
デジタルハリウッドがAI時代に向けた新クラスを開講 Garden Eightのクリエイティブがその思想をWeb体験へと昇華

Webや映像、3DCGをはじめ、さまざまなクリエイティブの専門教育を行うデジタルハリウッドが、2026年春にクリエイティブスキル横断型選抜クラス「HONKA RE:FRAME!-世界を問い直せるか–」を新設しました。これは、AI時代に対応する、真のクリエイティブ力を持つクリエイターを輩出するためのクラスです。
Webサイトでは、3DCGで表現された人物がオーブを手に歩き出す印象的な演出が施されています。この演出からは、これから変化が起きるようなワクワク感や期待感を感じさせられます。制作は、先進的でクリエイティブなデザインを得意とするGarden Eightが手がけました。
一体どのようなことを学べるクラスで、なぜこうした表現のWebサイトにしたのでしょうか。デジタルハリウッドの吉井朋さん、Garden Eightの野間寛貴さん、利倉健太さんに話をうかがいました。
目次
AI時代のクリエイターに求められるスキル
–––––デジタルハリウッドで新設された「HONKA RE:FRAME!-世界を問い直せるか-(以下、HONKA RE:FRAME!)」は、どのようなクラスですか。
吉井朋(以下、吉井) デジタルハリウッドでは大学なども運営していますが、HONKA RE:FRAME!は社会人向けの専門スクールの中で、本科と呼ばれる1年制のコースに新設したものです。
本科にはCGやUI/UXデザイン、XRなどのコースがあり、ツールの使い方や実践方法を学び、プロの現場で活躍する人材を育成します。しかし、AI時代の昨今では、制作物をつくるなどただアウトプットができるだけでは通用しなくなってきました。そうした時代にあっても、世界で活躍する人材を育成するためのクラスがHONKA RE:FRAME!です。

吉井 朋さん
デジタルハリウッド株式会社
スクール事業部 講座開発・PRマーケティング担当
社会人向け専門スクールのデジタルハリウッドで、最前線のスキルと時代に合わせた学びの環境を提供し、多くのクリエイティブ人材を育成・輩出している。
–––––AI時代になったことで、クリエイターに求められるものはどのように変わっていくと考えますか。
吉井 人間でないとできない「アート的思考」をより強化する必要があるのではないかと考えています。たとえば、AIで生成したものに対して、プロセスやそこに至る思い、コンテキストなどを、自身の言葉でしっかり話せるスキルといったものです。
また、本科はCGやデザインなどコースごとに専門的なスキルを習得しますが、AI時代の今は複合的なスキルが求められます。そのため、HONKA RE:FRAME!は、それまで別の分野を専攻していたメンバーと一緒に学習していきます。
–––––他の分野を専攻した受講生と一緒に学ぶことでも、刺激や発見がありそうですね。
吉井 はい。違う領域を学んだメンバーが対話することで、新しい知見が生まれたり、表現の幅が広がったりしていくのではないかと思っています。デジタルハリウッドでは基本的にデジタル領域の技術を習得しますが、デジタルだけではない実際の体験から生まれる価値観や創造性も養う必要があると考え、対面での授業にこだわりました。東京以外でのフィールドワークなども実施予定です。
–––––選抜クラスに入る特待生は、どのようにして選ばれるのですか。
吉井 毎年本科コースの4月生と10月生それぞれから10名程度を選抜します。本科への入学前選抜と入学後選抜があり、2026年度4月生の入学前選抜はプレゼンテーションとディスカッションをもとに選考しました。入学後選抜は、希望理由書と在学中に制作する課題、そしてデジタルハリウッドとneoAIで共同開発したクリエイティブ教育特化型AI「Ututor(ユーチューター)」が評価した優秀者などから選抜します。
–––––HONKA RE:FRAME!のWebサイトはGarden Eightさんが制作を手掛けましたが、どのような経緯で依頼されたのでしょうか。
吉井 実は野間さんにもお話していないことなのですが‥‥AIに「HONKA RE:FRAME!のイメージに合う、インタラクティブなWebサイトをつくってくれる会社はどこ?」と質問したところ、挙がってきた候補の一つがGarden Eightさんだったんです(笑)。
私も以前から存じ上げていて、依頼候補として頭の中にありました。AIと見解が一致したことで、「やっぱり、Garden Eightさんだよね!」と思い、ご依頼しました。

