ドール社員が“自然言語でアプリ開発”に参加!「Base44」が変えたAI活用のハードル

「AIの活用を促進しよう」という目標を掲げていても、なかなか浸透しない会社は少なくないのではないでしょうか。果実の生産・販売を手がける株式会社ドール(以下、ドール)もそうした課題を抱えていました。

しかし、AIアプリ開発プラットフォーム「Base44」の導入をきっかけに解決できたといいます。Base44とは、自然言語でアイデアを伝えるだけで、アプリ開発ができるバイブコーディングプラットフォームです。

ドールでIT企画部の部長としてAIの活用促進を担う濱中功樹さんに、Base44の導入がもたらした効果や同社でのAI推進の現状について話をうかがいました。

目次

Base44の導入で、社員の隠れた才能を発掘

–––––ドールでは、どのようなきっかけでAI活用に取り組みはじめたのでしょうか。

濱中功樹(以下、濱中) 社長の意向もあり、当社ではAIの活用を重要テーマと位置付けていました。私はIT企画部の部長としてAIの浸透と文化の醸成を担っており、Copilotの活用を進めてきましたが、最初はなかなか浸透しませんでした。その主な原因として、AIで何ができるのか体験する機会がなく、活用イメージや期待感を持てないことが大きかったのではないかと思います。

–––––そうした状況で、なぜBase44を導入することになったのですか。

濱中 『CMO Japan Summit 2025』というイベントに社長が参加した際に、Base44のチームの方たちから紹介されたそうです。専門的な知識がない人でも、すぐにアプリがつくれるというスピード感を評価し、導入することになりました。

–––––濱中さんご自身は、Base44に触れてみてどのような印象を持ちましたか。

濱中 昨年ごろから、自分でもはやりのバイブコーディングに取り組んでいました。しかし、それがもうサービスとして提供されていたことに驚き、率直にすごいと思いました。

株式会社ドール IT企画部の部長、濱中功樹さん

–––––社内でAIの活用が進まない中、Base44をどのようにして浸透させていったのでしょうか。

濱中 社長のアイデアで、ハッカソンを開催したことがきっかけでした。

以前、プロモーションの一環で「Doleバナナソング」という曲を発表したのですが、これは社長が作詞・作曲し、音楽が得意な社員が打ち込みとボーカロイドで形にしたものでした。その時に、ほかにも普段の業務の中では活かしきれていない能力を持つ社員が多くいるのではないかと気づき、そうした才能を発揮できる環境づくりが大事だと社長は感じたそうです。

Doleバナナソング」はYouTube上で誰でも見ることができる

–––––Base44を使ったハッカソンを開催するにあたり、使用方法の勉強会は実施されましたか。

濱中 特別、勉強会といったものは開催していません。もし勉強が必要になるような難しいツールだったら、導入できなかったと思います。役員も含めた社員全員参加の説明会を行い、そこで「Base44を使ってハッカソンを行います」という話をしただけでした。

Wix/Base44のエンタープライズ営業担当の方にも説明会に参加いただいたのですが、あえて「こういうアプリがつくれます」といった事例は見せませんでした。もし見せたら、つくるもののイメージが引っ張られてしまい、みんなが持っているアイデアを制限してしまうと考えたからです。

–––––説明会やハッカソンはいつ実施したのですか。

濱中 説明会は2026年1月末で、ハッカソンは2月に行いました。早い人は、その日のうちにつくったアプリを提出してくれました。

–––––すごいスピード感ですね。最終的にいくつのアプリが提出されましたか。

濱中 50以上のアプリが集まりました。1人で3個つくった人もいます。どのアプリも趣味や性格が反映され、「この人がこんなアイデアを出してくるのか」という発見がありました。

Base44アプリを起点に社内コミュニケーションを促進

–––––ハッカソンに提出された約50個のアプリの中で、特に印象に残ったものはありますか。

濱中 どれを挙げればよいかわからないほど、おもしろいものがたくさんありました。そうした中でも、カメラに顔を映すとAIで表情から感情を読み取るアプリや、話した内容を録音してコンプライアンス違反がないか評価するアプリなど、カメラや録音といった機能を活用したものが印象的でした。

他には、当社製品の店頭での棚割りイメージ図を作成できるシミュレーターやゲームアプリなどがありました。

–––––業務効率化アプリが多いのかと思いましたが、とてもバラエティに富んだものがつくられたのですね。

濱中 説明会では、「業務に関係ないものでよいので、あなたの中にあるアイデアを出してください」と伝えました。あとやはり、事例を見せなかったことがイメージを狭めずよかったと思います。

