
《デザイン基礎講座》プレゼン資料をつくるときの、グラフやチャートの最適なデザインとは?
ビジネスシーンでプレゼンテーションをする中で、グラフやチャートを用いる機会は少なくないでしょう。引き続き、Microsoft PowerPointなどでプレゼン用のスライドをつくる上で、相手にわかりやすく伝わるグラフおよびチャートの表現方法について、森重湧太さんが解説します。
見やすいグラフの描き方
「何を見せるグラフか」を念頭に目的以外の要素の記述は控え目
グラフの描き方でよく見かけるのは、グラフ内にメモリと補助線を細かく引いたり、凡例を別枠で書き込んでいる表現です。大事なのは、グラフをすべて読み解いてもらうことではなく、伝えたいことを伝えることです。ある対象についての変化や推移を伝えるために、折れ線グラフや縦横の棒グラフを用いる際は、「何をもっとも伝えたいグラフか」を突き詰めましょう。
おすすめしたいのが、一度グラフをつくったら、不要な情報を削ってシンプルな状態にしてみることです。記載がなくても伝わる縦軸や補助線、凡例は、躊躇なく削ってみると、かなりスッキリした見え方に変わります。読み取ってほしい数値があるなら、その箇所にだけデータラベルをつけます。
また、各項目が共通で着目すべき範囲や時期があるなら、その箇所の地に色づけするとわかりやすいです。

吹き出しでグラフ内を説明
グラフ内の要所の説明は吹き出しで追記する
グラフの中で、特に大きな変化が起きたタイミングや、注目箇所には、吹き出しを加えて解説しましょう。その際、各項目に割り当てた色と吹き出しの色を揃えると、対応関係が視覚的に伝わりやすくなります。
また、グラフの各項目すべてに数値ラベルがあると雑然と感じます。数値について伝えるのではなく、変化の詳細を伝える場合には、数値の記載を省略してもいいでしょう。
気をつけたいのは、吹き出しのテキスト量です。なるべく短くすること。人前で話をする内容をすべて漏れなく載せるのではなくて、簡潔に。長いと、見た目もよくありません。最小限で読みやすい分量にまとめましょう。

各項目の対応の表し方
着色箇所を絞り、吹き出しを加えて注目箇所を浮き彫り
棒グラフでは、見せたい対象に色をつけておくと、視覚的に「このグラフで見せたい対象」の明示になります。それ以外は灰色にすれば(グレーアウト)、それらの対比が際立ち、データ掲載の意図が伝わりやすくなるでしょう。ここでは、比較対象に色をつけて、起点となる数値を大きく記載し、それぞれを比べて吹き出しを加えています。
また、予測内容を表現する場合は、例えば、キーカラーをベースに不透明度を下げて透過状態にしたり、枠線を点線にしたりすることで、予測の表現になります。
これらの表現ができていないと、現場では、スライドにレーザーポイントを当てて説明することになりかねません。

斜線と塗りの使い分け
グレーアウト以外に覚えておきたい見せ方
サブ要素、ネガティブにあたる要素を灰色(グレーアウト)で表現するという説明をしてきました。もう1つグレーアウトのバリエーションを挙げると、斜線です。塗りつぶしと比べて、斜線はグラフが薄く見えます。これが虚像(予算という想像、予測上の数値)を表現するのに適しています。対比を表す際は、もう一方をキーカラーなどの濃い色で塗りつぶすと、わかりやすくなるでしょう。
ここで挙げたサンプルのように、予算と実績を比較するなら、どちらも濃い色の塗りつぶしでは、(凡例で説明していたとしても)視覚的に伝わりづらいです。グレーアウトとともに斜線による表現を覚えておくと便利です。

差分を視覚的に表現する
グラフ内の要所の説明は吹き出しで目立つ記載を!
予算と実績の差分をグラフで表したい場合、差分の動きをわかりやすく表現できるかが問われてきます。この場合、1年を四半期ごとで比べているため、棒グラフが4本と少なめです。その際は棒グラフの横幅を左右に広げ、棒グラフ同士が離れすぎずに配置すると見やすく表現できます。
また、予実差分の数値はグラフ内に大きく数値を表示します。数値の桁数は比べやすい桁数に整えて、最終的に、1年でどれほどプラスとなったかを点線と数値で表現。 四半期ごとの比較は、それぞれで増加か減少かについて、色を使い分けます。赤は、赤字というだけあってマイナスを表現するのに適しているため、採用します。

円グラフはカラフル厳禁
デフォルト設定で進めない的を絞った箇所を円グラフ化
円グラフでおすすめなのは、取り上げる対象数を増やさないこと。円グラフの項目(3〜4つが目安)は抑えた方がいいでしょう。PowerPointでつくる際のデフォルトはカラフルな構成のため、凡例が多いほど、不必要に見た目が煩雑となった円グラフになりかねません。
円グラフを用いる場合は、まず取り上げる項目数を絞ること。項目数が多い場合は、上位を除いて「その他」扱いにしてグレーアウトで表現します。グラフ化の項目数を絞っておけば、円グラフ内の1項目あたりの面積も増えて、円グラフ内に項目や数値ラベルの記載もしやすいです。特に数値は、可能な範囲で大きく表示しておきたいです。

流れを視覚化する
パッと見た瞬間、フロー(流れ)がわかる構成に
フローチャートは、ある内容を流れに沿って説明する際に用いるので、話したい順番や内容が伝わる見せ方が求められます。右のサンプルには分岐があるので、どちらの話をしたいのかがわかるように、一方に着色を施し、フロー(流れ)が目立つように矢印にも色をつけ、もう一方をグレーアウトでより対比を表しています。補足説明がある際は、流れの中に吹き出し要素を入れるといいでしょう。
各項目の頭に番号を書く手はありますが、書かないと順番や流れが認識しづらい状態であれば記載します。書かずとも伝わる仕上がりになっていれば、要素は少ない方がいいので、加えずスッキリした印象を保ちましょう。

教えてくれたのは…

森重 湧太さん
MOCKS(モックス)代表。資料作成代行事業で200社以上のデザインを監修。著作に『一生使える見やすい資料のデザイン入門』『シーンごとにマネして作るだけ! 見やすい資料のデザイン図鑑』(ともにインプレス刊)。 https://mocks.jp/
Text:遠藤義浩
※本記事は、「Web Designing 2025年2月号」の記事を一部抜粋・再編集して掲載しています。