[バズ施策:#MayhemSale]大義なくして、破茶滅茶すべからず

広告は水モノ。毎分毎秒、新しい広告が生まれては消えていきます。そんななか、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に保管され、残りつづける広告があります。米国の「AICP Next Award」の受賞作品は、社会を動かし、広告の新しい未来を切り拓いた作品として、MoMAにアーカイブされるのです。その中には、あの伝説的バイラルムービー「Still Free」も。2006年のカンヌサイバー部門グランプリ作品で、“大統領専用機に落書きをする”というセンセーショナルな内容で世界をザワつかせた、個人的にも大好きな作品です。

今回紹介する「ソーシャルメディア泥棒」は今年の受賞作であり、見事MoMA入りしたキャンペーン。米大手保険会社のオールステートが行った、近年増加する“SNS投稿で留守が露わになったお宅を狙う空き巣被害”に警鐘をならす施策です。アイデアはめちゃくちゃ破天荒(笑)。Twitterでフットボール観戦に行くことをつぶやいた実在のカップル宅に忍び込み、そこで盗んだ家電を激安でネット販売するというドッキリもの。犯人(役のキャラクター)がその様子をTVCMで告知し、通販番組をパロったムービーを投稿するとすぐさまネット上で話題となり、Webサイトには爆発的アクセスが集まり、家電のほとんどが秒殺で完売しました。

「リアリティ」「ライブ感」「ドッキリ」といったヒット要素もしっかり押さえていますが、ただの悪ふざけにも見えるこの施策が、なぜここまでバズったのか? それは、この施策自体が“SNSが引き起こす犯罪を警告すること”につながっている点です。要するに、ユーザーが加担しやすい“大義”があるわけです。そう、表現のエッジを立てる前に、まずその施策の世の中における“意味”を設計する必要があるのです。最後に、バズ施策をやる上での教訓を。大義なくして、破茶滅茶すべからず!

【Buzz】Social media savvy burglar "#MayhemSale"(ソーシャルメディア泥棒)

 

ナビゲーター:眞鍋海里 Kairi Manabe
Contents Planner/Interactive Planner 1982年、宮崎市生まれ。タワーレコード、Webプロダクションを経て、BBDO J WESTに入社。コンテンツプランナーを務める。2013年に手がけたタイヤ通販会社AUTOWAYのムービー「雪道コワイ」は世界220カ国以上でバイラルし、動画は1,000万回以上の再生を記録して話題となる。 http://www.bbdojw.com/
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