–––––依頼時点では、Webサイトについてどのような要望がありましたか。
野間寛貴(以下、野間) クラスの名前や実施概要、LPをつくることは決まっていましたが、まだ企画段階で、これから打ち出し方をどうするかも含めて進めていくという状況でした。「こういうものをつくってください」というよりは、「今走っているプロジェクトに並走してくれませんか」という始まり方でした。

野間 寛貴さん
Garden Eight
代表
Garden Eightの営業、企画を担当する。現在7名が在籍する同社は、デザインと開発を両方行えるデザイナーが所属していることが特徴。国内外に顧客があり、海外のデザインアワードでの受賞多数。
野間 企画段階から並走させていただけたことで、当社が武器としている品質をより追求しやすくなりました。そうした形でご依頼いただけたのは、とても嬉しかったですね。デザインを担当した利倉もつくるのが楽しくて仕方なかったようで、連日集中して制作していました。
–––––現場のクリエイターさんの声としておうかがいしたいのですが、利倉さんはAIにどのように向き合っていますか。
利倉健太(以下、利倉) AIは、アイデアの整理や言葉の検討、実装での壁打ちなどに活用しています。ただ、AIに答えを決めてもらうためではなく、自分の中にある曖昧な考えを投げると少し違う角度から答えが返ってくるので、それを見ながら考えを整理しています。
何を聞くかによって返ってくるものが大きく変わるので、AIを使う上で「問い」が重要だと感じています。また、返ってきたものをどう受け取るかにも、つくり手の判断が必要です。

利倉健太さん
Garden Eight
代表
Garden Eightに所属し、Webサイトのデザインおよび開発を手掛ける。
–––––HONKA RE:FRAME!のコンセプトとも通じるスタンスですね。
利倉 Webサイトのテーマと自身の親和性が高いことが、ある意味一番大変な点でした。強く共感できるからこそ熱量は出るのですが、制作中に少し主観に寄りすぎる瞬間がありまして。必要な距離感を失わないようクールダウンして、本当に伝えるべきものは何かを何度も見直しました。
クラスの思想をWebサイトに落とし込む
–––––Webサイト制作は、どのようなプロセスで進めていきましたか。
野間 まずは吉井さんと相談しながら、先にワイヤーフレームをつくって内容を決めました。最終的な掲載内容は、この段階からほとんど変わっていません。その後、どういう表現をするか考えることに多くの時間を費やしました。
–––––表現について、吉井さんからはどのような要望を出されたのですか。
吉井 「何かおもしろそう!」というのが伝わるようにしてくださいとお伝えしました。このクラスを受講したいという強い思いを持つ人に向けて、狭く深く刺さることを目指していました。
野間 吉井さんにいくつかキーワードを出していただいて、その中に「ワクワク」とか「未知」「魔法」「融合」といった言葉がありました。それらを参考に、デジタルハリウッドの本科生たちが「ここに入りたい!」と思うものは何かと考え、3DCG表現を提案しました。
見せ方は3つ考え、1つは「Web上の空間の中で人を動かす案」。2つ目は、「HONKA RE:FRAME!の名前をグラフィック化する案」、そして3つ目は「オブジェクトを動かす案」でした。最終的に、1つ目と3つ目を融合した、「人にオーブのオブジェクトを持たせる」方向に決まりました。
吉井 野間さんからオブジェクトの形がどんどん変わっていくというアイデアをいただいて、クリエイティブは無限で、何でもつくれて魔法のようだというのが表現されていると感じました。
–––––決定案は、吉井さんが選ばれたのですか?
野間 吉井さんと詰めた内容を伝えて、利倉に3つのアイデアの中でどれがよいか、それらは実現可能か相談して決めてもらいました。
利倉 このWebサイトは、AIが答えを出す時代に人間が「問い続けること」「つくり続けること」への挑戦を後押しするものであるべきだと考えました。「問い」は外から与えられるものではなく、自分の中で少しずつ輪郭を持っていくものです。そのため、見る人が自分自身と重ねられる人物をメインのモチーフにし、クリエイティブの無限の可能性をオーブのオブジェクトで表現するのが良いと思いました。
野間 この段階で利倉が手書きした動きのラフと、デザインを反映したワイヤーフレームを吉井さんにお見せしました。


吉井 人にフォーカスしているのが、HONKA RE:FRAME!のコンセプトにとても合っていると思いました。すぐに「これでお願いします!」とお返事しました。
3DCGとUIでつくる、惹きつける体験
–––––3DCGで表現した人物について、こだわった点はありますか。
野間 制作時には、吉井さんから「3DCGの人物をロボットらしく感じさせないようにしてほしい」というリクエストがありました。
利倉 ロボットのように見えてしまう要因の一つは、動きが均一すぎることだと思います。そのため、静止している場面でも完全には止まらず、呼吸や重心の揺れを感じるようなゆっくりした動きを入れました。また、歩行の際にも、足跡を残すことで有機性を感じられるようにしています。こうした人間らしい所作を取り入れることで、見る人が自分と重ねやすいのではないかと考えました。

