「Next.jsとVercelで、よりよいWebサイトを届けていきたい」小島芳樹(chot Inc.)×ギシェルモ・ラウチ(Vercel)が語る技術の意義と、これからの開発

chot Inc.はモダンな技術を駆使した開発で多数の実績を持ち、2023年に日本で最初のVercelエキスパートパートナーとなりました。そのVercelからCEOのギシェルモ・ラウチ氏が来日し、chot Inc.代表取締役 小島芳樹さんとの対談が実現。chot Inc.とVercelが目指すものとは? そして、AIによって開発はどう変わるのか? 2人が向き合う“いまとこれから”を語り合いました。

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「待てない」性分から開発されたNext.jsとVercel

小島芳樹(以下、小島)  こんにちは。chot Inc.へようこそお越しくださいました。

ギシェルモ・ラウチ(以下、ラウチ)  ありがとうございます。日本のパートナーをぜひ訪問したいと思っていました。

小島  私たちは日頃からNext.jsやVercelを使って開発を行っていますが、ギシェルモさんがなぜNext.jsやVercelを開発されたのか、最初にお聞きしたいと思います。

ラウチ  それはシンプルに、私自身がとてもせっかちであり、つくったらすぐにデプロイしたかったからです。特にビジュアルに関する部分については、“待つ”ということができません。

開発者が即座にフィードバックを得ることは、とても大切だと考えています。実際、最初のプロダクトコードネームは「NOW」でした(笑)。現在はスピードだけでなく、パフォーマンスやクオリティにも深く配慮して、お客様がビジネスを改善し、成長できることをミッションとしています。

小島  開発者にとっては非常に心強いプロダクトです。

ラウチ  私たちはオープンプラットフォームを信条としています。そして開発者教育に多額の投資をしています。これから「v0」のような、AIの力を借りて増えていく何億もの新世代の開発者が、すぐに自分のアイデアをプロダクト化し、世界に向けて発信していけるよう支援したいと思っています。

小島  v0のお話が出ましたが、v0を含めた生成AIは、これからのWebサイト構築にどういう影響を与えていくと思いますか?

ちょっと株式会社代表取締役社長の小島芳樹さん。1986年生まれ。会社員としてWebデザイン・ディレクション・事業開発の仕事に携わる傍ら、勉強会や技術者向けのコミュニティを主催。2018年5月に独立し、2019年4月にちょっと株式会社を設立

ラウチ  いい質問ですね。先日、あるWebサイトのトップに静止画ではなくアニメーションが掲載されているものを見ました。非常にクオリティの高い生成イメージで、サイトの文脈的にも納得のいくものでした。

さらに、リロードするたびに変わり、まるで生きているようでした。生成AIは新しいクリエイティブツールになると感じました。それがWeb業界にアニメーションや3D表現が用いられ始めた頃のような、クリエイティブなアプローチになることを期待しています。

それから、例えばVercelにホスティングされているOpenAIのブログでは、記事内容にあわせた画像を自動的にAIで生成・掲載しています。こうした使い方は、マーケティングコンテンツのためにデザイナーの手を煩わせる時間を大幅に削減するでしょう。

ギシェルモ・ラウチさん。Vercel Inc. CEO。アルゼンチン出身。子どもの頃からWeb開発とオープンソースに親しみ、18歳でフロントエンドエンジニアとして米サンフランシスコへ。Web高速化ツールとクラウド開発インフラの必要性を感じたことから、Next.jsとVercelを立ち上げる

関心が高いだけでなく、日本はAIを必要としている

小島  Vercel社では、現在の日本のマーケットをどのように見ていますか?

ラウチ  日本は、生成AIの到来で大きく成長する過渡期にあると考えています。それはv0に対する驚くほどの関心の高さからも見て取れます。Next.jsにも多くの関心が寄せられてきましたが、AIへの関心はそれをはるかに上回ります。

そして関心があるだけでなく、労働力不足や高齢化といった課題からAIを必要としているとも思います。つまり経済面からもAIが求められているのです。Vercelは、日本の開発業界にAIを行き渡らせる企業になりたいと考えています。

Webサーバ機能が統合されたフロントエンド開発向けクラウドプラットフォーム「Vercel」。GitHubなどとの連携による自動デプロイやCDNによる高速なコンテンツ配信など、高速で信頼性の高いCI/CDプラットフォームとして開発者に支持されている

小島  ということは、“Vercel Japan”の計画もあるのでしょうか?

