
Wix Studioで問い直す、“Webサイトを作る意味”──ium・小玉千陽が考える、ポートフォリオサイトの体験設計【前編】
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プロ向け制作プラットフォーム「Wix Studio」は、柔軟なレイアウト設計やCMS機能、AIを活用した制作支援などを備え、Web制作の新たな選択肢として注目を集めています。今回は、第一線で活躍するWebデザイナーの方々に、実際にWix Studioを使ったWebサイト制作へ挑戦していただきました。
まず登場するのは、株式会社ium代表取締役社長の小玉千陽さん。写真家である実のお母様・小玉真由美さんのポートフォリオサイトを題材に、Wix Studioを活用したサイト制作を実施しています。
今回は6月18日開催のWix.comの無料ウェビナー「トップクリエイターが明かす制作フローの変革と、その可能性」に先駆け、「SNS時代に、あえてWebサイトを作る意味」を起点に、作品世界へ没入させるUI/UX設計や、ポートフォリオサイトならではの体験設計について話を伺いました。前後編の2回にわたりお届けします。

目次
Webサイトは「情報の箱」から「体験の空間」へ
–––––生成AIの進化やノーコードツールの普及により、Webデザインの現場は大きな転換期を迎えています。デザイナーとして活動されてきたなかで、世の中におけるWebサイトの位置付けや価値は、どのように変わってきたと感じていますか?
小玉千陽(以下、小玉) 私は小学生の頃から独学でHTMLを書いて個人サイトを自作するなど、実践の中でWeb制作に親しんできたルーツがあります。自分自身の体験からWebの変遷を見てきて感じるのは、Webサイトの位置付けが「1周したな」という印象です。
私がフリーランスとして独立した2010年代半ば頃は、企業やブランドがWebサイトを持つことが当たり前になりつつあるときでした。パンフレットの代わりにWebサイトを持つこと自体がアプローチの広がりになり、他社との差別化や付加価値になる。そこから「持っていないと会社として信頼されない」という機能的な側面に振り切った時代が長く続き、ある種のインフラのような存在として求められていたと思います。

–––––たしかに、当時はWebサイトを持つこと自体がステータスや信頼の証でしたね。そこから、現在はどのように変化しているのでしょうか?
小玉 最近では、SNSがプラットフォームとして成熟し、InstagramやX(旧Twitter)のアカウントだけで十分に情報発信や集客が完結してしまうクライアントも少なくありません。実際に、ドメインを取得してWebサイトを開いてみても、各SNSへのリンクが並んでいるだけの簡素なページが増えているのも事実です。
そうした時代環境のなかで、1周回って再び「あえてWebサイトを作る意味は何なのか?」が、より深く問われるフェーズに入っていると感じます。
情報の網羅性や利便性を提供するだけでなく、そのブランドの根底にある深い世界観や、SNSのタイムライン上では表現しきれない特有の体験をどう構築するのか。Webサイトに求められる役割の幅は広がり、単なる情報伝達の箱から、ブランド独自の空間づくりへとシフトしているのを感じます。
“ただ並べるだけ”では、魅力は伝わらない
–––––今回、プロ向け制作プラットフォーム「Wix Studio」を使用して、写真家であり、実のお母様でもある小玉真由美さんのポートフォリオサイトを制作されています。着手のきっかけや、お母様のこれまでの活動について教えてください。
小玉 母はコロナ禍を機に突然、京都芸術大学の通信教育部の写真コースに入学したんです。私も最初は驚いたのですが、2024年の卒業と同時に、写真家の登竜門とも言われるニコンサロンで『母型』という個展の開催が決まり、さらに同タイトルの写真集も出版するなど、精力的に活動を始めました。今年の2月には、西麻布のKANA KAWANISHI PHOTOGRAPHYで自身の身体を被写体にした新作『半月』を発表しました。
–––––素晴らしいご活躍ですね。今回お母様のポートフォリオサイトを新しく制作することになったのは、どういった課題があったからでしょうか?
小玉 これまでは母自身が既存のブログツールやテンプレートを使ってWebサイトを運用していたんです。ただ、光や影の物質性を問うような彼女の抽象的な作品群を表現するには、既存の枠に当てはめるだけでは魅力が十分に伝わりきっていないと感じていたんです。

ちょうどそのタイミングで、Wix StudioでのWebサイト制作のお話をいただいて。Wix Studioが持つ独自のレイアウトが組める表現力の高さと、納品後に母自身が手軽に作品を追加できるCMSの機能が、今の課題解決に最適だと考え、制作をお引き受けしました。
Webサイトは納品して終わりではなく、常に更新されていくべき“生きもの”だと思っています。そのため、作家自身が継続して運用しやすいという点は、ツール選びにおいて重要なポイントでした。