筋トレ好きがつくった筋トレ記録アプリや旅好きがつくった旅ログアプリ、お酒コレクターがつくった酒ログアプリ、サッカー好きがつくったフォーメーション作成アプリなど、趣味から着想したものもたくさんありました。

–––––ハッカソンにそれだけの数やバリエーションのアプリが集まると予想していましたか。

濱中 実は少し心配で、応募がほとんどなかった場合には、私がつくった簡単なアプリを例に勉強会を開こうと考えていたのです。しかし、提出されたアプリがどれも素晴らしくて……、私のアプリは恥ずかしくて見せられないと思いました(笑)。

–––––ハッカソンの開催後も引き続きBase44を使われていますか。

濱中 はい。ハッカソンはフリープランで行いましたが、その後も継続して使いたいという希望者へは有償ライセンスの使用を支援しています。

–––––実際に社内で運用されることになったアプリはありますか。

濱中 はい、あります。業務関連など非公表のアプリもありますが、例えば、ゴルフ部の活動活性化アプリがあります。ゴルフコンペの日程やゴルフ上達の情報のほか、敷居が高く感じている人も入りやすいようゴルフファッションのページなどが用意されました。SNSのようにコメントをつける機能もあります。

ゴルフ部の活動活性化アプリ

また、棚田部という米づくりをする部活のアプリでは、1年かけてどのように米がつくられるかといった情報を発信しています。2つの部活アプリに派手な機能はありませんが、コミュニケーションが広がっているのがとてもよいと感じています。

米づくりを行う社内部活、棚田部で活用されている

–––––AIの推進が、社員間のコミュニケーション醸成につながるのはおもしろいですね。

濱中 そうですね。まだ開発中ですが、ほかには従業員同士で感謝を伝え合うサンクスボードアプリがあります。例えば、誰かに感謝の気持ちを伝えられた人に3ポイントが付与され、ポイントが貯まると品物が進呈されるような仕組みをイメージしています。こうしたES(従業員満足度)を改善するアプリはハッカソンに多かったですね。

サンクスボードアプリ

濱中 ほかには、落ちてくるバナナをキャッチする「もったいないバナナキャッチ」というゲームアプリがあります。誰がやっても楽しめて、目を引くものになっていました。

Base44を使ったアプリ制作を通じて、社内はどう変化した?

–––––Base44でのアプリ制作を経験したことで、社内のAI活用状況はどのように変わりましたか。

濱中 社員からAIの話題を振られることが増えました。アプリ開発を経験したことで、身近に感じたようです。AIで何ができるのかわかると、自ずとアイデアも出てくるようになるのでしょう。

–––––社内でBase44のようなAIツールが浸透することのメリットをどのように捉えていますか。

濱中 これまでは、もしアプリで課題解決できるアイデアがあったとしても、IT企画部に相談してもらいシステムの人間が開発する必要がありました。その場合、費用対効果を検証して予算の承認を取り、数カ月かけて開発するというフローになります。それだけ敷居が高いと、アイデアがあってもなかなか相談されません。

しかし、Base44を使えば自分ですぐに開発や改善ができるので、革命的だと思います。アイデアはエンジニアではなく現場のユーザーが持っているものです。それをユーザー自身が形にできることは、事業会社にとても合っています。

–––––自分でアプリ開発ができると、運用しながら改善できる点も大きなメリットですよね。使い方などで悩むことはありましたか。

濱中 話しかける感覚で簡単にアプリをつくれるので、開発についての質問はほとんどありませんでした。ただ、完成後の「公開」機能については、どこまで公開されるのかわからないという質問があり、こちらで設定などをサポートしました。

–––––Base44をうまく活用するコツなどはありますか?

濱中 最初は直接Base44にプロンプトを投げる人が多かったのですが、慣れてくるとみんな自然とCopilotでプロンプトをつくるのが有効だと気づき、使いこなすようになっていきました。

–––––Base44の導入をきっかけにCopilotも活用されるようになり、AIツールを使うカルチャーが浸透する結果になったのですね。

濱中 はい。当初目指していた、AIを活用するカルチャーが根付きはじめたと感じています。Base44のハッカソンがAI推進のマイルストーンになりました。

–––––今後、Base44をはじめAIをどのように活用していきたいですか。

濱中 Base44を使って社員が開発したアプリのリリースを予定しています。今後も、そのような社員の隠れた才能を、AIの力を活用して引き出していけたらと考えています。

取材・文:平田順子

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