「Orizm」でレガシーな大規模サイトをフルリニューアル! 運用改善と応募数増加を目指したSOMPOケアの挑戦

介護業界最大手の一つであるSOMPOケア株式会社は、2024年11月、全国に展開する事業所の求人情報を掲載する採用サイトを全面リニューアルしました。このプロジェクトを担ったのが、独自CMSをフルカスタマイズで構築できる次世代のWebサイト開発プラットフォーム「Orizm(オリズン)」を提供する、ちょっと株式会社です。

SOMPOケアが抱えていた課題を、同社はどのように解決していったのか。SOMPOケアの人事部人材採用室チームリーダー・吉清美佐子さんと、ちょっと株式会社の代表取締役社長・小島芳樹さん、エンジニア・瀧川椋平さんに話を聞きました。

目次

約2,000件の求人情報を掲載する採用サイトが抱えていた課題

––––まずは、SOMPOケア採用サイトのリニューアルを検討された背景を教えてください。

吉清美佐子さん(以下、吉清)  旧サイトは制作から5年以上が経過し、その間さまざまなコンテンツを継ぎ足しながら使ってきました。その結果、利用者にとってのわかりやすさや、私たち運用側の使い勝手に限界を感じるようになっていたのです。

以前のCMSは、採用サイトの立ち上げより前にコーポレートサイト用に構築されたものだったので、利用していない機能が多く、管理画面上には使わないメニューがいくつもある状態でした。

また、求人情報はCMSで更新できましたが、それ以外のページは代理店を介して制作会社に依頼する必要があり、たとえ1文字の修正であったとしても、時間とコストをかけなくてはなりませんでした。

SOMPOケア株式会社 人事部 人材採用室 チームリーダー 吉清美佐子さん。求人情報の管理やコールセンター連携など、キャリア採用業務全体を統括。

小島芳樹さん(以下、小島)  キャリア採用サイトは、多くても20〜30ページ程度の構成が一般的です。しかし、SOMPOケアさんは事業所が全国に1,000以上あり、職種も介護士・看護師・ヘルパー・ケアマネージャーなど多岐にわたるため、ひとつの“採用ポータル”と呼べる規模という印象でした。

吉清  はい、求人情報は現在も常時2,000件ほど掲載しています。

ちょっと株式会社 代表取締役社長 小島芳樹さん。Webデザイン、フロントエンドエンジニアなどの経験を経て、2019年に同社を設立。
ちょっと株式会社 成長戦略部 技術基盤チーム エンジニア 瀧川椋平さん。今回のプロジェクトでは、主にOrizmを用いたCMSの開発を担当。

––––リニューアルをちょっとさんに依頼された経緯を教えてください。

吉清  元々はコンペを前提に10社ほど面談したのですが、ちょっとさんの印象が特によくて、最終的には指名でお願いすることにしました。小島さんの知識の豊富さや話しやすさに加え、私自身がリニューアルでリーダーを務めるのが初めてで、うまく伝えられないところも意図を汲み取ってフォローしてくださる姿勢に安心感を持てたのが決め手です。

––––当初、ちょっとさんからはどのような提案をされたのでしょうか?

小島  大規模かつ日々アップデートしていくサイトですから、既存のコンテンツを欠けることなく移行させつつ、日常の更新業務も止めずに新サイトへ引き継がなくてはなりません。この点については、大規模サイト構築の経験もありましたし、Orizmで技術的に解決できる見通しを持っていました。

また、採用情報以外もすべてSOMPOケアさん社内で更新できるようにすることで、スピーディーに対応でき、コスト削減も見込めるといった点を提案させていただきました。

OrizmはNext.jsというモダンなフレームワークで構築されており、動作が非常に軽く、セキュリティにも優れるという特徴があります。最初に私たちのデモをご覧いただいたとき、吉清さんがページの表示速度に驚かれていたのを覚えています。

吉清  それまで自分たちのサイトが古いとは感じていなかったのですが、新しい技術でつくられたサイトの表示速度を見て、「こんなにも違うのか!」と実感しました。

管理画面の構成は旧CMSに寄せて、“使いやすさ”を維持

––––リニューアルにあたり、SOMPOケアさんは要望をどのように依頼したのでしょうか?

吉清  とにかく「こうしたい」と考えたことを、できる・できないにかかわらずすべて洗い出して、Excelにまとめてお渡ししました。そこから、ひとつずつ検討していただきましたね。たくさんあって、具体的には思い出せないほどです。

瀧川椋平さん(以下、瀧川)  そうですね、最初の段階でリストをいただきました。それを元にディレクターと検討しながら、旧CMSの機能を継承する部分と、改善すべき部分を整理して開発を進めました。

––––課題を解決するうえで、Orizmの機能がうまく活用されたポイントはありますか?

