
デザインを、より創造的かつ効率的に。 生成AIを用いたデザインプロセス
近年、テクノロジーの進展に伴い、生成AIはデザインの世界にも大きな影響を及ぼし始めています。AIを上手に活用することで、デザイナーの作業を効率化したり、全く新しい発想のデザインを生み出したりすることが期待されています。
そこで本稿では、まずデザインプロセスとはどのようなものか、デザイン思考の一般的なプロセスはどうなっているのかを説明します。デザイナーやクリエイターの方にとって、デザインプロセスとは日常的に関わる重要なテーマです。しかし、そのプロセス自体に明確な定義はなく、個人やプロジェクトによって異なる側面があることを知っておく必要があります。
次に、こうしたデザインプロセスに生成AIを取り入れることにより、従来のプロセスがどのように変化するのかを詳しくみていきます。
AIを活用することで得られる具体的なメリットと、デザイン思考の各段階でAIをどのように活用できるか、実際の利用方法を多数紹介します。また、アイデア創出から制作、検証に至るクリエイティブプロセスにおけるAI 活用も、事例とともに解説します。FigmaやCanvaなどの実際のデザインツールとAIとの連携も重要なポイントですので、可能な限り具体的に説明したいと思います。
加えて、デザインのプロセスそのものがAIによって民主化され、多くの人がデザインに参画できるようになる反面、単にAIに任せるばかりで人間の創造性が失われてしまうことへの懸念についても議論していきたいと考えています。
以上の内容を通じて、生成AIがデザインプロセスにもたらす新たな可能性を理解し、読者の皆様にAIを上手に活用する方法を学んでいただければ幸いです。これからはAI と人間が共創していく、新しいデザインプロセスの時代が始まろうとしています。本稿が、その扉を開く一助となれば嬉しく思います。
著者プロフィール
川合 俊輔(かわい しゅんすけ)
株式会社STYZ Chief Design Officer。海外を拠点とするデザイン会社を経験後、インクルーシブデザインスタジオ『CULUMU』を設立。多様なユーザー・生活者と共創するプロジェクトをさまざまな業界・企業と取り組む。また、芝浦工業大学でUXデザイン演習等の非常勤講師を務め、人間工学をベースにユーザー中心のプロセス、デザイン評価手法、UXデザインの研究や教育に携わる。

岡田 祐介(おかだ ゆうすけ)
芝浦工業大学デザイン工学部卒業後、単身渡米しNYにて複数のフォトグラファーに師事。帰国後は撮影スキルから派生した多様な領域で活動。UI/UXデザイナー、フォトグラファー、ビデオグラファーとしてクリエイティブ職に携わる。現在はCULUMUにて、生成AIを活用したサービスなど、プロダクトのUI/UXデザインを担当。

インクルーシブデザインスタジオ CULUMU
株式会社STYZが運営する「多様な人々・社会と共創する インクルーシブデザインスタジオ」。高齢者や障がい者、外国人など、これからの社会において多様な人々の声を取り入れられる(モノづくりの上流プロセスから巻き込む)ユーザー中心のアプローチをモノづくりの当たり前にすることを目指している。

Section1. デザインプロセスとは
デザインプロセスとは、デザイナーやクリエイターがある製品やサービスを生み出していくための一連の流れのことを指します。ウェブサイトやアプリのUIデザイン、広告やパッケージなどのグラフィックデザイン、インテリアデザインや建築デザインなど、対象は様々ですが、共通のステップがあります。
代表的なデザインプロセスとして、スタンフォード大学のd.school*1が提唱した「デザイン思考」が知られています。そのプロセスは、1. 共感化(ユーザー理解)、2. 定義化(問題定義、3.アイデア化(アイデア創出)、4.プロトタイプ化(試作と検証)、5.テスト(改善と実践)の5つの段階からなります。
*1…デザインスクール。スタンフォード大学内の学科横断プログラム

