CMSはなぜ「約1割」しか運用されないのか? 属人化を防ぎ、更新を止めない運用体制のつくり方

どれほど優れたCMSを導入しても、運用が軌道に乗らず、「いつ更新された?」と思わずにはいられない––––そんな“止まったまま”の企業サイトは少なくありません。本記事では、WebサイトにCMSを導入しながら更新が滞ってしまう典型的なパターンをひもときつつ、その状況を防ぐために求められるCMSの要件や運用体制の考え方を整理していきます。

取材したのは、岐阜県に本社を置き、地方の中小企業サイトを数多く手がける株式会社リーピー。代表取締役の川口聡さんに、同社が長年の実践の中で培ってきたCMS運用の「本質」について話をうかがいました。

目次

CMSの更新が止まる最大の要因は、社内判断が進まないから!

──WebサイトにCMSを導入した案件で、「更新が続かない」という悩みは、Web業界やCMS界隈では“あるある”の話ですよね。要因としては、「担当者が1人だけ」「操作できる人が限られている」といった属人化の問題をよく耳にします。この点について、川口さんはどうお考えですか?

川口聡さん(以下、川口 まず大前提として、Webサイトを「つくりたい」のか、「運用したい」のかで、話は大きく分かれます。完成させること自体が目的であれば、できた時点で満足してしまうので、更新の可能性は限りなくゼロに近い。一方で問題なのは、後者の「運用が目的」のはずなのに、実際には運用されていないケースが非常に多いことです。

株式会社リーピーの創業者であり、代表取締役を務める川口聡さん

──運用されなくなる、一番の原因は何でしょうか?

川口 自社サイトの更新が滞っている方々には、声を大にしてお伝えしたいことがひとつあります。それは、「100点を目指していませんか?」ということです。

運用する側には「60点くらいの感覚でも、現場の承認でどんどん更新していく」くらいのスピード感を持ってほしい。もちろん「60点でいい加減にやっていい」という意味ではありません。「完璧主義で進めすぎないでほしい」ということです。

私たちは、CMSを導入した企業のその後も必ず追跡していますが、(CMS導入後に)自社体制だけで継続的に更新できている企業は、実は約1割しかないというデータがあります。

──10%ですか……。想像以上に低い数字ですね。

川口 しかもこれは、「運用が目的」だったクライアントに限った、かなりリアルな数字です。どれだけ更新しやすいCMSを導入できたとしても、結局は運用されない。

理由はシンプルで、本業が優先されるからです。Webサイトの更新に十分手が回る体制を持てるのは、社内にマーケティングチームがあり、情報システム部にエンジニアが常駐している、といったごく一部の企業に限られます。

──「どのCMSを選ぶのか」以前の問題、ということですか?

川口 はい。多くの企業で、Web担当者は本業との兼務です。人材会社、建設会社、不動産会社、旅館やホテル、メーカーなど、特に中小企業では、Web担当を専任で置ける組織のほうがむしろ少数派です。

──中小企業を取り巻くリアルですね……。

川口 社内体制で運用が回らなくなる典型例として、情報の鮮度よりも「表現の正しさ」、つまり“100点”を優先してしまう企業が本当に多いんです。

「この状態で公開していいのか」と現場で逡巡し、ようやく原稿が上がってきても、今度は上長が判断できない。結局、経営層まで巻き込んで承認が滞ってしまう。その間に本業が忙しくなれば、当然そちらが優先されますよね。すると、兼務している運用業務は真っ先にタスクから外れ、結果として更新されなくなってしまうわけです。

兼任のCMS担当者の本音。「更新業務」は、あくまで本業の“ついで”になりがち

“操作方法を教えて終わり”になっていない? CMSを導入した制作会社の課題

──そうなると、導入を支援する制作側(開発側)に対して、「もっと助けてほしい」と感じているクライアントも多いのではないでしょうか。

川口 サイトの目的が「完成」に置かれていると、制作側も「サイトが完成したら納品」という意識になりがちで、運用による成果まで見据えた設計にならない可能性が高くなります。

例えば、サイトが完成したタイミングで、クライアントの担当者向けにCMSの操作方法を教える研修は、どの制作会社さんも比較的きちんとやっていると思います。

──企業側は、CMSの使い方までは教わるものの……。

川口 その先の運用は、基本的に企業任せになります。そこで、冒頭の話に戻るわけです。コンテンツを育てながら、サイトの中身を継続的に運用できているのは、あくまで1割程度。残りの9割は、せいぜい単発でコンテンツ追加を依頼したり、セキュリティ対策のために保守契約を外注したりするくらい、というケースがほとんどです。

──企業側の本音としては、仮に「運用したい」という意識があっても、実際には何から手をつけていいのかわからない、という状況もありそうですね。

川口 おっしゃる通りです。だからこそ、初期運用の「伴走」が現場の一番のニーズなんです。伴走者がいないままスタートするので、どうしても初速でつまずいてしまう。「何を」「どの順番で」「どの指標を見ながら」コンテンツをつくっていくのか。そうしたネクストステップの助言がない限り、運用を軌道に乗せるのは正直かなり厳しい。結果として、たまたま適性のある担当者の頑張りに依存した、不安定な運用になってしまいます。

──制作会社には、「つくって終わり」ではない関わり方が求められますね。

川口 私たちは、CMSを導入した企業––––つまりサイト制作を担ったWeb制作会社こそ、もっと運用支援まで踏み込むべきだと考えています。運用支援は、おそらくWeb業界の中で、いちばん人手もノウハウも不足している領域ではないでしょうか。

自社だけで更新体制を整えるのは難しい。外部の運用支援があると、更新業務は軌道に乗りやすい

更新業務の鍵は、本業に組み込めるかどうか!