利倉 この人物は、前半では立ち止まり、手元で揺らぐオーブを見つめます。これは、考え、問いと向き合い、そこから創造へ向かっている状態です。次に、オーブが消えて人物が歩き出すことで、問いが創造へとつながり、未来に向かって動いていきます。 また、足が地面に触れた瞬間に反射が生まれることで、身体が世界に作用している感覚を表現しました。
吉井 自分の足で未来を切り開いていくという印象を受け、歩き出していくところがとても好きなポイントでした。
–––––オーブのオブジェクトには、どのような意味を込めていますか。
利倉 問いや意味、そして創造へ向かう途中を表しています。無数の粒子でできていて、一瞬形を持ったように見えてもすぐに揺らぎ、また別の姿へと変化します。問いや意味は最初から明確な形があるものではなく、向き合い続ける中で少しずつ輪郭を持っていくものだと思い、こうした表現にしました。そして、ノイズが少しずつ落ち着き形が見えてくることで、問いが形になっていく過程を感じてもらいたいと考えました。
このオーブにはいくつかのパターンがあり、同じWebサイトを見ても人によって出会うものが少し違います。そこには「正解は1つではない」という気持ちを込めました。

–––––これらの3DCGはどのような方法で実装されましたか。
利倉 人物のモデルとアニメーションはBlenderで制作し、Web上で表示できる形にしてThree.jsで扱っています。スクロールに合わせてカメラ(視点)の位置や人物の見え方、背景の状態が変わるので、各セクションで可読性を担保しつつ3DCGも印象的に見えるバランスを細かく探りながら、同期させるところが大変でした。
–––––PC用のWebサイトでは、縦スクロールから横スクロールに変化するUIも印象的でした。
利倉 動きの軸を変えたのは、情報の役割やストーリーの段階が変わることを明確に伝えたかったからです。最初の「Intro」や「Concept」といったクラスの思想や世界観に入っていくセクションは、導入部なのでギミックが強すぎると少しうるさくなってしまうため、自然な縦スクロールで情報へとつなぎました。
このクラスの考え方や学びの構造などを紹介する「About」から「Purpose」「Curriculum」「Supervisor」のセクションにかけては、視野が横に広がっていく感覚を出したいと考え、横スクロールにしました。
そして、最後の「Entry」でもう一度縦スクロールに戻すことで、Webサイト全体の体験が収束し、クラスに応募する気持ちへと切り替わるように設計しました。

–––––このUIはどのように実装しているのですか。
利倉 通常の縦スクロールをベースにして、横スクロールの区間だけ縦方向のスクロール量を横方向の移動量に変換することで、画面上では横に進んでいるように見せています。横へ動かすだけであればそこまで難しくありませんが、今回は各セクションの切り替わりに合わせて3Dのカメラや人物、粒子の状態も変化するため、こちらもスクロール位置と3D表現のタイミングを合わせるのに時間がかかりました。
–––––このWebサイトを見る方が、どのような印象を持つことを期待していますか。
利倉 「面白そう」「手応えがありそう」といった印象を持ってもらえたら嬉しいです。
ただそれだけではなく、見た人の中になんらかの感覚の芽生えが起きたらいいなとも思っています。そのため、心に引っかかりを感じてもらえるよう、小さな錯視、UIの微細なグラス表現など、少し違和感を感じるような表現を積み重ねました。
野間 修了生が、「私はこのクラスを卒業したんだよ」と人にURLを添えて伝える際に、自信や誇りを持って見せられるWebサイトにしたいとも考えました。
–––––HONKA RE:FRAME!に入るクリエイターの方には、どのようなことを学び取ってほしいと考えていますか。
吉井 このクラスで学ぶことは、すぐに効果が見えるようなものではないかもしれません。しかし、5年後、10年後に「あの時勉強した、あの知識が今役立っている」と実感するような体験ができるのではないかと考えています。
ここから、世界で活躍し、業界を牽引するようなクリエイターを輩出したいと思っています。私たちも、そのために全力で寄り添い、伴走していきます。そこについてきてくれる、熱意の高い方々に入っていただけると嬉しいです。
取材・文:平田順子