[グロースハック]スマホ特有の閲覧環境を考慮した改善ノウハウと成功事例●特集「スマホ最適化」

依頼の半数はスマホサイトに

Kaizen Platformでは、「グロースハック」と呼ばれる効率的なサイト改善を手がけている。同社の鬼石真裕氏は、仕事内容についてこう説明する。

「ビジネスの成長に必要となる時間や人、お金といったリソースを効率化することがグロースハックの広義での定義です。Webサイトへ集客するチャネルの最適化はすでに進んでいるので、特に我々はサイトに到達してから先の最適化にフォーカスしています」

同社では100社以上のクライアントを抱え、改善のためのテストをこれまでに6,000回以上行ってきた。

「いまやどのクライアントでも、改善の対象にスマホサイトは含まれていて、テストのうち半数はスマホサイトです」

そうしたテストを重ねた結果、たとえば「進研ゼミ中学講座」のスマホサイトでは、申し込みページへの遷移を40%増加させることに成功している(01)。

「受講費が毎月の支払いよりも一括払いする方がお得になることを訴求して、長期契約を取ることを目的としています。元のサイトでは一括払いの合計額をテキストで書いていたので、その数字がどういうものか捉えづらく、1年や半年の合計額なので高く感じられてしまいました。そこで、一括払いにしたほうが月額単価が安くなるというポイントを図表化して、視覚的に伝えるようにしました」

進研ゼミ中学講座

01 ベネッセ「進研ゼミ中学講座」 の受講費紹介のページ。受講費を半年あるいは1年分一括払いすると、1カ月ごとの支払いより月額単価が割安になることを訴求している。もともとは一括の合計額を大きく表示していたが、月額単価の比較を図で見せてお得感を表現した結果、申し込みページへの遷移が40%増加した

 

同社では、サイト改善の際に自社のツール「Kaizen Platform」を用いている(02)。

「ツールに改善したいページを登録すると、改善案を提案してくれるプロフェッショナル『グロースハッカー』からアイデアが集まります。そこから何案か絞って、元のサイトとあわせて実際のユーザーにA/Bテストを行い、一番効果の出た案と新たに集まったアイデアをまたテストして、ということを繰り返します」

02 オリジナルツール「Kaizen Platform」。改善したいサイトを登録すると、2,100人以上(2015年7月時点)いるグロースハッカーから改善案が提案され、実ユーザーによるA/Bテストで効果をテストし、比較できる。このツールだけを契約して、自社内で改善を行う企業もある

 

スマホサイトの改善ポイント

スマホサイトの改善には、主に4つのポイントがあるという。

「まずPCと共通して基本となる改善ポイントが、レイアウト、アイキャッチ画像、アクション動線、コピーの4つです。レイアウトやアイキャッチでは、ファーストビューでサイトのポイントを伝えていかに目的とするアクションをしたいと思わせられるかが重要です。アクション動線は、申し込みボタンなどのアクションをいかにしてもらえるかということです。特にスマホは画面サイズが小さいので、要素を極力絞らなければなりません。また、縦スクロールで見られることが多いので、目線が上から下へ1方向に流れる傾向があることや、両手持ちか片手持ちかによって操作しやすい範囲が違ってくることなどに配慮した配置の計算も必要になります」

「X BRAND」の事例では、視線の横移動を要するタイル状に並んだコンテンツを縦方向に並べ、見出しを英語から日本語に変えたことで、アクションが30%増えた(03)。

「これは記事を読んだ後に表示されるものなので、特にスクロールスピードが上がっている中で視線が縦に動いているので、横並びの要素は目にとまりづらかったのです」

03 Yahoo! JAPANによる、人 気雑誌の記事が読めるコンテンツ「X BRAND」での改善例。 記事を読み終えた後に別の記事へと誘導し、サイト内を回遊させることが目的のメニューを、見出しを英語から日本語に、タイル状だったリストを縦に並べた。その結果、アクションが30%増えた

 

「Yahoo!お見合い」では、会員登録へのアクション動線を目立たせた(04)。

「一番優先度が高いアクションの無料会員登録をファーストビューで目立つようにし、コピーやアイキャッチは『婚活!』を目立たせました。スマホはデバイスの進化によっても状況がこまめに変化していきます。企業では、改善案にトライするサイクルを継続的に続けられる体制を作れるかが、重要になってきます」

04 「Yahoo!お見合い」では、ファーストビュー内で無料会員登録のボタンを目立つ位置に配置。「婚活!」というコピーを大きく置くことで、12%登録が増加した

 

改善後は少しの違いのようだが、いかにビジネスに作用するか実感できる話だろう。

鬼石真裕
リクルート、グリーなどで企画、営業、事業責任者を歴任。Kaizen Platformでは、100社を超えるクライアント様の支援をするCustomer Successの責任者、グロースハッカーネットワーク責任者を兼任。福岡市との提携も主導した。「schoo」の歴代ギネス受講者数記録を持つ。https://kaizenplatform.com/ja//
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