《文章力を上げる新・鉄板ルール #3》「個人的体験」を「ソーシャル」に接続! 伝わる文章には「ナラティブ」が必要

現代は、すべての文章作成を効率重視でAI任せにもできる時代。だからこそ、読み手との関係性を踏まえた“ならでは”の文章を書ける人の価値は増す一方です。本連載では、株式会社ワン・パブリッシングの取締役社長・松井謙介氏が、「売上につながる文章術」を徹底解説。今回は、AI時代に必要な「ナラティブ」を用いた文章術を考えます。

目次

「AIバレ」を恐れる時代の文章の書き方とは

本連載「文章力を上げる鉄板ルール」が、『生成AI時代にこそ学びたい 自分で文章を書く技術』と改題され、書籍となりました。

連載開始は約4年半前。世界がコロナ禍に覆われ、飲食店運営やイベントなどのリアルな活動は急激に縮小。誰もが不安の真っ只中にある時期でした。「人と会えなくなる時代が来る。それに従い、テキストコミュニケーションの重要性はもっと上がるはず」という思いのもと、本連載は始まったわけです。

その考えはあながち間違いではありませんでしたが、2023年ごろ、また別のゲームチェンジが起こりました。そう、「生成AI」の一般化です。

プロンプトを入力するだけで、AIがテキストを素早く、大量に生成してくれる時代が幕を開けました。現在では「身バレ」ならぬ「AIバレ」という新語も誕生。テキスト作成者は、「AIを駆使しつつ、いかに人間が書いた風のテキストを仕上げるか」を突き詰めるようになったのです。

今回の書籍は、そんなパラダイムシフトの中で書かれた一冊です。ここ1〜2年は、正直「自分で文章を書く技術なんて今後も必要なのだろうか?」、そんな自問自答の繰り返しでした。生成AIはあらゆる日本語グラマーを習得しており、「副詞の呼応」も正確で、「主語と述語」がねじれることもありません。「読みにくさ」も皆無。まさに革命。

確かに革命なのですが、一方で先述の「AIバレ」といった概念も出てきています。「バレちゃマズい感覚がある」から、そうした言葉が誕生しているはず。「過渡期のいち現象」とも言えますが、それでもユーザーは「すべてAI任せはダメなんじゃないか」と後ろめたい気持ちを持っているようです。

書き手と読み手の関係の中で文章を書く

では、AIではなく、自分にしか書けない文章とは何なのでしょう。そのひとつの回答は「ナラティブな文章」です。

「ナラティブ」とは、「物語」や「語り」と訳すことができますが、同じように「ストーリー」も「物語」と訳されます。これら2つの違いは何なのでしょうか。

まず、ストーリーは物語の「内容そのもの」を指します。一方ナラティブは物語の「語られ方」も含むニュアンス。ナラティブを「体験者の主観的な物語を自分なりに語ること」「聞く人の感情に訴えかける個人的な物語」と定義すると、そこはまだAIでは届かない領域と言えるのではないでしょうか。

Web開発を手掛ける皆さんは、Web上で何か新商品・サービスをPRする文章を書くこともあるでしょう。「こんな商品が登場しました」という客観的事実を説得力ある文章に変換するには、2つの切り口が重要になります。それは「ナラティブな語り」から入り、それを「ソーシャルなストーリー」に展開すること。この組み合わせがあれば読者はきっと関心を持ってくれるはずです。ナラティブだけだと「それってあなたの意見ですよね(byひろゆき)」になりがちですから、それを「ソーシャルな物語」に接続する意識が大切です。

では、自分が家電メーカーのPRパーソンだと仮定し、例文を書いてみましょう。

①客観的事実……吸引力が倍もある画期的な機能を持つ掃除機が発売されたんです。なんとか記事化してくれませんか。

②ナラティブな語り口……吸引力がこれまでの倍という画期的な機能を持つ掃除機が発売されたんです。使ってみたのですが、驚くほど吸ってくれて、掃除の時間がいつもの半分に! 私、その時間、ジムに行っちゃってます。痩せました?

③ソーシャルなストーリー……吸引力がこれまでの倍という画期的な機能を持つ掃除機が発売されたんです。使ってみたんですが、驚くほど吸ってくれて、掃除の時間がいつもの半分に! 私、その時間、ジムに行っちゃってます。御社メディアの読者も確か家事の悩みNo.1は「週末の家事時間が長いこと」でしたよね。その問題、改善できると思うので読者モニターとかどうですか?

