はますますギスギスし…ついにオーナーは孤立し、さらなる迷走に陥ってしまいました。

一見冗談のようですが、ホームページは、最初の印象でバイアスがかかった状態で閲覧されます。小さな文字の「フレンチ」は「焼肉」という刷り込みに負けてしまう。だからこそ、パッと見の印象をおろそかにしてはいけないのです。

オーナーの「本心」はどこに?


オシャレならOKではなく、店の長所や目指す姿を表現できているかがデザインの正否の判断基準です。ここでは、改修後に理想の客層に戻ったことから、このデザインが正解だったと言えます

さて、ここから立て直しです。オシャレな見映えがするデザインに! から始まったご相談でしたが、単に「オシャレ」と言っても、「高級中華料理店」のサイトにしてよいわけはなく、「どんなお店にしたいのか」オーナーの本心を探ることが必要になりました。

ヒアリングからは、祖父(創業者)や常連客との思い出など、従来のお店への愛情が深く、一方で「常連客の高齢化で、さまざまな事情で来られなくなる人が増えてきた」という肌感が宣伝を焦らせた原因だったこともわかりました。

そこで、従来のお店の雰囲気を伝えながらも、30代〜の新規層を取り込めるデザイン(上図)でホームページを改修。来客数の回復、客層のミスマッチの改善、さらには店の理念が目に見える形になったことで、店内の結束も強くなるよい結果となりました。

これは決して珍しい話でも笑い話でもありません。現在のネット施策は、その表現ひとつで、武器にも凶器にもなります。そのため、やみくもに実施するのではなく、前提となるビジョンを明確にすることが必要なのです。

安易な情報発信はときに「毒」になる伝えたい「メッセージ」をまずは見定めよう!

※本記事は『Web制作・運用バイブル 2024』から一部抜粋して公開しています。

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