「思い描いたことは、ほぼ実現できる」ium・小玉千陽が語る、Wix Studioで広がるWebサイト制作と提案

ブランディングやUI/UXを強みとするデザインスタジオ「ium」代表・小玉千陽さん。手掛けるWebサイトは、こだわり抜かれたUIやレイアウトが特徴です。また、AIなどに長けた専門家が集うクリエイティブファーム「THE GUILD」のメンバーでもあり、最新技術に関する知見も豊富です。

そんな小玉さんに、ノーコードツールWixのプロ向け制作ソリューション「Wix Studio」を体験してもらいました。デザインの自由度や、実際の案件における導入メリットをどう捉えたのでしょうか。

Wix.com Japan株式会社のデザイナー・楊令傑(ヨウ・レイケツ)さん、フロントエンドエンジニア・山下圭祐さんとともに、そのリアルを聞きました。

目次

思い通りのデザインを実現できるWix Studio

–––––小玉さんはこれまでに、Wix Studioをはじめとするノーコードツールを使ったことはありますか。

小玉千陽(以下、小玉) ノーコードツールは、「予算を抑えてWebサイトをつくりたい」というクライアントに対して提案したり、実際の案件で使ったりしています。

Wix Studioについては、2024年に参加したAI活用のイベントで「AI機能でレスポンシブが一瞬でつくれる」と紹介されていて、とても便利だと感じて触ったことがありました。

ただ、細かい機能を把握するほど使い込んでいたわけではなくて。当時は今ほどAI活用も進んでいなかったので、案件で使うには至っていませんでした。

株式会社ium 代表取締役社長/THE GUILD ボードメンバー/アートディレクター、デザイナーの小玉千陽さん。東京工業大学工学部卒。卒業後、深津貴之氏率いるArt&Mobileなどを経てium inc.を設立。幅広い領域でコンサルティングからデザインまでを行う。

–––––では、今回改めてWix Studioを使ってみて、印象はいかがでしたか?

小玉  以前は、ノーコードツールはプラットフォームの作法に合わせてつくらなければならず、思い通りにつくり込めない印象があったんです。ただ、今回使ってみたところ、そのイメージが大きく変わって。率直に「自分が思い描いたことは、ほぼ実現できる」と感じました。

特に、事前に学習しなくても直感的に操作できる点と、CMSの実装が簡単にできる点がよかったです。静的なページもあとからまとめてCMSに変換できますし、しっかり構造化されているので、データとデザインを紐づけるのもスムーズで。そこはかなり感動しました。

–––––小玉さんは、iumのコーポレートサイトのように凝ったUIのWebサイトをつくられることが多いですが、Wix Studioでもそうした自由度の高いデザインは実現できそうですか?

小玉  十分できると思います。

楊令傑(以下、楊) Wix Studioを使うことで、デザイナーがエンジニアに依存せずに実装できる部分が増えると思うのですが、その点はどう感じましたか?

Wix.com Japan株式会社デザイナーの楊 令傑(Yang Lingjie)さん

小玉  私はもともとデザインも実装も自分で行っていたので、「構造や情報設計を理解したうえで、見た目の美しさを追求する」ということを大切にしています。その点、Wix Studioは、触っているうちにそうした構造や設計も理解できるようになると思いました。「デザイナーの実装理解を深める」という学習的な効果もあると感じたので、人材育成という観点でも有用ではないでしょうか。

–––––Wix Studioはフォントが充実していて、モリサワフォントやMonotypeなどにも対応しています。そうした書体の豊富さについては、いかがでしょうか?

小玉  これまでは「この書体が最適です」と提案しても、書体の契約料がネックになってクライアントの許可が下りないことがありました。ただ、Wix Studioでは書体の料金がすでに含まれているので、予算を気にせず最適な書体を提案できる。その点は、デザイナーとしてすごく魅力的です。

小玉さんが代表取締役社長を務めるiumの公式Webサイト

「Wix Studio × AI」で表現力が無限大に

–––––小玉さんは、AI活用やコンサルティングなどを手掛けるTHE GUILDのメンバーでもあり、日頃からAIを使われていると思います。Webサイト制作でも、AIを活用されていますか?

小玉  デザインの手前にあるリサーチやアイデア整理、コピー作成などが主な使いどころですが、最近はClaude Codeで「こういうツールがあったらいいな」と思うものを素早く制作しています。例えばリソグラフ風に加工する画像ジェネレーターをつくり、素材として活用できないかを模索したりしています。

Wix Studioでも「デフォルトの機能では実現できない部分を、Claude Codeで補完する」といった使い方にチャレンジしてみました。

–––––Wix Studioはコーディングも可能なローコードツールなので、AIと組み合わせることで、さらに表現の幅が広がりそうですね。

小玉  可能性は本当に無限大だと思います。「実現できるかわからないけれど試したい」というチャレンジングなレイアウトも、エンジニアの手を借りずに試せるので、試行錯誤の幅が大きく広がりました。プロトタイプを素早くつくれる点も便利ですね。

「Wix StudioとAIツールを組み合わせることで、表現の可能性は大きく広がる」と小玉さんは語ります

–––––クライアントへの提案でも、実装したものを見せることでコミュニケーションがスムーズになりそうです。

小玉  ワイヤーフレームから完成形をイメージしてもらうよりも、実装されたプロトタイプを見ていただくほうが伝わりやすいと思います。また「プロトタイプをAIで改修しながら、ディスカッションを重ねていく」といった使い方も有効だと感じています。

山下圭祐(以下、山下) 小玉さんは、「自分でつくる部分」と「AIに任せる部分」の棲み分けをどのように考えていますか?

