《デザイン基礎講座》レイアウトの基本原則を理解する #1

「レイアウト」とは、空間や平面に要素を配列することをいいます。また「グラフィックデザイン」とは、画面や誌面という限られた範囲の中に、文字や図版という要素を配置していくことをいいます。このとき、一定の基準や繰り返しのルールに基づく配置によって、情報を理解しやすくすることが何よりも重要です。ここでは「情報の整理と差別化」や「レイアウトの規則性」などについて学んでいきましょう。

目次

情報の整理と差別化

レイアウトの原則は、基準やルールに基づき空間に要素を配置することですが、そもそも情報を正しく伝えるためには、文字や図版の性質を理解しておく必要があります。

業種によっては原稿を書く執筆者と、原稿を整理する編集者、整理されたものをレイアウトするデザイナーといったように分業されていることがありますが、実際の現場では必ずしも理想通りにはいかないことも多いことでしょう。そのため、レイアウトをする前に、文字や図版の性質を理解して、情報を整理し、まとめておくことが大切になります。

文章であれば、テーマが複数に分かれているかどうかを判断し、関連するもの同士をグループに分け、図版がある場合は、どのグループに付属するのかを事前にまとめておきましょう。また、伝えたい情報のうち、もっとも重要なことは何か、誤解を招かず理解してもらいやすくなる順番とは何かを考えておくことも重要です。重要な情報は優先順位が高くなるため、ほかよりも先に大きく取り扱うようにするのが基本です。

デザインやレイアウトは文字や図版の見せ方を通して視覚的にコミュニケーションをする行為です。文章を書く前に考えをまとめ、推敲をするのと同様、レイアウトに取りかかる前に、まずは情報の交通整理をしておくことで、デザインに落し込んでいく作業がスムーズにでき、視覚的に整理されたレイアウトで誤解のない情報の伝達ができるようになります。

情報を整理する

レイアウトを考える前に、配置する要素がどのような性質を持っているのかを理解する必要があります。テーマがいくつあるのか、関連するものがあるかどうかを読み解いて、情報をグループ分けしたり、場合によっては階層化して、どうすれば伝わりやすくなるかを把握しておきましょう

優先順位と差別化

情報の整理ができたら、どれがもっとも伝えたいことなのかを考えて、優先順位をつけておきましょう。重要な情報ほど大きく、優先的に扱うようにするのが基本です。また、必要に応じて情報を階層化して、構造を整えることも大切になります

デザインに必要な4つの原則

デザインとは、文字や図版を配置することですが、平面を埋め尽くすように置いていくことではありません。情報をわかりやすく伝えるためには、関連する項目をまとめておく[近接]、基準に則って配置をする[整列]、同じ階層、同じ要素の見せ方を統一する[反復]、要素の強弱を強調して視覚的な効果と構造をわかりやすくする[コントラスト]という4つの原則が大切です。すべてのレイアウトで必ずこの4つを盛り込めるわけではありませんが、この原則は必ず意識しておくようにしましょう。

この見開きのページでも、デザインに必要な4つの原則が守られています。左ページ上のタイトルとリード文は、ほかよりも大きく扱われた[コントラスト]、見出しや図版のタイトルは同じように繰り返す[反復]、本文や図版、キャプションは一定のラインで揃える[整列]、本文に関連する図版や、図版のキャプションは必ず近くに配置する[近接]でレイアウトされています

近接

近接は同じ要素、関連する情報を近くに配置して、ほかの情報との混同を避け、誤解を招かないための大切な要素です。同じ性質のもの同士を近づけてグループ化するものを考えましょう

整列

整列は一定の基準に基づいて文字や図版を配置するもので、揃える基準は上下左右のいずれかにするのが基本です。中央揃えもわかりやすい基準ではありますが、単調に見えたり本来伝えたい情報が不揃いになることがあります

反復

繰り返し出現する同じ要素は同じように扱うことで、情報の構造や階層を理解しやすくできます。また、視覚的にも一定のリズムの変化があることで、レイアウトが単調にならず、飽きさせない効果もあります

コントラスト

情報の区分けをわかりやすくするために、要素の強弱を強調するのがコントラストです。文字であれば大きさや太さに差をつけたり、地色を敷いてネガポジを反転させるなどが効果的です

レイアウトの規則性

情報の整理とデザインの原則を踏まえた上で、レイアウトを作成していくことになりますが、原則を具体的な形に落し込んでいくためには、レイアウトの前提になる器が必要になります。

この器が「基本フォーマット」で、文字や図版といった要素を配置するためのガイドを設計した骨格となるものです。基本的には本文の文字サイズを基準に、1行の字詰めと行数、段組みを作成し、上下左右の余白とのバランスを考えて設計をするものです。この基本フォーマットに沿ってレイアウトをすることで、複数のページであっても全体の統一感を保ったデザインをすることができます。

より緻密で柔軟なレイアウトをするためには、この基本フォーマットをさらに細分化して、細かいグリッドを作成します。これは段組みを2分割、3分割したり、補助となる規則性を持ったガイドを持つもので、「グリッドシステム」と呼ばれます。綿密に設計したグリッドを活用すると、フリーレイアウトのように見えても一定の基準に則ったレイアウトをつくることもできるようになります。

基本フォーマット

レイアウトは複数のページを作成することを前提に、基本骨格を設計するようにします。マージンや段組み、ページ情報のようにすべてのページで必要となる共通の要素を配置する大枠を決めて、どのページでも共通した印象を持つようにするが基本フォーマットです
基本フォーマットに則って本文や図版を配置していくことで、どのページであっても段組みや図版のサイズに規則性を持たせ統一した印象を与えることができます。このフォーマットの中で、テキストの位置や図版の大小などに変化をつけていくようにします

グリッドシステム

マージンや段組みといった大まかな枠だけではなく、さらに細分化してルール付けをする場合には、画面を一定の区画で区切るグリッドを使ったフォーマットを作成します。グリッドを細かく設計しておくことで、柔軟性と規則性のあるレイアウトができます
タイトルや見出し、本文、図版の位置をグリッドに沿って配置することで、規則性の高いレイアウトを作成できます。一見フリーに見えるレイアウトでも、グリッドを意識しておくことで自由でありながら乱雑な印象は与えないようにレイアウトとなります

教えてくれたのは…

島﨑 肇則さん
書店員、編集プロダクションを経て、現在フリーランスに。おもにデザイン・DTP関連の書籍・雑誌で、レイアウトや文字組みのほか、カラーマネジメントなどの解説を中心に執筆・編集を行う。

Text:小泉森弥
※本記事は、「Web Designing 2024年2月号」の記事を一部抜粋・再編集して掲載しています。

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