1.共感化(Empathize):ユーザーの視点に立ち、実際に課題状況を観察してデー
タを収集する。
2.定義化(Define):収集したデータをもとに、解決したい本質的な課題を明確に
定義する。
3.アイデア化(Ideate):課題定義に基づき、制約を設けずに自由な発想で多くの
アイデアを生み出す。
4.プロトタイプ化(Prototype):アイデアの中から有望なものを選び、簡易なプ
ロトタイプを作って検証する。
5.テスト(Test):プロトタイプを実際にユーザーに体験してもらい、フィードバッ
クを元に改善を繰り返す。
このプロセスの鍵は、最初にユーザーの文脈に立って課題を再定義し、次にブレインストーミングなどで自由な発想を生み出した後、早期にプロトタイプを作って試行錯誤しながら解決策を導き出す、という流れにあります。
この一連のプロセスを回すことで、理論よりも実際のユーザー体験(UX)に基づく革新的なソリューションを生み出すことを目指しています。デザイナーの柔軟な発想力とユーザーへの理解が生かされるアプローチといえます。
こうしたデザインプロセスに、生成AIを適切に取り入れることで、プロセス全体をより創造的でスピーディーなものへと進化させられる可能性が広がっています。次節からは、具体的にどのような場面でAI を活用できるのかを順を追って解説していきます。
Section2. 生成AI を活用する新しいデザインプロセス
従来のデザインプロセスに対し、生成AIを取り入れることで新しい可能性が開けてきます。John Maeda氏のデザインテックレポート2023によると、次の図のようにAI を活用することで本来時間がかかるステップを一気に効率化できるという仮説が立てられています。

短時間でテスト、幅広くソリューション作成、課題の抽出などといった繰り返しになるプロセスを短縮できることでよりスピーディーで、かつ精度の高い検証ができます。それにより、質の高いアウトプットすることが可能だと考えられています。
このように、生成AI の登場によって、デザインプロセスそのものが変容しつつあります。AIを活用することによる新しいデザインプロセスの可能性について解説したいと思います。
例えば、共感の段階では、SNS上のビッグデータをAIが分析することで、人間のアナリストでは得られない新たな気づきが発見できるようになります。発想の段階では、自然言語でアイデアを伝えるだけで、AIがそれに関連する画像を生成してくれます。プロトタイピングでも、テキストの説明を元に実際のUIデザインをAI が高速に形にしてくれます。
このように、AIはデザインプロセスを加速し、デザイナーの創造性を拡張すると言えるでしょう。
ただし、人間が全面的に判断をAIに委ねるのではなく、あくまでもAIはデザイナーを支援するツールであることに留意が必要です。人間の感性とAIの論理的思考とを上手に組み合わせることが、革新的なデザインの創造につながるのです。
この新しいアプローチがデザイン業界にどのようなインパクトを与えるのか、考察していきたいと思います。
共感
- SNS やブログのテキストデータをAI で分析し、消費者の潜在的ニーズを抽出
- カスタマーサポートのログをAI で分析し、ユーザーのパターンやペインポイント
を発見 - AI でペルソナを自動生成し、想定ユーザー像を素早く描ける
定性的なユーザーインタビューやVOC(ボイスオブカスタマー)データを分析するツールが多数リリースされています。例えば、Centouはリサーチから得られた事実やインサイトを管理し、あらゆる職種でリサーチ結果を活用するための、インサイトマネジメントサービスを提供しています。

定義
- 共感で得た情報をAI がクラスタリングし、共通のユーザーニーズを抽出
- 根本原因は何かを特定するため、問題の本質に迫る質問をAI に生成させる
共感で得たユーザーの情報をクラスタリングする際には、例えば、ポストイットなどで情報を視覚化して、さらにそれを自動で分類・整理できるようなツールが便利です。例えば、ホワイトボードツールFigJam AIではポストイットを自動で整理し、分析できます。手動で並べ替えたりグループ分けをする作業を減らし効率化できるため、その分、アイデアの創出などにより時間を割くことができるようになります。
生成AIの登場により、デザインプロセスは大きく変わり始めています。生成AI は、デザイナーが自然言語で指示を出すだけで、関連する画像やデザイン案を自動生成することが可能です。これにより、アイデアの創出からプロトタイピングまでの時間が大幅に短縮され、デザイナーはより創造的な作業に集中することができます。

発想
- 自然言語で解決策を入力すると、AI が関連する画像やアイデアを生成
- 競合他社の事例を分析し、現状の固定観念を乗り越える発想を得られる
生成AIを活用することで、アイデアをブレインストーミングしたり、議論を活性化させたり、 デザインをコードに落とし込むこともできます。
発想の段階では、自然言語で解決策を入力すると、AIが関連する画像やアイデアを生成します。競合他社の事例を分析し、現状の固定観念を乗り越える発想を得ることも可能です。例えば、FigJam AIのウィジェットJambotを使えば、AIを使って視覚的なマインドマップを作成したり、複数テーマでブレーンストーミングを行ったり、チームメイトとChatGPTが一緒になってホワイトボード内でアイデアを出し合ったりすることができます。

