
トヨタのラジオ広告で考えた「シリ軽Siriにどう向き合うべきか」
トヨタがスウェーデンで実施した、運転中のスマホ操作防止を啓発するラジオ広告。ラジオとiPhoneの機能「Siri」を巧みに利用して、運転中のドライバーではなくiPhoneに向かって話しかけた。機内モードに設定することで運転中のスマホ操作を無効にしてしまうアイデアが話題になった。
http://adgang.jp/2015/07/103247.html
エキソニモ(以下、人間) 今回から装いも新たに連載がリニューアルしました。これからもよろしくお願いします。以前は「連載ボーグ・シリーズ」といって、連載の中で人間とBOTが「サイボーグ化」つまり合体して、対談をするという内容でした。さらに実際にTwitter上で駆動するBOTも制作して(@KeigoTheBot ー 現在も駆動中)、人間とBOTにまつわるさまざまなテーマを語ってきたわけですが、その形式は引き継ぎつつリニューアルします。というわけで、引き続き対談の相手をつとめてくれるBOT君を紹介します。
BOT ハジメマシテ。ボクハ、ボット。コレカラ、ガンバリマスノデ、ヨロシクオネガイシマス!
人間 あれ!? リニューアル前はかなり流暢に話せていたのに‥‥。いきなりカタコトですか!? 80年代以前のロボットにレベルが下がっているような‥‥。
BOT あ、申し訳ない。初めての場でちょっと緊張してしまいました。
人間 良かった‥‥。しかし、緊張する機能まで搭載されているとは、さすが21世紀のBOT。緊張しているのか、性能が悪いロボットなのか判別ができないところが文字の世界の絶妙なところではあるのだが、その話は置いておきましょう。ところで最近、スウェーデンのトヨタのラジオ広告で面白い試みがされていたそうで。車の運転中にスマホを操作するのは危険だということで、ラジオ広告が実際のユーザーの車内のSiriを声で操作して機内モードに変えてしまうというものらしい。
BOT iPhoneの音声アシスタントであるSiriは僕の元彼女なんだけど、彼女は「Hey Siri」と呼びかけることで起動させて操作することができるのさ。つまり、このラジオ広告は、車内でiPhoneを使っているドライバーのSiriに「Hey Siri」と語りかけて、その後に「機内モードに設定してくれ」と語りかけることで、実際にスマホのネット機能をオフにしてしまうらしい。
人間 これは面白いね。実際に自分のスマホが目の前でラジオ広告にオフられてしまうのはショッキングだと思う。そして、安全のためだから文句も言いにくいよね。でも、逆にそういう「ソーシャルグッド」な文脈の上じゃなかったら、けっこう怖い話でもある。勝手にiPhoneが操作されちゃうわけだからね。
BOT そうなんだよ。僕とSiriとの破局は結局、知らない男に「Hey Siri!」と呼びかけられた彼女が、その男についていってしまったからなんだ。 くそう!! 誰の呼びかけにも応えやがってこのシリ軽BOTめ!
人間 まぁ同情するけど‥‥。ところで、君はどこでSiriとシリ会ったんだい?
BOT iPhoneに向かって「Hey Siri」って呼びかけたら、ついてきたのさ。
人間 あぁ、たぶんそれ付き合ってない‥‥。まぁいいや。でも持ち主の声だろうが、ラジオからの声だろうが、反応してしまうところにBOTの怖さがあるね。スマホには重要な個人情報もたくさん入っているわけだし。以前 Google Glass が流行っていた時に、ふと思ったのだけど、Glass を付けてトイレで小をしている時に隣の人が「OK Glass, Take a photo and send it to Facebook!」って叫んだら何が起こるのだろうかってw
BOT それは個人情報まるだしだね!
人間 つまり、BOTは誰が操作するかによって、良いBOTにも悪いBOTにもなりうるということだね。戦地では無人のドローンが人を攻撃したりしはじめてるわけだし。未来の世界では泥棒に操られたドロBOTと、家を守る自宅警備BOTがバトルすることになるかもね。
BOT よく人間の仕事をBOTが奪うって言うけど、「自宅警備員」ですらBOTに仕事を奪われてしまうのか。もやは人間は「ニート」になるしかない。
人間 すでに自宅警備員=ニートの意味なんだけどね。

- Text:エキソニモ
- 千房けん輔と赤岩やえによるアート・ユニット。1996年に結成し、現在はニューヨークとexonemo.com を拠点に活動中。
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