デザイナー採用の成否は「設計」で決まる──採用の特殊性と進め方を整理する

デザイナー採用の成否を分けるのは、肩書きやスキルセットの表面的な条件ではなく、「何のために、どんな役割を担ってもらうのか」という設計にあります。本記事では、デザイナー採用の考え方から具体的な進め方までを整理し、企業が陥りがちな落とし穴や実務のポイントを、グッドパッチReDesignerチームの書籍『デザイナー採用の教科書』(宣伝会議)より内容を抜粋して紹介します。

目次

デザイナー採用の特殊性とは?

ここからは、デザイナー採用の具体的なノウハウを紹介していきます。デザイナー採用を成功させる一歩目は、一般的な職種の採用とは異なる、デザイナーの採用の特殊性を知ることです。その上で、採用の正しいステップを進めていくことだと私たちは考えています。

それでは、デザイナー採用の特殊性とは何でしょうか?

1つ目は、業務内容の専門性が高いことです。その人がデザイナーとして優れているのか、自社に合ったスキルを持っているのか。総合職採用と異なり、デザイナーとしての専門スキルの有無を、コミュニケーション能力やポートフォリオも見ながら、人事担当者が総合的に判断するのは容易ではありません。加えて、同じ職種でも企業によって担当領域が異なり、そのため採用要件の言語化が難しいことも特殊性の一つでしょう。

2つ目に、市場におけるデザイナーの数が限られていることです。経産省が発表している「デザイン政策ハンドブック2020」によると、日本のデザイナー数は2015年時点で約19万人。総務省統計局のデータによると、2015年時点の就業者は約6375万人となっており、デザイナー人口は全就業者のうち約0.3%です。

3つ目に、デザイナーは企業の理念や働き方だけでなく、成果物やデザインへの企業姿勢なども重視することです。特に、デザインへの理解がないままデザイナー採用に臨んだ企業が失敗しているケースは少なくありません。

このようにデザイナー採用には独自の難しさがあるため、大手の転職エージェントや就職ポータルサイトでも十分にマッチしないことがあります。また、そもそもサイト上でデザイナーの職種のカテゴリーが適切に絞り込める設定になっておらず、UIデザイナーとWebデザイナーが同じ枠に入っているといったシステム上の問題もあります。

こうした背景があり、ReDesignerも含めたデザイナーに特化したキャリア支援サービスが必要とされているのです。

STEP 1|採用計画

採用目的を明確にする

ここからはフローに沿って、デザイナー採用のノウハウを紹介していきます。

まずやるべきことは、なぜデザイナーに入社してほしいのか、採用する目的を明確にすることです。商品開発、組織開発、ブランディングなど、さまざまな目的があると思いますが、組織や企業が抱えている現在の課題を洗い出し、それらの課題をデザイナーが入社することで解決できるのかどうかを考えます。

その際に単にイメージを持つだけではなく、言語化、ドキュメント化することが大切です。人それぞれイメージするデザイナーの業務が異なりますし、職種も多岐にわたっているからです。

私たちがクライアントからご相談を受けた際も、まず「デザイナーといえば、何を想起しますか?」と聞くようにしています。現時点でのイメージで構わないので、自社のデザイナー像を洗い出し、共通認識を持つことから始めましょう。

また、現場レベルでイメージを持つだけでなく、経営レベルでも、デザインの力を使ってどう事業・経営課題を解決していくかのイメージを持ち、道筋を描けていることが重要です。経営陣がデザイナー採用の必要性を理解している企業ほど、会社全体でその重要性が共通認識として広まり、デザイナーの採用に成功する傾向が見られます。

必要なデザイナー像(職種・業務内容)を明確にする

デザイナーを採用する目的が明確になってきたら、具体的にどのような職種のデザイナーなのかを明確にしていきます。デザイナーと一言で言ってもグラフィックデザインができるデザイナーを採用したいのに、UXデザイナーを採用しても意味がありません。逆に、顧客視点に立った新商品の開発がしたいという課題があるのに、グラフィックデザイナーを採用しても、同じく課題解決にはなりません。当たり前のことを言っているようですが、実際の現場ではこのような採用のミスマッチにより、せっかく入社しても、デザイナーがすぐに辞めてしまうケースは少なくないのです。

3章でも述べましたが、アウトプットからサービスの設計といった上流フェーズまで広い範囲に対応できるデジタルプロダクトデザイナーを採用したいと考える企業は増えています。特に、創業したてのスタートアップや中小企業などでは、ニーズをよく聞きます。広い範囲を任せられる一人が欲しいのか、それともある程度業務を細分化して複数のデザイナーで担当していくのか、その設計には予算も関わってきます。このあたりは企業の成長フェーズや社内のデザイン組織体制など、それぞれ企業で事情や環境が異なるため、自社の状況に照らし合わせて設計する必要があります。

上図は私たちの作成した、現場から経営レイヤーまで、フェーズごとに対応するデザイナーの職種マップです。あくまで一例ではありますが、自分たちの会社や商品が抱えている課題を解決してくれるのはどの職種ならびにポジションのデザイナーなのか、考える際のヒントにしてみてください。