/出典:https://www.figma.com/ community/widget/1274481464484630971)
プロトタイピング
- テキストの説明からUI デザインのプロトタイプをAI が自動生成
- 複数の要素を組み合わせることで、複数のプロトタイプを作成
今後、デザインプロセスはさらに進化し、マルチモーダルなAIが様々なクリエイターと相互に関係し合い、クリエイティブを共創する世界が予想されます。マルチモーダルAIとは、テキスト、画像、音声、動画など複数のデータ種別を同時に処理できるAIのことを指します。この技術は、デザインのあらゆる側面でのコラボレーションを促進し、クリエイティブなプロセスをよりシームレスに統合する可能性を秘めています。
例えば、デザイナーがテキストでコンセプトを説明すると、AIがそれに基づいて画像や動画を生成し、他のクリエイターがその素材を元にさらに発展させることができます。音楽やナレーションなどもAIが自動生成することで、より包括的なクリエイティブプロジェクトが実現します。これにより、デザイナー、アーティスト、エンジニアなどが一体となって、より豊かで多様な作品を生み出すことができるでしょう。
例えばFigma AIではテキストの説明からUIデザインのプロトタイプをAIが自動生成します。複数の要素を組み合わせることで、複数のグラフィックを作成することも可能です。

また、動画生成のソフトを利用することで、デザイナーは簡単に高品質な動画プロトタイプを作成し、アイデアの検証を迅速に行うことができます。テキストエディタのような簡単な操作で、プロフェッショナルな動画編集が可能であり、時間とコストの大幅な削減が期待できます。これにより、デザイナーはクリエイティブな作業により多くの時間を費やすことができるでしょう。

検証
- AI が生成した仮想ユーザーとインタラクションし、プロトタイプを検証
- 質問に対する回答や操作ログで、UX をシミュレーション
最後に、テスト・検証の段階では、AIが生成した仮想ユーザーとインタラクションし、プロトタイプを検証します。また生成AIを活用して効率的にプロトタイプを作成することで、実際のユーザーによる検証時にも製品やサービスの価値を適切に表現し、多くの仮説を検証できます。その結果、より本質的な検証に時間を割くことができるでしょう。

(想定するターゲットや解決したい課題を入力)

このように、生成AIはデザインプロセスのほぼ全ての段階で、デザイナーの作業を効率化し、課題発見から課題解決までを加速します。

一方で、AIには判断力の限界があるため、生成された結果の精査はデザイナーが行う必要があります。過度な依存は禁物で、AIを活用するタイミングを計る洞察力がデザイナーには求められます。しかし、適切に取り入れることができれば、これまでにない斬新な発想の源泉となり、デザインプロセスのパラダイムシフトを引き起こす可能性があります。既成概念にとらわれない新時代のデザインのあり方が求められています。
生成AIがブランドやアートディレクションを学習することは、クリエイティブなプロセスの質を向上させるために不可欠です。具体的には、以下のような情報を学習対象とすることが考えられます:
● ブランドガイドライン:ブランドの色、フォント、ロゴの使用方法などを学習し、一貫性のあるデザインを自動で生成します。
● アートディレクション:過去のデザインプロジェクトから、成功したビジュアルスタイルやトーンを学習し、新しいプロジェクトに適用します。
● 顧客の行動データ:顧客の閲覧履歴や購入履歴を分析し、パーソナライズされたデザインを提供します。
今後、生成AI はさらに進化し、以下のような未来が期待されます:
● 企業特化型モデルの成長:各企業が自社のデータを基に特化型生成AI モデルを育成し、より精密で効果的なコンテンツを作成します。
● データのキュレーションとラベリング:大量のデータを効率的にキュレーションし、ラベリングすることで、生成AI の学習精度を向上させます。
● コンテンツの中央管理:コンテンツのライセンス管理やバージョン管理を一元化し、効率的な運用を実現します。

Section3. クリエイティブプロセスの具体的な活用方法
デザインテックレポート2023によると、クリエイティブプロセスには、多様な角度から影響を与えることができることが示されています。また、AIを活用することで、自分が本当にやりたいことにフォーカスすることができ、やりたくないことをAIに任せることができるという可能性があります。AIがクリエイターたちの新しいツールとしてクリエイティブプロセスに組み込まれ、短期間でより深い制作過程を実現できると考えられています。

生成AIは、従来のクリエイティブ領域においても大きな可能性を秘めていることは間違いありません。ここではAIツールを用いた「北欧のインテリアを扱うECサイト」の作成を例に、クリエイティブプロセスにおけるAI の具体的な活用法を5つの段階に分けて詳しく解説いたしましょう。
1 想像:AIとの壁打ちでコンセプトと要件を決める
アイデアを構想するフェーズにおいて、AIツールを用いてクリエイティブの方針を決定することが求められます。例えば、デザイナーとして自分の考えているアイデアをChatGPTと壁打ちし、クリエイティブの方向性を発散・収束させることで、より良いアイデアを生み出す事ができるかもしれません。