──ここまでの話を聞いて、なかには「手間やコストが余計にかかるなら、サイトが完成したら終わりでいいよ」という弱音も聞こえてきそうです。

川口 Webサイトというのは、インターネット上に「会社の顔」を載せている状態なんですよね。更新が滞るということは、「その会社は、対外的に古い情報しか発信していない」ことを意味します。

現場でよくあるのは、新商品や新サービスをローンチした直後、営業資料にはきちんと最新情報が反映されているのに、Webサイトだけは古い情報のまま、というケースです。

──手軽に修正できるはずのWebサイトが、結果的にいちばん古いままになっている……。

川口 要は、Webサイトの更新作業が本業のフローに組み込まれていないから、後回しになるわけです。営業資料を最新化するなら、紙やデータの資料を改訂するだけでなく、同時にサイトも更新する。そこまで含めて「営業資料の刷新」という業務が完了した、と定義しておく必要があります。

──本業に組み込めば、更新業務にも自然と“やる理由”が生まれますね。そうでなければ、いつまでも優先度の低い兼務タスクのままになってしまう。

川口 運用を円滑に回すためには、必ず「判断の単純化」を設計してください。更新内容を、「判断が必要なもの」と「判断が不要なもの」に分ける。現場判断でどんどん公開していい後者の領域を増やして、更新が滞らない導線をつくることが重要です。

さらに、よくある更新項目については、専用のUIを用意できるとベターですね。例えば、文字を入れるだけで体裁が整う、「考えなくて済むUI」を備える、といったイメージです。

──現場判断で回せるコンテンツを増やして、60点くらいの感覚でためらわずに公開できる運用の仕組みをつくる、ということですね。

川口 そもそも「100点を目指してしまう」ことの背景には、更新業務が単なる入力作業ではなく、「マーケティング」と「責任」を伴う重要な業務だ、という認識があるからでもあります。公開のための企画やネタの設定、訴求設計、SEO、導線設計、計測、改善まで考えないといけない。その前提に立ったうえでサイトを更新し、公開後の状態を育てていく必要がある、ということです。

「Webページの更新」を、本業に必要な業務として組み込めるか?

限られた担当者だけで回さない?! 属人化を防ぐ方法

──「更新が止まりがち」「運用が滞る」という問題は、やはり根が深いですね。

川口 社内の運用体制づくりで意識してほしいのは、人ではなく「役割」に権限をひもづけることです。例えば「『お知らせ』を更新するのはAさん」という決め方をしない。「お知らせを更新する」というのは、どれくらいの頻度で、どんなタイミングで、どの程度のボリュームの情報を出す役割なのか、といった部分まで定義しましょう。

つまり、本業のどの業務プロセスに組み込まれている作業なのかが明確になれば、更新しないといけない状況が自然と生まれます。

──結果として「Aさんの担当になることが多い」という状態になるだけであって。

川口 そうです。そもそも、人は退職や異動がつきものです。人ありきの体制にしてしまうと、その人がいなくなった瞬間に、運用が途端に回らなくなってしまいます。

──ほかにも、運用体制をつくるうえで配慮しておきたいポイントはありますか?

川口 もうひとつ強調しておきたいのが、承認フローを「二階建て」に分けておくことです。

例えば、プレスリリースやIR情報、自社の方針に関わるコンテンツは「重要」扱いにして、経営層の承認を必須にする。一方で、ブログ的な日常の更新や事例紹介、軽微な修正対応は「日常」扱いにして、現場承認だけで公開できるようにする。そうやって、更新が滞らない仕組みをあらかじめ設計しておくことが大切です。

承認ルートは、情報の重要度に応じて「二階建て」で運用するのが現実的

自社サイトは企業の「顔」。運用が止まらない体制づくりが大事!

──ここまでのお話を整理すると、継続的に運用し続ける、いわば「止まらない運用」を可能にする体制づくりが重要、ということになりますね。

川口 まずは、自社の体制だけで「本当にどこまでできるのか」「どこが限界なのか」を正直に確認するところから始めてほしいですね。理想を言えば、社内に適任者をきちんと配置することです。「若くてITに強そうだから」という理由で何となく任せるのではなく、ものづくりが好きで、運用に向いている人をアサインすることが大切だと思います。

──CMSの選び方という観点でも、アドバイスをいただけますか。

川口 社内の状況に合わせて、特にコンテンツを更新する部分が「迷わず使える」ものを選びたいですね。例えば社内にエンジニアがいないのであれば、プログラミング前提のUIは避けるべきです。「ちょっとだけソースコードをいじる必要がある」といった運用は、まず長続きしません。

──やはり、自社体制をどこまで現実的に整備できるか、という話になりますね。

川口 継続的な運用を無理なく進めるなら、社内メンバーに外部パートナーを組み込む、という選択肢も現実的だと思います。ここまで運用体制の話をしてきたのは、やはり自社サイトが「会社の顔」だからです。インターネット上に会社の顔を出している以上、その状態をきちんと手入れされた状態––––つまり適切に更新され続けている状態に保つのは、当然のことだと思っています。

──それが、CMSを導入した意義にもつながる、と。

川口 はい。Webサイトの完成をゴールにするのではなく、コンテンツをつくって公開し、反応を見て改善する、という一連のサイクルをワンセットで回していく体制を築いてほしいですね。社内リソースだけで難しいのであれば、私たちもアクセス数の増加や反響獲得に向けた運用支援を行っていますし、外部パートナーの力をうまく取り入れるという選択肢も含めて考えてほしいと思います。

──なるほど。CMSを導入した企業にも、企業サイトにCMSを実装した制作会社にも、まだまだやれることは多そうですね。本日はありがとうございました。

取材・文:遠藤義浩

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