Wix.com Japan株式会社 フロントエンドデベロッパーの山下圭佑さん

小玉  「制作の民主化」という観点では非常によいと思いますが、個人的には現時点でWebサイトのベースをAIに任せることには少し抵抗があります。どうしても汎用的なアウトプットになりやすいですし、UIは自分の好きな領域でもあるので、新しい表現や見たことのないレイアウトは、自分で試行錯誤しながら探っていきたいんです。

むしろ、他の工程でAIを活用して効率を高めることで、UIを考える時間を確保できる。その点に大きなメリットを感じています。

  AIの進化に伴って、デザイナーに求められるスキルはどのように変わっていくでしょうか?

小玉  AIにはつくれない“体験”をどう設計するかが、より重要になっていくと思います。「心地いい」「緊張感がある」といった感覚は、人間にしかわからない領域ですから。

また、デザイナーやエンジニアといった領域の垣根も低くなっていくはずです。複数のスキルを横断的に身につけながら、AIに対しても解像度の高いディレクションができる人材が求められていくのではないでしょうか。

AIの進化が進む中、小玉さんは「体験を設計するのは人間の領域」と指摘します

クライアントへの提案の可能性を拡張する

–––––クライアント案件でWix Studioを活用する場合、どのような場面で有用だと思いますか?

小玉  「Web制作自体のコストを抑えて、他の部分に予算を回したい」というケースに向いていると思います。その分、クライアントの要望をより実現しやすくなったり、課題解決につながったりするので。例えば、写真撮影やコピーライティングに予算を振り、コンテンツづくりにフォーカスしたほうが成果につながるケースもあるんです。

–––––企業サイトなどでは、デザインだけでなくコピーの影響も大きそうですね。

小玉  とても大きいですね。言葉や写真といったコンテンツによる体験を通じて、ユーザーがどう感じるかが重要です。Webサイトは、ただ存在すればよいわけではありません。そうした体験を提供してこそ、価値を発揮するものだと私は考えています。

–––––Wix Studioは更新のしやすさも強みですが、運用の観点ではいかがですか?

小玉  実際「納品後に内製化したい」というクライアントはかなり増えているので、そうしたニーズにも合っていると思います。特に、社内にデザイナーがいて、更新だけでなくある程度自由に触りたいという場合には提案しやすいですね。

例えば「About」のような静的ページでも、CMS化することでデザインを壊すリスクを抑えながら、文言修正や写真の差し替えを自由に行えるようにできます。従来のCMSだと、そのためだけに機能を実装するとコストが見合わず、提案しづらいケースもありました。

Wix Studioでは、CMS機能も手軽に組み込めるため、運用まで見据えたサイト設計が可能です

小玉  また、LPのようにPDCAを回しながら改善を重ねたり、A/Bテストを行ったりするケースにも向いていると思います。キャンペーンサイトや広告用の派生サイトも、メインサイトのデザイン資産を活かしてスムーズに展開できます。

–––––限られた予算の中で、よりクライアントのビジネスに踏み込んだ提案ができそうですね。

小玉  はい。あとEC機能を追加できる点も、提案の幅を広げてくれると思います。ブランドサイト制作後に、追加でECサイトの相談をいただくことも多いのですが、これまでは別サービスを使う必要があり、見積もりが合わずに実現しないこともありました。

その点、Wix Studioであれば既存のWebサイトに追加料金なしでEC機能を組み込めるため、コストを抑えた提案が可能になります。大規模なECというより、既存サイトに機能を追加したいというニーズにフィットしやすく、喜ばれると感じています。

「提案の幅が広がる」と小玉さんも指摘する、Wix StudioのEC機能

–––––CMSやEC機能を手軽に追加できることで、予算配分の選択肢が広がり、提案の幅も広がるわけですね。

小玉  そうですね。その分、私たちにはより適切な予算配分や提案を設計するスキルが求められると思います。

これまで、ノーコードツールやAIは「効率化」の観点で語られることが多かったと思います。ただ、効率化によって生まれた時間や余剰の予算を使い、本質的な部分を深めたり、新しいチャレンジに取り組める点こそが、デザイナーにとっての大きな価値ではないでしょうか。

取材・文:平田順子、写真:山田秀隆、企画協力:Wix.com Japan株式会社

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