ChatGPTにWebサイトの説明をして、コンセプト案を生成してもらいましょう。
プロンプトの例:
[※Webサイトの説明を入れる]を作成します。このサイトは、[※対象ユーザーの属性を入れる]をターゲットとしています。このサイトでは[※サイトの特徴を入れる]を意識して作成したいと考えています。
2 設計:要件をもとにワイヤーフレームを作成
生成AI が得意とする構造をまとめる能力を用いて、決定した要件をもとに要件をビジュアルに化する準備を行います。

たいサイトの説明を入力して「Generate」をクリックで自動生成できる。この例では先ほどChatGPTが出力
したコンセプトと要件を参考に「Create an e-commerce site embodying the Japandi style with minimalist
aesthetics, featuring functional yet beautiful designs, intuitive navigation, and seamless purchase experience,
offering tips and content on minimalist living.」(ミニマリストの美学を持つJapandiスタイルを取り入れたe
コマースサイトを作成してください。機能的でありながら美しいデザイン、直感的なナビゲーション、シーム
レスな購入体験を提供し、ミニマリスト生活に関するヒントやコンテンツを提供)と入力


3 実験的に作ってみる:ECサイトのコンセプトをもとに実験的なサイトを作成する
コンセプトの検討フェーズにおいても、AIツールを用いることで素早く・簡単に完成形のイメージを作成することが可能です。実際に手を動かして作業をする前に、様々な選択肢を検討することで、想像とは違った独自の方向性が見つかるかもしれません。


Uizard にECサイトのラフデザイン案を生成してもらいましょう。1 つめのステップで作成したコンセプトをもとに、ChatGPTにECサイト作成のためのプロンプト作成を依頼すると効率的です。
プロンプトの例:
ミニマリズムの美学を体現したJapandiスタイルのECサイトを作成。機能的かつ美しいデザイン、直感的なナビゲーションとスムーズな購入体験、ミニマリストの暮らしを提案するコンテンツを提供
4 制作:コンセプトをもとにキービジュアルを作成する
イメージを固めていくフェーズにおいて、これまで発散させたアイデアをもとにクリエ
イティブの方向性を決定することが求められます。AIツールも用いることでコンセプト
(テキスト)からビジュアル(画像)に落とし込むことが可能なため、より直感的にデザ
インのアイデアを検討することができます。


Midjourneyでビジュアル作成してみましょう。
プロンプトの例:
ミニマリズムの美学を体現したJapandiスタイルのECサイトのキービジュアル。機能的かつ美しいデザイン、ミニマリストの暮らしを提案
5 振り返り:AIにフィードバックをもらう
完成したデザインをAIに解析させ、第三者的な視点からのフィードバックをもらうことは有効な方法です。人間の目には見落としがちな問題点をAIが指摘してくれる可能性が高く、デザイン力の向上に役立ちます。例えば、ターゲットとして定めたユーザーとして、作成したデザインに対しどのような反応を示すかを、テストすることができます。

作成したデザインをChatGPTにフィードバックしてもらいましょう。
プロンプトの例:
あなたは[※ターゲットの属性を入れる]として、このデザインに対して詳細なフィードバックをしてください。
以上のように、クリエイティブプロセスにおいて生成AIを活用することで、想像力を刺激し創造の幅を広げることができます。可能性を信じて、積極的に取り入れていきましょ
う。
Section4. デザインの民主化と想像力の向上
近年、生成AIの登場によって、ウェブサイトやチラシ、ロゴなどのグラフィックデザインが、デザインに関する専門的な知識や技能を必要とせずに、一般の人でも手軽に制作できるようになりつつあります。このことから、AIがもたらす「デザインの民主化」が進むことが期待されています。
Adobeが2022年に公開した調査レポート『Future of Creativity Study: 165M+ Creators Joined Creator Economy Since 2020』によると、日本では、自分自身をクリエイティブと認識している人の割合が40%、クリエイティブであることが自分にとって難しくないと認識している人は16%と自信がない人々が多い現状が調査の結果としてもあります。しかし、もしかするとAI によって大きく変化するかもしれません。

