ユーザーの状況とデバイス特性をとらえた、「ユーキャン」の施策●特集「スマホ最適化」

はじめに、行政書士や宅建などの法律系資格、医療事務や介護事務などの医療系資格からボールペン字といった実用系講座まで130を超える通信教育のプログラムを提供しているユーキャンの事例を紹介しよう。

生涯学習のユーキャン(医療事務ページ)

http://www.u-can.co.jp/医療事務/

●課題の確認

テレビCMと新聞の折り込みチラシでターゲット層の認知と興味を獲得

ユーザーをWebへ誘導し、資料請求や申し込みへの具体的なアクションへ

●状況の確認

・PCとスマホのアクセス比重が逆転傾向

・女性向け講座はスマホ閲覧がPCよりも多い

・受動的なモードのユーザーがスマホサイトへ流入

 

スマホサイトに与えられた役割

マーケティング施策は、テレビCMと新聞の折り込みチラシでターゲット層の認知と興味を獲得してWebへ誘導し、Web上のコミュニケーションで資料請求、または申し込みの具体的なアクションへとユーザーを誘導することである。よって、一連の流れの歩留りをいかに改善できるかが重要なポイントとなる。

ユーキャンにおいてもPCとスマホのアクセス比重は逆転の傾向にあり、特に女性向けの講座についてはスマホ閲覧の比率がPCを大幅に上回っている状況がある。一方で、資料請求や申し込みのコンバージョン率はPCの方が高い傾向にあった。テレビCMのライトな刺激で、やや受動的なモードのユーザーがスマホサイトへと大量に流入しやすいこともコンバージョン率の違いに影響を与えていた。

この課題に対処するために、ユーキャンでは複数パターンのスマホサイトのレイアウトとコンテンツを用意し、A/Bテストを繰り返すなかで現在の形に行きついた。ユーキャンは紙のチラシにおいても数十年前からA/Bテストを徹底して実施する文化が根付いており、スマホサイトの最適化においてもその文化がいかんなく発揮されている。

では、具体的にどのような工夫をしているのだろうか。医療事務のページのPCとスマホサイトのデザインの違いに注目してみたい。下に各種の工夫と対応をまとめたので、画像をクリックして確認してほしい。

 

 

 

 

ユーザーの洞察とデバイス特性

PCサイトとスマホサイトで、ここまで劇的にサイト構造やレイアウト、コンテンツを使い分けている例はあまり他社では見られないが、この形に変更してからユーキャンのスマホサイトのコンバージョン率は大幅に向上したそうだ。

上記の工夫を単にデザイン上のTipsとして理解することは、この取り組みを過小評価するものである。本当の成功要因は、このスマホサイトにどんなユーザーがどんな状況(コンテキスト)で流入しているのかを深く洞察し、その状況に合わせた工夫をしたことにある。

ターゲットとなるOL層や主婦層はテレビCMをきっかけとしてサイトに流入する傾向にある。数年前のPCメインの時代では、CMを覚えていて後から詳しく調べるためにWebサイトを訪問していたユーザーが多かったのに対し、スマホが普及した今はテレビCMを見て即座に「あっ、ちょっとこれ気になるわ」くらいのテンションでサイトを訪問するユーザーが増加しているものと推察される。

そのため、ユーザーが“知りたいことを明確に持っている”ことを前提にしていたPCサイトのコミュニケーションはこの状況では通用せず、なんとなく様子を見に来たユーザーが文章を読み込まなくても講座の雰囲気が把握できること、雰囲気を把握する流れで講座を受講することのメリットが伝わり、不安が払拭されることが求められるようになったのである。

この「ユーザーの状況」に対応するために、遷移を要しない1ページ構成で縦スクロールをメインに補足的に横スクロールをするだけで足りるシンプルなサイト構造が生まれたのだ。ここに紹介したユーキャンの「スマホ最適化」はユーザーの状況(コンテキスト)とデバイス特性を的確にとらえた好例といえよう。

Advisor・Text:宮坂祐
(株)ビービット

エグゼクティブマネージャ/エバンジェリスト

コンサルタントとして、Web戦略立案・Webサイト成果向上プロジェクトを数多く実施。2013年からはビービットのコンサルティング事業営業責任者/エバンジェリストとして、オムニチャネル、カスタマージャーニー、UX/CX等をテーマに大型のマーケティングイベントに多数登壇。 http://www.bebit.co.jp/

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