ファイル共有ソフトの“自動アップロード”に注意! 知らぬ間の著作権侵害と法的リスク

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“意図せぬアップロード”でも責任を問われる理由

2025年7月1日、国民生活センターは、ファイル共有ソフトの利用による著作権侵害について注意を呼びかけました(https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20250701_1.html)。

紹介された事例は、「視聴したい動画をダウンロードするためにファイル共有ソフトを使用したところ、そのソフトの機能により自分のPCに保存されていた動画が自動的にアップロードされ、著作権侵害を指摘された」というものです。

ファイル共有ソフトの中には、ダウンロードと同時にアップロードも行う機能を備えているものもあり、利用者の意図に反して動画が共有されてしまうケースがあります。本人としては「故意ではないので責任はない」と言いたくなるかもしれません。

しかし、このようなソフトを使用する際は、その機能を十分に調べ、理解したうえで利用するべきです。それを怠った場合、過失があったとみなされ、法的責任を問われても仕方がないでしょう。

では、ファイル共有ソフトでは自動アップロードのことだけ気を付けていればよいのかというと、そうではありません。

インターネット上には著作権者に無断でアップロードされた動画が無数に存在します。特に、一般の方が制作した動画ならともかく、商業ベースで制作された動画は通常有料で販売・配信されているもの。そのような動画が無料で視聴できる場合、通常は違法に配信されたものと考えるべきでしょう。

このように、有料で販売・配信されている動画を、違法配信が明らかなWebサイトからダウンロードする行為は、著作権侵害に該当します。

「そもそも使わない」という選択肢

配信されている動画を視聴するだけであれば、著作権侵害にはなりません。そのため、繰り返し観たい動画などはブックマークに登録するなどにとどめておくのが無難です。

一方でダウンロードする場合は、その動画が違法に配信されているものではないかを慎重に確認する必要があります。適法に配信されている動画であれば、ダウンロードしても著作権侵害にはなりません。

しかし、その動画をさらにアップロードしてよいということではありません。特にファイル共有ソフトのようなツールを使用している場合は、自動的にアップロードが行われないよう注意することが重要です。また、こうしたリスクを回避するためには、そもそもファイル共有ソフトを使わないことも対策として挙げられます。

なお、国民生活センターが紹介した事例の中には、弁護士の名前で「アップロードした作品が1本なら30万円、複数の場合は70万円の示談金で和解する」と記載された示談書が届いたケースもありました。私も弁護士ですが、1作品で30万円という金額はともかく、複数の場合に何本アップロードしても70万円というのは違和感があります。

たとえ著作権侵害をしてしまったとしても、法外な賠償金を支払ったり、不合理な責任を負わされたりする必要はありません。自分に責任がある場合でも、相手から要求されている内容が法的に適切かどうか、しっかり確認することが重要です。

ファイル共有ソフトには、コンテンツを自動アップロードする機能が備わっているものもあります。便利な反面、著作権の観点では注意が必要です

プロフィール

桑野 雄一郎

1991年早稲田大学法学部卒業、1993年弁護士登録、2024年鶴巻町法律事務所設立。著書に『出版・マンガビジネスの著作権(第2版)』(一般社団法人著作権情報センター 刊 2018年)など。 http://kuwanolaw.com/

文:桑野 雄一郎 
※本記事は「Web Designing 2025年10月号」からの抜粋です。

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