職種が定まったら優先順位をつける

採用したいデザイナーの職種が定まったら、次はどの職種から採用していくのか、優先順位をつけていきます。まずは、喫緊の課題を解決してくれるデザイナーを最優先で採用するようにします。ただし、該当するデザイナーが採用予算をオーバーしている場合もあるため、その場合は外部のデザイン会社などにお願いする選択肢も検討します。正社員としての採用が難しい場合は、フリーランスや副業で仕事を請けているデザイナーとプロジェクト単位で契約するといった選択肢も考えます。業務委託契約や納品ベースの契約での単発の仕事の依頼から、正社員への採用につながるケースもあります。

すでにデザイナーがいる企業であれば、既存のデザイナーがスキルアップすることで、該当デザイナーの役割が担える可能性もあります。優先順位の検討を進めることで、現時点で社内にどのようなデザイナーもしくはデザインスキルが必要なのか、採用でどこまで対応する必要があるのか、さらに明確化されていきます。

採用要件を設計する(求人票を作成する)

採用したいデザイナーの職種、スキル、レイヤーが固まったら、それらを採用要件もしくは求人票に落とし込んでいきます。ここでぜひ参考にしてもらいたいのが、ReDesignerがクライアント企業の方々に実際に書いてもらっている求人票です。

項目が多岐にわたっているため本書に掲載しているのは一部ですが、後に紹介するスキルマップも含め、このような綿密な求人票を作成することで、デザイナー採用の目的や求めるスキルレベルがさらに明確になります。求人票には、実際に携わるデザイン業務の内容や難度も、具体的に記述します。

たとえばUIデザイナーの採用の場合、「ゼロベースで新しく立ち上げるプロジェクト(BtoCサービス)のUIデザイン業務全般をお願いしたい」といった具合に書きます。企業向けなのか(toB)エンドユーザー向けのサービス(toC)なのかは明記し、ユーザー数が多くデザインの領域も多様な業務ならば、「リードデザイナーやデザインマネージャーの経験必須」などと記載してもよいでしょう。

配属予定先のチームについても記載します。どのような属性のメンバーがいるのか、デザインチームの特徴はもちろん、目指していることなども記述します。また、開発部門の中に位置するデザインチームなのか、あるいは、デザイン組織としてまとまった組織があるのかといった、会社におけるデザイナーもしくはデザイン組織の立ち位置も示します。

事業内容や組織が今抱えている課題、今後どのような取り組みをしていこうと考えているのかもできるだけ具体的に書いてください。会社としてデザインに対してどのような考えを持ち、どんな取り組みを行っているのかは、多くのデザイナーが企業に応募するにあたり、最も気にする箇所です。評価制度についてや、すでにデザイナーが所属する組織であれば実際に働くデザイナーの生の声なども記述するとよいでしょう。

充実した求人票は、企業が本気でデザイナーを採用したい証

ReDesignerでは、契約しているすべてのクライアントにこの求人票を作成していただきます。ただ、かなりのボリュームがありますし、改めて調べたり該当者にヒアリングをしなければ書けない箇所なども多数あるため、実際には私たちがサポートしながら作成していくことが多いです。
「こんな求人票を作るのは到底無理だ」と思われる方がいるかもしれません。ですが、このような求人票を作成していくことで、デザイナー採用ステップの一歩目である、デザイナー採用の目的が社内でもさらに明確になり、共通認識が作れます。

各項目を記述していく上で大切なことは、会社全体が本気でデザイナーを採用したいと思っていると伝えること。施策も含めさまざまな努力を積み重ねていることが重要になります。その姿勢や取り組みを、求人票を見たデザイナーに伝わるように意識してください。大変かもしれませんが、ぜひ採用活動の中心にこの視点を据えて、取り組んでいただければと思います。

書誌情報

デザイナー採用の教科書

著者:株式会社グッドパッチ ReDesignerチーム
価格:2,310円(税込)
発行:宣伝会議
ISBN:978-4883356294
発売日:2025年12月22日

デザイナーの「採用」から「育成」「マネジメント」までを成功に導く実践ガイド。日本最大級のデザイナーキャリア支援サービス「ReDesigner」の知見を体系化し公開。失敗しない採用フローを詳細解説するほか、採用市場の最新動向の解説、デザイナー採用・育成の成功事例も。人事担当者だけでなく、デザインの力を事業や経営に生かしたい経営者の方にも役立つ一冊。

章立て:
第1章|企業の成長を支えるデザイナーの力
第2章|企業のデザインシフト70年史
第3章|デザイナー採用市場の変化
第4章|だからこの人を採用する ― 失敗しないデザイナー採用フロー
   デザイナー向けコラム:選ばれるデザイナーになるために
第5章|入社してからが本番 ― 活躍支援と育成スキーム
第6章|実践から学ぶ ― 事例で読み解くデザインの貢献
   NTTドコモビジネス【KOEL】/マネーフォワード/丸井グループ×グッドパッチ【Muture】
第7章|ReDesignerが考える、これからのデザイナー像
   土屋尚史(グッドパッチ 代表取締役 兼 CEO)
   佐宗純(グッドパッチ ReDesigner設立者)
   宮本美咲(グッドパッチ ReDesigner事業責任者)

※本記事は、書籍『デザイナー採用の教科書』(宣伝会議)の内容を一部抜粋して公開しています。

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