「型」を身につけて、ストーリーの構成力をアップさせよう! “温故知新”で学ぶ物語の構造
古来から、名作に共通する「物語の構造」はつくり手たちの関心事であり、その多くは、「型」として結実し、現在でも創作の基礎理論として用いられています。物語の「型」には、小説や脚本等の創作活動だけでなく、Webサイトや動画制作、日々のプレゼンテーション等、実務にも応用できるエッセンスが満載です。先人たちの知恵を学び、さまざまな場面で活用できる「構成力」を向上させましょう。
なぜ物語の「型」を知る必要があるのか?
なぜだか「頭に入ってこない話」ってありますよね。難解というわけではなく、主題がわからない、話が二転三転する、とにかく長い、そして、最後まで読んでも何が言いたかったのかわからない……。
こうした話・文章になってしまう原因は、思いつきをそのままにアウトプットしてしまうことにあります。しかし、人は自分で思うより、理路整然と筋道を立てて物事を考えているわけではありません。そのため、加工せずに出力した情報は、混線し迷走してしまうのです。
かく言う私も、業界に入った当初は、悪い見本のような文章を量産していました。そこで当時の上司に徹底させられたのは、「まずは型どおりにする」ということでした。
物語や文章のつくり方には、すでに定式化された「型」があります。それは、単純なテクニック論ではなく、先人たちが何世紀にもわたって試行錯誤し、たどり着いた、名作をつくるための知恵の集合です。俗な言い方を許してもらうなら、盛り上がる話の“鉄板”テンプレートと言えるでしょう。
創作・表現を志すからには、大なり小なり「型破り」なものをつくりたいという野心はあるでしょう。しかし、「型」を知らず、無軌道・無作法に書き散らすだけなら、それはただの「型(形)なし」です。
「型」を破るには、まず「型」を知ることから。「型」を身につけ、使いこなすことが、逆説的に自由自在な「語り」の力を手に入れることにつながるのです。
基礎編①|伝統芸能に見られる物語の「型」
作文指導でおなじみの型「起承転結」
漢詩に起源を持つ「型」で、小説やドラマなど、さまざまな創作の基礎として用いられる汎用性の高い型です。
まず、「起」で主題を設定し、「承」は主題を受けて物語世界を広げます。続く「転」では、流れをがらりと変えるような意外性ある内容を差し込み、「結」で物語の余韻を持たせながら締めます。
「春眠暁を覚えず」で有名な、孟浩然の「春暁」の起承転結は下図のようになります。

加速度的に盛り上げる「序破急」
雅楽に起源を持ち、能楽を中心に日本の伝統芸能で多く用いられる「型」です。
「序」で物語の舞台設定をし、「破」では物語が進むにつれてピッチを上げていきながら、「急」でクライマックス+簡単な説法・教訓で締める、という比較的ラピッドな展開を見せます。
「破」から「急」への展開が見事な「卒塔婆小町」で、序破急のイメージをつかみましょう。

ハリウッド映画の教則「三幕構成」
西洋演劇に起源を持ち、映画の基本構造としてハリウッドで体系化されたのが「三幕構成」です。
第1幕では、登場人物や物語の主題が「設定」され、続く第2幕では、主人公の目的を邪魔する「障害との対立」が描かれます。そして、締めくくりとなる第3幕では、物語の結末が描かれます(「解決」)。
三幕構成の特徴は、物語の転換点となる2つのプロットポイント(PP)と、物語自体が大きな変化を迎えるミッドポイント(MP)が置かれることです。
各ポイントに注目しながら、映画「タイタニック」の構成を見てみましょう。

基礎編②|実務への応用力を身につける セールスレターの「型」
結論先行でパワフルに解決!
ヒーロータイプの型「QUESTフォーミュラ」
「問題が解決できる」と宣言することからスタートし、自社商品等がどのように読者の悩みを解決するかを、順を負って説明する「型」です。全体的にポジティブに、モチベーションを高めていきます。
広告用ランディングページ(LP)で多く用いられるほか、商談やプレゼンテーションなどにも使いやすい型と言えます。

読者のストレスコントロールが鍵!
問題点の指摘から始める型「PASONAの法則(旧式)」
冒頭で問題点を指摘して悩みを直視させてから解決策を提示し、大きく好転させる「型」です。
最初にドキッとさせて、ユーザーの関心を掴む力は抜群ですが、一方で、ネガティブな訴求が過ぎると、欠点をあげつらわれているようで、反感や不快感を抱かせる要因にもなります。そのため、読み手のストレスコントロールには注意が必要です。
現在は、その点が緩和された「新PASONAの法則」が主に使われますが、こうした型も知っておくことで、アイデアの引き出しが増えるでしょう。

実践編|テンプレ感を脱却! 「型」を自分のものにする方法
準備:「型」の本質を理解する
「型」の本質は、極論すれば、観客(読者·ユーザー)を飽きさせないことと言えるでしょう。そして、さまざまな「型」を通して見えてきたのは、以下の3点です。
❶情報提示
❷全体のメリハリ(緩急や起伏)
❸ストレスコントロールの重要性です。
これらの3点を意識しながら、「型」の構成要素や流れの意義を理解することが、「型」を体得する近道になります。
特訓:「型」を徐々に使いこなす
重要なのは、「型通り」から始めること。慣れてきたらアレンジやミックスを試して、型の構成要素を自由に扱えるようになりましょう。
❶「型」に情報を当てはめ、物語·文章の骨子をつくる
書きたい情報やエピソードを箇条書きで書き出し、まずは、起承転結などの「型」に忠実に、各要素を並べてみましょう。こうすることで話の骨子が客観的にわかるようになり、足りない要素や、逆に不要な要素が見えやすくなります。
❷観客の反応を想像し、ブラッシュアップする
❶を叩き台に、物語にメリハリが出るような演出を加えつつ、ブラッシュアップしていきます。特に、最初のうちはとにかく冗長になりやすいので、時には大胆にカットする決断も必要です。
❸「型」をアレンジしてみる
「型」の要素を入れ替えたり、「型」にない要素を加えたりして、より面白い見せ方ができないかを考えてみます。アレンジを繰り返すことで、自分なりの「型」のバリエーションを見つけることができ、構成力が上がります。
❹さまざまな「型」を試して、引き出しを増やす
複数の「型」を習得することで、1つの「型」のアレンジだけでなく、複数をミックスすることも可能になります。ここまでくると、「型」は一種のツールとして、逆に自由な発想の手助けとなっているはずです!
文:原明日香(アルテバレーノ)
※本記事は、「Web Designing 2025年4月号」の記事を一部抜粋・再編集して掲載しています。