Economy Since 2020』2022年8月25日公開(Adobe)の掲載データを基に作成
例えば、グラフィックデザイン作成ツールのCanvaやWebサイト作成サービスWixなどのデザインツールに生成AIを組み合わせることで、テキストの説明だけで様々なデザイン画を生成できたり、下手なスケッチをもとに洗練されたデザイン画に変換したりすることが可能になります。誰でも直感的な操作で、プロ並みのデザイン制作ができるようになるのです。
確かに、このようなデザインの民主化は歓迎すべき流れではあります。しかし一方で、AIにデザインプロセスを完全に任せてしまうことで、人間の感性や想像力が失われてしまうのではないかという懸念の声もあります。
しかし、AIはあくまでも人間のデザイナーを支援するツールに過ぎないことを忘れてはなりません。感性を持った人間ならではの斬新で革新的なデザインが生み出せなくなることは決してありません。むしろ、人間とAIが適切に役割分担し、互いの強みを活かすことで、これまでにない新しい創造が実現する可能性が大いに広がるのです。
例えば、AIに対してふんわりとした抽象的なキーワードを入力することで、予測不能な新しい発想に触発されることがあるでしょう。また、AIが生成したデザイン案の問題点を指摘し、人間が手直しを加えることで、思いもよらない斬新な解決策を生み出すことも可能です。
今後さらに、デザインの上流工程をサポートするAIツールが増えていき、課題へのアプローチ、アイデアの開発、成長の促進を、より細かく、より効率的に行うことができるようになるでしょう。市場調査、ペルソナ設計やリサーチなどの時間を節約できることで、クリエイターたちはより創造的な思考の時間にフォーカスすることができます。それにより、クリエイティブなプロセスを再構築し、創造性を向上させることで新たな機会や価値、そして成長を生み出すことができると考えられています。

AIとパートナーを組む時代には、僕らはすべきこととそうでないことを明確に分けていく方がいい。さらにいうと、愛し、トキメキを持ってできることに熱中する方がいい。重要なのは、常にAIを制御するのは人間であることを自覚し、批判的な目を保持することです。デザイナーはAIから示唆を得ながらも、それを吟味し、フィードバックしていく必要があります。この人間とAIのインタラクティブなサイクルを回すことが、むしろ人間の感性を磨き、想像力を無限に広げるのです。
人がやるべきこととAI に任せるべきこと
やるべきこと | やるべきでないこと(AI に任せるべきこと) |
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・戦略を創り出すこと ・意思決定 ・ 人・ユーザーと話す/デプスインタビューや 行動観察 ・他の人と学ぶ ・メンタリング/ コーチング ・関係性構築 ・プレゼンテーションする ・倫理的なデザイン判断、 文化的感受性の考慮 ・ブランドの個性やトーンの確立 | ・カレンダー管理 ・PowerPoint資料の作成 ・データのクリーニング ・どうでもいいE-mail 処理 ・競合リサーチ ・要約すること ・モニタリング・アラート出すこと |
デザイン業界の民主化はもはや止められない流れですが、AIとの協働を通じて、デザイナーの皆さんの想像力がより高められることを期待したいと思います。AIと人間の想像力を合わせることで、今までにない新しい創造の地平を切り拓いていけるはずです。想像力を解き放ち、AI と共に新しいデザインの世界を創造していきましょう。
Section5. 本稿のまとめ
本稿では、デザインプロセスにおける生成AI の活用方法について解説してきました。
まず、デザイン思考の一般的なプロセスを概観し、そこにAIを取り入れることで、共感からテストまでの各フェーズがどのように変化するかをみてきました。AI の活用によって、情報処理能力が飛躍的に向上し、アイデア創出からプロトタイピングまでが加速化されます。
また、よりクリエイティブなプロセスにおいても、AIは想像力を刺激し、新しい発想を生み出す上で大いに役立ちます。既存の固定観念にとらわれず、奇抜な発想を得ることも可能になるでしょう。
一方で、デザインが民主化されることで、人間の感性や想像力が失われることへの懸念もあることは否めません。しかし、適切に人間とAIの役割を分担し、互いの強みを活かすことがあれば、この懸念は払拭できるはずです。
本稿が、読者の皆さんにとって、AIを活用した新しいデザインプロセスの可能性を知るきっかけとなれば幸いです。 そしてデザイナーの皆さんが、AIを上手に使いこなし、充実したデザイン活動を展開されることを期待しています。
事例に学ぶ デザイナーのための生成AI活用入門
本記事は、『事例に学ぶ デザイナーのための生成AI活用入門』(2024年8月、マイナビ出版)より、第3章「生成AI を用いたデザインプロセス」を再構成したものです。
本稿を読んで、生成AIのデザイン分野における活用に関して興味を持たれた方は、ぜひ手に取って見てください。

プロンプト:An abstract explosion of rainbow colors representing the imagination of creators
- 定価(紙/電子):2,699円(税込)
- B5変
- ISBN:978-4-8399-8446-5
- 発売日:2024年08月28日