
Adobe MAX 2024が開催! クリエイターとマーケターの共通言語となるツールも発表
2024年10月14日~16日の間、米国フロリダ州・マイアミで開催された「Adobe MAX 2024」。今年もここ数年同様に「AI」が話題を占める中、どのような発表があったのでしょうか。現地からのレポートをお届けします。
隆盛極まる、生成AIのリリースとアップデート
Adobeは2024年10月14日~16日まで、米国フロリダ州・マイアミで開催された「Adobe MAX 2024」で、「Adobe Creative Cloud」製品について、多数のアップデートを発表しました。中でも注目は、生成AI「Adobe Firefly」を用いた様々な機能です。画像を生成する「Image 3 Model」、ベクターデータを生成する「Vector Model」に加え、新たにテキストでの指示や画像から、動画を生成できる「Video model」も発表されました。

Image 3 ModelやVector Modelは、すでに「Adobe Photoshop」や「Adobe Illustlator」などCreative Cloud製品の機能の一部として、組み込まれています。同様にVideo modelも「Adobe Premiere Pro」に組み込まれ、最新のアップデートでは、動画や音声の不足分を生成して引き延ばせる新機能「生成拡張」(ベータ)が利用できるようになっています。
Adobe Fireflyには「Adobe Stock」など、権利関係がクリアなデータを学習データとしているため、生成されたコンテンツを安心して商用利用できるという特徴があります。Fireflyはプロフェッショナル向けのツールだけでなく、テンプレートを用いて簡単にコンテンツを制作できる、オンラインツール「Adobe Express」でも利用できます。Adobe Expressの最新のアップデートでは、画像の足りない部分を生成して拡張することで、SNSにあわせたサイズの変更が容易なったほか、画像やテキストを瞬時にアニメーション化できる機能などが追加されています。

Adobe Expressおよび、デジタルメディアサービス担当シニアバイスプレジデントのGovind Balakrishnan氏によれば、Adobe Expressの主要なユーザーは自営業者、プロフェッショナル、教育機関のほか、企業内のマーケティング担当者など。企業ユーザー向けには複数のメンバーで使用できるグループやエンタープライズといったプランも提供されています。コンテンツ制作の際にブランドコントロールができる機能も提供されていて、ページ、画像、イラストにブランドカラーを適用したり、ブランドに即したフォントをデザイン全体に瞬時に適用できるようになっています。
また選択したデザインでテキストやアセットをすばやく入れ替えて、バリエーションを一括制作できる機能や、テキストの翻訳機能、キャンペーン、プレゼンテーション、ドキュメントのページ間で単語やフレーズを簡単に検索して、置き換えられる機能など、コンテンツの配信先や顧客に合わせて、マーケティング担当者が便利に使える機能も提供されています。

「Adobe MAX 2024」では、AIを使ったマーケティングツール「Adobe GenStudio for Performance Marketing」も発表されました。マーケティングのキャンペーンに利用するコンテンツの作成から配信、効果測定までを一括で行えるアプリケーションで、コピー、ロゴ、画像、テンプレートなど、ブランド承認済みのアセットを管理し、素早く活用できる機能を備えています。

Adobe GenStudioのゼネラルマネージャーVarun Parmar氏によれば、Adobe GenStudio for Performance Marketingは、GoogleのCM360、Meta、Microsoft Advertising、Snap、TikTok といった主要な広告プラットフォームと提携。Eメールのほか、これらのプラットフォームに向けたコンテンツ配信ができます。




ブランドのアセットを使用し、Adobe ExpressでFireflyを用いて新たなコンテンツを作成。承認を得た上で配信するといったもできます。クリエイターの手を煩わすことなく、ターゲットのペルソナに即した配信ができ、また配信された画像、動画内のオブジェクト、カラー、サウンドなど、どんな素材がユーザーにマッチしたかなど、AIによる細かな効果測定も可能になっています。
Parmar氏はAdobe GenStudio for Performance Marketingによって、企業は「広告配信のパフォーマンスを最適化できる」と説明。たとえば「なぜここにオレンジ色を使うのか」はこれまで、クリエイターの感性だったり、マーケティング担当者のトレンド感覚だったりしたわけですが、アプリケーションを通じて、「クリエイターとマーケターは初めて、より良いパフォーマンスを生み出すための共通言語を得ることができ、それをシンプルで直感的な方法で活用できる」と言います。

Adobeではクリエイター向けの「Adobe Creative Cloud」のほか、デジタルマーケティングプラットフォームとして「Adobe Experience Cloud」を提供しています。Adobe GenStudio for Performance Marketingは、いわばその両者を橋渡しするツール。その背景には、多様化するユーザーニーズを反映した、急速なコンテンツ需要の拡大があります。Adobeの調査によれば、コンテンツへの需要は今後2年で5倍まで増加するとのこと。つまりクリエイターのみならず、誰もがアセットを使って、コンテンツを制作できることが求められるというわけです。それを可能にするのがクリエイティブツールにおける生成AIのFireflyであり、広告配信のパフォーマンスを最適化するAdobe GenStudio for Performance Marketingであるというのが、Adobe MAX 2024で発信された同社のメッセージのひとつです。
Text :太田百合子