読み手がグッと関心を持つのは③だと思います。しかし③には、自分が掃除してみた「体験」と、読者の悩みを取材しておく「知識」が必要です。

いま人間がAIに対してリードできるのは、個人的な体験と取材による知識。「夜討ち朝駆け」がイマドキとは思いませんが、どうやら本質は今も昔も不変のようです。

ChatGPTに「あなたに夜討ち朝駆けは可能か」と聞くと「実際に“足で稼ぐ”部分は人間の記者の役割です」との回答。AI側も認める通り、「個人的な体験」と「取材による知識」がすべての起点となるのです。「文章生成」と「体験生成」はまったく別物であると理解しましょう。

AI時代は「主観的な体験談」が必須

「自分語り」と聞くと、皆さん少しネガティブな印象を持つかもしれません。「自分は」「私は」という話ばかりする人には辟易してしまいますよね。それは「ナラティブ」で止まっているのが一因。主観的な語りを入り口とし、それを「ソーシャルなストーリー」に接続していくことで、文章や語りには共感性が生まれます。この構成は、AIに差をつけるひとつのテクニックです。

「ナラティブ」と「ソーシャル」、その登場の順番は問いません。ソーシャルな内容を補強するためのナラティブ、という方法も十分に価値を持つでしょう。大切なのは、どちらかだけにしないこと。これは、企画書やメールなどで使える考え方です。

著者

松井 謙介
株式会社ワン・パブリッシング取締役社長

雑誌『GetNavi』編集部や絵本編集部での現場編集を経て、2010年GetNavi編集長に就任。最大部数記録、電子書籍ユーザー数月刊誌ナンバーワンなどを達成。現在はメディア運営のマネジメントをしながら、コンテンツの多角的な活用を実践中。自社のメディアのみならず、企業のメディア運営や広告のコピーライティングなども手掛ける。

書誌情報

生成AI時代にこそ学びたい 自分で文章を書く技術

書籍:1,980円
電子版:1,980円
B6変:208ページ
ISBN:978-4-8399-90275
発売日:2025年09月19日

■概要

生成AIの進化により、議事録やレポート、マニュアルといった事務的な文章は効率的に自動化できるようになりました。しかしビジネスの現場では、それだけでは不十分。企画書や提案書、人材募集文、オウンドメディアの記事など──人の感情を動かし、行動へとつなげる文章には、書き手自身の思考や意見、そして「相手にどう動いてほしいか」という意図が不可欠です。

最新のAIは流麗な文章を生み出し、表現力も増しています。しかし、「誰に向けて、何を伝えるのか」という視点は、人間にしか持ち得ません。読み手を意識し、関係性を踏まえて言葉を選ぶことこそが、成果を生む文章の鍵なのです。

本書では、生成AI時代にあっても欠かすことのできない「自分で書く力」を、実践的かつ最新のテクニックとともに解説。あなたの仕事に直結する「伝わる文章術」をお届けします。

■目次

はじめに

第1章 文章を書き始める前にやるべきこと

1-1 文章の「価値」を見直しておく
1-2 準備段階で、文章の90%は完成させよ
1-3 「マクロからミクロの視点」を意識する
1-4 「結論から書けぃ!」は絶対的ルール?
1-5 書く前に「統一表記」を作ろう
1-6 「だ・である」「です・ます」を統一せよ
コラム 「普通に」って一体どの程度?

第2章 文章執筆の基本ルール

2-1 文章は「短く」、「能動態」で書こう
2-2 読み手の時間を奪う「冗長表現」を排除せよ!
2-3 カタカナ語はバランスを模索しよう
2-4 漢字と平仮名は「3:7」を目指せ!
2-5 「話し言葉」と「書き言葉」を使い分けよう
2-6 「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の秘密
コラム 「言葉の繰り返し」の新潮流とは?

第3章 文章が美しくなる7つのポイント

3-1 「読点」は感覚で打つべからず
3-2 「修飾」の正しい扱いを守る
3-3 デリケートな「並列」の扱いに注意しよう
3-4 げに恐ろしきは「主語と述語の呼応」
3-5 「は」と「が」の使い分けを知る
3-6 生成AI時代は「接続詞」の活用をマスターせよ
3-7 時代とともに変化する「副詞の呼応」
コラム 疑問文はこの上ない「断定」になる

第4章 文章の神は細部に宿る

4-1 類似表現は「ニュアンスの僅差」を把握すべし
4-2 誤解しやすい日本語表現を把握せよ
4-3 「比喩」はいまどきの若者言葉に学べ
4-4 日本語は「オノマトペ」を攻略せよ
4-5 雑誌編集者流の文章校正を学ぼう
コラム 意外と身近にある「リスクのある言葉」

おわりに

  • URLをコピーしました!
目次