《文章力を上げる新・鉄板ルール #1》文章を活用し、読者に行動を促すべし

現代は、すべての文章作成を効率重視でAI任せにもできる時代。だからこそ、読み手との関係性を踏まえた“ならでは”の文章を書ける人の価値は増す一方です。本連載では、株式会社ワン・パブリッシングの取締役社長・松井謙介氏が、「売上につながる文章術」を徹底解説。今回は、行動心理学を活用した文章の書き方を伝授します。

目次

基本をマスターしたら、次は売上につながる文章を

本連載も、早いもので第24回を数えます。本誌は隔月発行ですから、期間でいうと48カ月程度。すなわち4年! これは、もう“長期連載”と言っていいのではないでしょうか。週刊少年ジャンプに掲載されていた「鬼滅の刃」の連載期間も約4年でした。週刊と隔月という違いはあれど、期間だけでも、あの大名作に並んだわけです。  

さて、そんなこんなで、本連載もパワーアップしていきます。実はこれまでは、私のなかでは「前振り」でした。これまでは「主語と述語」がどうだとか、「読点の打ち方」はこうしろだとか、「あんたは国語の先生か」という生真面目ぶりで、粗方グラマーの解説に紙幅を割いてきました。

でも、本誌読者の多くは、Webビジネスに関与する方だと思います。それなのに「副詞の呼応」とか……さぞかし苦痛だったことでしょう。なぜそんなことをしたのか? それは、文章は「基本」が大切だからです。

テクニカルなことを言う前に、まず基本がなっていないとダメ。ゴルフのスウィングもそう。変な癖がついてしまっては上手く打てないように、まず正しい「型」を覚えたほうがいいのです。

今回からは、「売上につながる文章術」を解説します。私は「モノ情報誌」の編集者でしたから、「売れるモノとそのコピー」に詳しいです。「モノ雑誌」時代は、タイアップ広告などで幾多の原稿やコピーを書き、「おかげさまで商品の売上が150%になりました!」と感謝いただいたこともあります。

これは、きっと皆様が携わるWebビジネスにも活きるもの。今後、こうした文章を本誌以外の場所で公開する予定はありません。まさに「exclusively for Web Designing」。これを逃したら、「売れる文章」を学ぶチャンスと再会することはないかもしれません。

さあ、本番はこれからです! 「売れる文章」とは何か。それを、今後の連載でつまびらかにしていきます。

文章と行動心理学を結びつけて人に伝える

さて、私はここまでの文章で、いくつかの要素を加えました。それは次の5つのポイントです。

①期待感の演出
②権威性の演出 
③数的証明の演出
④特別感の演出
⑤限定感の演出

これらは「モノを売る」シーンのみならず、プレゼン資料、社内メール、キャンペーン告知など、色々な場面で有効なもの。皆さんも、クライアントのキャンペーンLPをつくるようなときに、きっと目にしているはずです。説明していきましょう。

①は、「ポール・マッカートニー11年ぶりの来日!」というような言葉。こう表現することで、読者は「待っていました!」と期待感を刺激されるもの。「待ちに待った納車」が飛び上がるほどうれしいように、期待値は「待ち時間に醸成される」のです。

②は「権威性」を出しました。「モノ情報誌の編集者だから、売れるコピーがわかる」。実際どうかはわかりませんが、私は幾多のコピー、宣伝文などを見てきましたし、記事を書いてきました。言語学の教授よりも、「モノを売る文章に詳しい」のは事実。その視点で権威性を付与できていると思います。

③では「150%」という数字を使いました。文章で書くなら「大幅に」「飛躍的に」などの表現になりますが、いずれも伸長率は読者の想像に委ねられてしまいます。「大幅」が「105%なのか、200%なのか」、それは読者次第。やはり、凄みを伝えるためには「150%」のような、数字の結果を書き出すのが有効でしょう。

④は「exclusively」。これは「スノッブ効果」と呼ばれ、人が「特別なものに引かれる」心理に攻め込んでいます。期間限定、先着○名様限定の商品など希少性のあるものが欲しくなる心理に刺さるはずです。

⑤はスノッブ効果の一種ですが、特に強い効果を持つ「機会損失」を刺激しています。デパートでもスーパーでも「半額セールは今日限り!」という文面はよく目にするはずです。

こうしたテクニックは、いわゆる「行動心理学」と紐づくもの。「人を動かす文章」というと、少しイヤな感じがしますが、ウソをつかない範囲での演出は必要です。これで本連載も、ますます読まれるはず。いやホント、お願いしますよ!(これは行動心理学ではなく、ただの懇願)。

こうした「相手を動かす文章表現テクニック」は、あくまで「テクニック」。「本質」の次に来るものであり、しょうもないものを買わせるような使い方はNG。怪しげな情報商材に、「〇人限定!」などの言葉が躍るのはよくあることですよね。使い方には慎重になりましょう!

文章が心理状態に影響を与えるには?

