多様で複雑……時代の変化の波をどう捉えるか? プロジェクトマネジメントを巡る世の中の状況を知ろう

多様で複雑化する社会状況を背景に、制作手法は多岐に渡り、人や組織によって働き方も異なります。だからこそプロジェクトの推進には、全体の動きを把握するプロジェクトマネジメント(以下PM)が欠かせません。そこで、PM業務に定評のある株式会社コパイロツトに取材。実務で活かせるPMのあり方を、事前の「計画」とプロジェクトの進行に欠かせない「会議」という2つの切り口を中心に、解説します。
教えてくれたのは……

株式会社コパイロツト
多様な目的やメンバーのプロジェクトにコパイロツト(副操縦士)として伴走するプロジェクトマネジメント集団。自社には制作部隊を持たない。デジタル領域を中心に、マーケティング戦略の伴走支援、新規事業開発、ナレッジマネジメント、組織づくりなどをサポートする。今回は、同社プロデューサーの船橋友久さん、プロデューサー/プロジェクトマネージャーの多田知弥さん、プロデューサー/プロジェクトマネージャーの三浦祐子さん、プロジェクトマネージャーの亀岡真由さんにお話を伺いました。
プロジェクトマネジメントを巡る状況を知ろう
最初にPMを取り巻く社会的背景を押さえておきましょう。IT技術が急速な進歩を遂げる一方、新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、企業を巡る環境は劇的に変わりつづけています。変化に強く柔軟性の高い組織づくりが求められる昨今、新規プロジェクトへの臨み方は、難易度が高まるばかりです。
PMにこそ求められる、VUCA時代への対応
2010年代から、特にビジネス界で広く使われ出した「VUCA」という言葉。もともとは軍事用語であり、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字が由来となっており、現代の企業を取り巻く状況を端的に表しています。みなさんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
私たちも、さまざまな企業からご相談を受ける中でクライアントの変化を強く感じる場面が増えています。VUCA時代を意識した新規事業を社内から求められる一方、自社で正解が見えているわけではない場合も多いです。プロジェクトを進めるとなると、社内の複数にわたる部門・部署が絡んだり、既存の別プロジェクトも関連してきたり、外部の開発パートナーとの連携も出てきたりします。
もちろん、案件化していくプロジェクトは、規模の大小や種類、取り組みやすさなど千差万別です。その前提を踏まえつつ、ますます「プロジェクトのスタート地点に立つこと」がとても難しいのが現代だと実感しています。PMはなかなかスムーズに進まない困難な背景を抱えながら取り組むべき業務と言えます。

制作プロセスだけでなく、働き方も。多様なあり方への対応が必須
制作や開発の現場において、そのプロセスでは状況に応じた異なるアプローチが求められています。例えば、企画→要件定義→設計→実装→テスト→納品のような、プロジェクト完了期日から逆算してスタートから積み重ねていくウォーターフォール型の進め方は、従来の開発手法として広く知られています。
そこに加えて、設計→計画→テスト→実装といったサイクルで、身近なゴールに向けて開発を繰り返しながら進めていくアジャイル型の開発手法が採用されるシーンも増えています。実際、みなさんの現場でもこれらのアプローチのどちらかだけを選ぶというより、プロジェクトの性質にあわせて、より適したほうを採用したり、適宜両者とも採用したりしながら進めたりしているのではないでしょうか。
働き方に目を向けると、コロナ禍を契機にリモートワークの導入が広がるなど、2020年代に入って働き方が大きく変化していきました。利便性の高いツールも続出し、現代はリアルかリモートか、もしくは両者を混ぜた働き方が混在する状況です。
個人の考え方だけでなく、企業風土によっても多様な働き方が考えられますが、これは同じ社内だけに止まらずクライアント、ステークホルダーにも言えます。プロジェクトにかかわる多数の人たちには、多様な組み合わせが想定されます。その中でPMには、立場の異なる誰もが納得できる体制づくりが求められています。

《Vol.2へ続く》
取材/文:遠藤義浩
※本記事は「Web Designing 2025年4月号」に掲載した内容を一部再編集して公開しています。