–––––クリエイターのポートフォリオサイトというジャンルは、企業のコーポレートサイトなどとは異なる難しさがあると思います。こうした案件の制作において、特に意識していることは何ですか?
小玉 クリエイターの作品が主役である以上、UIが主張しすぎて鑑賞の邪魔になってはいけません。しかし、ただ無難に写真を並べただけのプレーンな器では、個性が消えてしまいます。
使いやすさを担保しつつ、他の作家とは違うユニークな世界観をどう纏わせるか。そのバランス調整が非常にセンシティブなジャンルであり、個人的にも身構えてしまう領域です。
–––––身内であるお母様がクライアントという点で、通常のお仕事とアプローチは異なりましたか?
小玉 通常のクライアントワークであれば、写真というアウトプットの裏側にある「どういう思いで作っているのか」「どのような文脈やプロセスがあるのか」を深くヒアリングして見せ方を考えます。
今回は身内がクライアントなので、見せ方はある程度私に委ねてもらっていますが、だからこそ「第三者から見てどう受け取られるか?」という客観的な視点を持つことを強く意識しています。

“見せ方の緩急”をデザインする
–––––ユーザーの興味を惹きつけるためのアプローチや、デザインの仕掛けについて教えてください。
小玉 トップページでは、あえて作品の写真を大胆にトリミングして見せる手法に挑戦しています。写真業界の通例としては、1枚の絵として完成された作品をトリミングするのはご法度という考え方があるかもしれません。
しかし、母の作品は非常に抽象度が高いため、いきなり全体をフワッと見せても真意が伝わりにくいんです。逆にデザインの主張が強すぎても作品の良さを消してしまいます。
そこで、トップページではあえて寄りのカットで視覚的なインパクトを作り、まずはユーザーの興味を喚起する仕掛けにしました。白と黒の対比や余白の面をうまく使いながら入り口を作り、詳細ページに入ってから初めて作品の全貌をじっくりと見てもらうという、見せ方の緩急を意識しています。


–––––ユーザーが作品を見て回る際の回遊性については、大学で学ばれた建築や都市計画の視点も活かされているのでしょうか?
小玉 そうですね。作品と向き合っているときのユーザーの集中力を切らさないよう、動線設計にはかなりこだわりました。
一般的なポートフォリオサイトでは、ひとつのプロジェクト(作品)の詳細ページを見終えると、一度インデックス画面(一覧)へ戻り、そこから次の作品を選ぶ構造になっていることが多いですよね。しかし、この遷移には一度「部屋から出る」ような感覚があるんです。そこで集中が途切れ、再び作品を選び直すという心理的な負荷が生まれてしまいます。
そこで、詳細ページをスクロールし終えたら、そのままシームレスに次の作品へ遷移できる構造にしています。途切れることなく、次々と作品世界を漂っていけるような、有機的なつながりを持たせたUIを目指しました。ユーザーが一度「ゾーン」に入った状態を保ち、見るモードから離脱させないためです。
こうした体験設計は、これまでのツールではエンジニアに依頼しなければ実現が難しい部分でした。しかし、Wix Studioの柔軟なレイアウト機能を活用することで、デザイナー自身の手で試行錯誤しながら実装できるようになりました。(後編へ続く)

Wix Studioの真価に迫る、無料ウェビナーを開催!
プロフェッショナル向けのノーコードツール「Wix Studio」を展開するWix.comとオンラインメディア「Web Designing」が、Flowplateauxの木村浩康さん、tote incの谷井麻美さん・山口国博さん、ium incの小玉千陽さんをゲストに迎え、Wix Studioを使ったWebサイト制作の実践に迫るウェビナーを開催します。
本ウェビナーでは、ECサイト、音楽体験サイト、ポートフォリオサイトという3つのテーマで、実際にWix Studioを使ったサイト制作のプロセスを公開。UX設計の発想や制作フローの変化など、制作の試行錯誤を振り返りながら、プロのクリエイターが感じたWix Studioの手応えや工夫、そして制作の現場で活きるポイントを紹介します。
実制作だからこそ見えてきたリアルな知見を、ぜひご覧ください。
イベント概要
開催日時:2026年6月18日(木)16:00~17:10
参加方法:Zoomを使用したオンライン形式
参加費:無料(事前登録が必要)
登壇者:木村浩康(Flowplateaux)、谷井麻美・山口国博(tote inc.)、小玉千陽(ium inc.)
取材・文:長谷川智祥、写真:秋山枝穂、企画協力:Wix.com Japan株式会社
※本記事はWix.com Japan株式会社とのタイアップ企画です。