ラウチ  はい。今年の最優先事項は日本への投資を正式に決めることです。まずカントリーマネージャーを採用し、国内チームを成長させて、法人向けのサポートを強化していきたいと思います。

小島  そうなんですね! 私たちにできることがあればぜひお手伝いさせてください。

ラウチ  それはとてもありがたいご提案です。成長するためには、優れた技術だけでなく強力なパートナーシップも不可欠です。私たちはVercel開発に心血を注ぎ、パートナーとともに努力していきます。成長の鍵となるのは、Vercel、パートナー、そしてクライアントによる完璧なトライアングルなのです。

JavaScriptのUI開発用ライブラリReactを拡張した、オープンソースのWebアプリケーションフレームワーク「Next.js」。プリレンダリングで表示が速く、SEOにも強いなどの特徴がある。グローバルな大規模サイト/サービス開発にも使用例多数

Next.jsとVercelで、よりよいサイトをより広く

小島  私たちが提供する新しいCMS「Orizm(オリズン)」は、Next.jsとVercelで開発されています。名前は“折り詰め弁当”から取っているんですよ。(操作しながら)このようにビジュアルでページを組み立てていくことができて…。

ラウチ  素晴らしい! これはマーケターの夢ですね。誰でもページを簡単につくれて、高速で、開発者にとっても最高です。

小島  今、私たちはこれをより広めようと取り組んでいます。エンジニアが少ない日本では、こうしたアプローチにニーズがあります。まだDXが届いていない企業にも、Next.jsとVercelでよりよいWebサイトを届けていきたいと考えています。

ラウチ  いいですね。こうしたユースケースはどんどん応援したいです。もっと多くの人にOrizmを知ってほしいので、認知を広めるためにVercelがお手伝いできることがあれば知らせてください。例えば英語版を出すことも考えられますね。

小島  それはとても嬉しいです! 私たちはOrizmを、WordPressを超えるCMSにするつもりです。

ラウチ  超えていきましょう。Vercelはインフラ開発を専門にしていて、独自のCMSを開発する予定はありません。ですから、これはパーフェクトなシナジーと言えます。このような開発を望んでいました。小島さん、ぜひ今年のNext.js Confに来ませんか? LTでOrizmを紹介してください。

小島  本当ですか? 英語を勉強して行きます……!

プロンプトまたは画像の入力をもとに、プロダクトのUIを生成するAIツール「v0 by Vercel」。出力結果を対話形式でブラッシュアップできる。shadcn/uiとTailwind CSSに基づいたNext.jsのコードを出力し、Vercelへのデプロイが可能。日本語にも一部対応

Orizm(オリズン)

chot Inc.が開発する次世代Web制作プラットフォーム「Orizm」。ユーザーが見るフロント画面とWeb担当者が使う管理画面の双方を自在にカスタマイズ可能。Next.jsとVercelの利点を活かし、高速かつ高いセキュリティを実現する。

基幹システムや外部データベースと連携しながら高速な動作を実現。編集UIも柔軟にカスタマイズ可能

小島  Orizmはビジュアルでページを組み立てられるCMSです(上図)。カスタムデータベースと連携しながら柔軟にUIをカスタマイズでき、Next.jsのキャッシュ機能のおかげで大規模サイトでも高い通信効率やパフォーマンスを実現できます。

ラウチ  App Routerが持つタギングやキャッシュ無効化、部分的プレレンダリングなどの機能が理想的に活用されていて嬉しいです。このようなソリューションには理想的です。

小島  見た目をまったく変えることもできます(下図)。こちらは小規模なサイトをいくつも立ち上げられる仕組みにカスタマイズしたものです。

よりわかりやすく、運用性に配慮した幼稚園向けのパッケージ。マルチテナントサイトの構築にも対応

ラウチ  これこそ私がNext.jsを開発した理由です。フロントエンドは無限にカスタマイズ可能、かつバックエンドが柔軟に接続可能にするべきです。今年後半にリリース予定の新機能がもっとお役に立つと思いますよ!

Text:笠井美史乃 Photo:山田秀隆
※本記事はちょっと株式会社とのタイアップです。『Web Designing 2025年6月号』に掲載されている記事を、一部編集・再構成した上で転載しています。

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