映画の宣伝で「95%の人が面白かったと回答」というような宣伝文句を見たことがないでしょうか。また書籍の帯に「絶対にこの結末を口外しないでください」と書かれているのを見たことは? これらは、いずれも消費者の心理に影響を与える文章テクニックです。下記には、文章表現と紐づけやすい行動心理学に関する効果を列挙しました。

行動心理学に関する効果説明文章例
バンドワゴン効果多くの人が支持する、あるいは利用しているものに対して、さらに多くの支持や利用が集まる95%の人が「よかった」と
評価しました!
スノッブ効果入手するのが困難なものほど需要が増え、簡単に手に入るものほど需要がなくなることこの地域でしか
手に入らないレアな一品
カクテルパーティ効果周囲が騒がしい状況でも、自分に関係のある話はしっかりと耳に入ってくる現象都内在住、40-45歳の
男性限定でお伝えします!
ハロー効果特定の対象を評価する際に、目立つ特徴に引きずられて他の特徴がゆがめられてしまう現象有名人の〇〇さんが
大絶賛!
ウィンザー効果第三者からの情報によって信ぴょう性が増すという効果書店員〇〇さんが
「傑作」と太鼓判!
アンカリング効果最初に与えられた情報がその後の意思決定に影響を及ぼすこと通常価格10,000円のところ、
いまならなんと5,000円!
カリギュラ効果禁止されると反対に興味を持って禁止されたことを破ってしまうこと絶対にこの結末を
口外しないでください
繰り返しますが、「嘘」はダメです。Web上の広告などで「100人中99人が痩せた!」みたいな、過剰にバンドワゴン効果を狙うものもがありますが、それが誇大広告であった場合のダメージは甚大。そこをケアできる目を持ちましょう。

著者

松井 謙介
株式会社ワン・パブリッシング取締役社長

雑誌『GetNavi』編集部や絵本編集部での現場編集を経て、2010年GetNavi編集長に就任。最大部数記録、電子書籍ユーザー数月刊誌ナンバーワンなどを達成。現在はメディア運営のマネジメントをしながら、コンテンツの多角的な活用を実践中。自社のメディアのみならず、企業のメディア運営や広告のコピーライティングなども手掛ける。

書誌情報

生成AI時代にこそ学びたい 自分で文章を書く技術

書籍:1,980円
電子版:1,980円
B6変:208ページ
ISBN:978-4-8399-90275
発売日:2025年09月19日

■概要

生成AIの進化により、議事録やレポート、マニュアルといった事務的な文章は効率的に自動化できるようになりました。しかしビジネスの現場では、それだけでは不十分。企画書や提案書、人材募集文、オウンドメディアの記事など──人の感情を動かし、行動へとつなげる文章には、書き手自身の思考や意見、そして「相手にどう動いてほしいか」という意図が不可欠です。

最新のAIは流麗な文章を生み出し、表現力も増しています。しかし、「誰に向けて、何を伝えるのか」という視点は、人間にしか持ち得ません。読み手を意識し、関係性を踏まえて言葉を選ぶことこそが、成果を生む文章の鍵なのです。

本書では、生成AI時代にあっても欠かすことのできない「自分で書く力」を、実践的かつ最新のテクニックとともに解説。あなたの仕事に直結する「伝わる文章術」をお届けします。

■目次

はじめに

第1章 文章を書き始める前にやるべきこと

1-1 文章の「価値」を見直しておく
1-2 準備段階で、文章の90%は完成させよ
1-3 「マクロからミクロの視点」を意識する
1-4 「結論から書けぃ!」は絶対的ルール?
1-5 書く前に「統一表記」を作ろう
1-6 「だ・である」「です・ます」を統一せよ
コラム 「普通に」って一体どの程度?

第2章 文章執筆の基本ルール

2-1 文章は「短く」、「能動態」で書こう
2-2 読み手の時間を奪う「冗長表現」を排除せよ!
2-3 カタカナ語はバランスを模索しよう
2-4 漢字と平仮名は「3:7」を目指せ!
2-5 「話し言葉」と「書き言葉」を使い分けよう
2-6 「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の秘密
コラム 「言葉の繰り返し」の新潮流とは?

第3章 文章が美しくなる7つのポイント

3-1 「読点」は感覚で打つべからず
3-2 「修飾」の正しい扱いを守る
3-3 デリケートな「並列」の扱いに注意しよう
3-4 げに恐ろしきは「主語と述語の呼応」
3-5 「は」と「が」の使い分けを知る
3-6 生成AI時代は「接続詞」の活用をマスターせよ
3-7 時代とともに変化する「副詞の呼応」
コラム 疑問文はこの上ない「断定」になる

第4章 文章の神は細部に宿る

4-1 類似表現は「ニュアンスの僅差」を把握すべし
4-2 誤解しやすい日本語表現を把握せよ
4-3 「比喩」はいまどきの若者言葉に学べ
4-4 日本語は「オノマトペ」を攻略せよ
4-5 雑誌編集者流の文章校正を学ぼう
コラム 意外と身近にある「リスクのある言葉」

おわりに

文:松井謙介 イラスト:村林タカノブ 
※本記事は「Web Designing 2025年8月号」に掲載された内容を抜粋・再編集して公開しています。

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