瀧川  このサイトは求人情報だけでなく、各施設の情報、イベント情報、ブログなど、管理したい情報が幅広く、またそれぞれ特化した項目を持っていることが特徴です。Orizmは管理する項目をフルカスタマイズできるので、それぞれの情報に合わせたデータ構造を用意できたことが、もっとも強みが出た部分だと思います。

小島  以前のサイトは求人情報のデータベースのみCMSで管理・更新する仕組みでしたが、Orizmではそれ以外のページも含めてCMSから追加・更新・管理が可能です。たとえば「社長メッセージ」や「はたらく環境を知る」といった、通常はHTMLで組んで、固定で掲載するようなページです。これにより、ほとんどのページをエンジニアの手を借りずに更新できるようになりました。

また、OrizmはCMS構築の段階で「デザインシステム」が組み込まれます。ページの作成・更新は、デザインシステムで規定されたパーツを組み合わせるというある種の制約の中で行うため、デザイナーでない人でも簡単に編集ができると同時に、一定の品質を保った形で運用できるのです。

あらかじめ用意されたパーツを組み合わせて、デザイナーやエンジニアの手を借りずにページを作成・編集

––––管理画面のUIも、必要な機能に合わせて開発されているのですか?

瀧川  はい。今回は、構成を悩んでいたときにディレクターから「検討軸があったほうがいい」とアドバイスをもらいました。そこで、旧CMSの管理画面を軸に、機能配置をなるべく寄せて設計することにしました。Orizmに切り替えた際に、なるべくスムーズに使い始められるように考えたんです。

小島  管理画面のUIデザインには、Next.jsと相性のいいshadcn/uiというUIコンポーネント集を使っています。デフォルトのデザインが洗練されていて、カスタマイズも容易で、必要なコンポーネントを効率よく使えるのが利点です。今回のような管理画面の構築にも、非常に向いているんですよ。

吉清  旧CMSに近い構成にしていただいたのは知らなかったので、感動しています! 実際、とても使いやすく感じていますよ。

––––Webページ側のデザインについて、何かご要望されたことはありましたか?

吉清  介護業界では制作物が全般的に「アットホーム」や「温かみ」といった方向性になりがちなのですが、今回はシンプルで洗練された印象を重視したいとお伝えしました。いろいろと制約もあって理想どおりにはいかない部分もありましたが、今のデザインは社内でもとても評判がいいです。

見た目の雰囲気以上に大きく変化したのは、「求人検索」機能の配置です。以前はややわかりにくい位置にあったのですが、今では最初に目に入るようになりました。

SOMPケアのキャリア採用サイト。求人検索機能を最初に目に入る位置に配置。求職者の一番の目的に応えるデザインに

Webサイトのモダン化は、ビジネス課題の解決につながる

––––リニューアル後、どんな変化を感じていらっしゃいますか?

吉清  求人情報の掲載は、各事業所から社内メッセージで依頼を受け、人材採用室が対応する流れで行っています。この部分は以前と変わらないのですが、CMSが変わったことで、私たちの業務負担は大幅に減ったと実感しています。

またサイトリニューアルと同時に広告運用も見直したため、純粋な改善効果は測りにくいのですが、応募獲得数は前年を上回っています。年々厳しくなっている中、これは非常にありがたいこと。検索性の向上などユーザビリティが成果につながっていると感じています。

小島  そう言っていただけて、私たちも嬉しいです!

––––今後の運用については、どんな取り組みをお考えですか?

吉清  コンテンツをもっと充実させて、「ここで働きたい」と思ってもらえるようなサイトにしていきたいですね。現在はスタッフインタビューや、資格取得をサポートする会社のキャンペーンといった情報を、ちょっとさんの手をお借りして作成しています。

求職者の方はさまざまな情報を調べて比較することから活動を始めるので、探しやすく、応募しやすいサイトでありたいと思っています。

小島  SOMPOケアさんは、業界のトップリーダーとしてたくさんの魅力を持っています。それをもっと発信することで、別業界からの求職者にも興味を持ってもらえるはずです。

そして何より、興味を持ってくれた人が実際に求人情報に辿り着きやすいことが大切です。今後は、たとえばヒートマップツールを導入したり、流入動線の解析からUIを改善するといったご提案もしていきたいと考えています。

––––運用しながら改善を続けることが大事なのですね。

小島  そうです。Webサイトは事業に欠かせないものですが、ビジネス面では皆さんそれぞれに課題をお持ちだと思います。一方で、技術面ではレガシーな環境の制約を受けて、新しい施策を乗せられない、日々の運用が徐々に重くなるといった課題が少なくありません。

今回のプロジェクトのようにモダンな技術で再構築することで、業務の効率化と新しい施策の実装が進み、最終的にはビジネス成果にもつながります。Webサイトのモダン化は、技術的な進化だけでなく、企業の成長を支える重要な要素だと言ってよいのではないでしょうか。

Webサイト制作・システム開発会社のちょっと株式会社。フロントエンド開発に強みを持ち、月間数千万PVの大規模サイトや大手企業のサイト制作などの実績がある

Text:笠井美史乃 Photo:黒田彰

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