私的録画補償金制度とは? ブルーレイ課金開始の背景と今後の影響

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私的録音録画補償金制度は、なぜ必要なのか?

2024年12月25日に、文化庁が私的録音録画補償金管理協会(sarah)の補償金規定を認可しました。これに伴い、2025年4月1日からブルーレイディスクレコーダーおよびディスクについて補償金が課されることになりました。

レコーダーについては1台当たり182円(税別)、ディスクについては基準価格の1%(税別)で、課金が始まると、レコーダーやディスクの購入代金にこの金額が上乗せされることになります。今回は、この私的録音録画補償金制度についてご紹介します。

著作権法では、私的使用が目的であれば、著作物を複製してもよいことになっています。皆さんの中にも放送番組を録音・録画している人がいると思いますが、個人や家族などと一緒に楽しむ目的であれば、著作権侵害にはならないわけです。

ただし、デジタル方式の場合、アナログ方式と違って録音・録画をしても音質・画質の劣化が少なく、大量の複製物を保存でき、持ち運びも容易。その意味で著作権者に与える不利益が大きいと考えられることから、補償金という形で穴埋めしようというのが、補償金制度です。

補償金はメーカーが利用者から徴収したうえで、sarahを通じて権利者に配分されます。補償金には「私的録音補償金」と「私的録画補償金」の2つがあり、それぞれの課金対象となるレコーダーやディスクは政令で指定されることになっていて、今回ブルーレイディスクが私的録画補償金の対象に指定されたというわけです。

実は、私的録画補償金については、かつては私的録画補償金管理協会(SARVH)が管理していました。しかし「アナログチューナーを搭載しないレコーダーと、そのためのディスクは課金対象外」だとする最高裁判決が出たことから、地デジへの完全移行に伴い収入が途絶え、2015年に解散しました。これにより私的録画補償金を管理する団体はなくなり、制度は事実上消滅していました。

ところが2022年になり、文化庁はブルーレイを課金対象とし、私的録画償金を管理をする団体としてsarahを指定。sarahは録音補償金を管理する録音補償金管理協会だったのですが、定款変更で録画補償金も管理することになり、録音録画補償金管理協会という現在の形に生まれ変わったわけです。

補償金はメーカーが購入代金に上乗せする形で利用者から徴収したうえで、私的録音録画補償金管理協会(sarah)を通じて権利者に配分されます

表現はよくありませんが、“ゾンビ”のように復活した私的録画補償金制度。しかし動画配信サービスが普及し、映像をディスクで楽しむ人も減りつつあるなか、「今になってなぜ?」いう気もしますよね。

一方で、レコーダーに限らず、放送番組を録音・録画できる機能とブルーレイドライブを搭載したテレビやPCなども普及しているため、これらが課金対象になるとしたら、徴収される補償金額は増えてくるかもしれません。今後、機器やディスクを購入するときは、補償金についても考えてみてください。

プロフィール

桑野 雄一郎

1991年早稲田大学法学部卒業、1993年弁護士登録、2024年鶴巻町法律事務所設立。著書に『出版・マンガビジネスの著作権(第2版)』(一般社団法人著作権情報センター 刊 2018年)など。 http://kuwanolaw.com/

文:桑野 雄一郎 
※本記事は「Web Designing 2025年4月号」からの抜粋です。

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