コンテンツマーケティング、その前に●特集「コンテンツマーケティング」

自社の課題をふり返ってみる

コンテンツマーケティングの戦略を立てる際、もっとも重要となるポイントは、「どのようなビジネス上の課題を解決しようとしているか」ということだ。皆さんは、どんな課題を解決しようとしているか、即答できるだろうか? 01に、多くの企業でコンテンツマーケティングに取り組むきっかけとなった課題を八つ挙げた。自社に当てはまる課題があるか、まずはチェックしてみてほしい。

 

01 多くの企業が直面しているマーケティング上の課題

 

コンテンツマーケティングが「向かない」こと

コンテンツマーケティングは有益な施策ではあるが、けっして万能ではない。02にコンテンツマーケティングのデメリットを列挙した。

 

02 コンテンツマーケティングが「向かない」こと

 

抱えている課題や達成したい目標によっては、コンテンツマーケティングが最適ではない可能性もあり、他の施策を組み合わせることも必要かもしれない。

例えば、長期施策であるコンテンツマーケティングは「来週の売り上げ」に寄与するタイプの施策ではない。そういった場合には、即効性のある広告やキャンペーン施策などを優先すべきだろう。また、Webマーケティング施策にまったく取り組んでいない場合にも、コンテンツマーケティングによる潜在層へのアプローチの前に、すでにニーズが顕在化している「今すぐ客」をきちんと売り上げにつなげるためのリスティング広告施策やSEOの内部対策が先決だ。コンテンツマーケティングは、あくまでもマーケティングゴールを達成するための手段に過ぎないことを覚えておこう。

 

長期施策になる覚悟を決める

コンテンツマーケティングのデメリットの一つとして、短期での費用対効果が悪い(即効性が低い)という特徴を挙げた。これは、裏を返せば「成果を出すには長期的な取り組みが必要」ということだ。実際、成果をあげている企業に共通しているのは、いずれも長期間にわたって運用していることだ。一般的には、最低でも6カ月、できれば1~2年くらいは腰を据えて取り組む姿勢が求められる。もちろん、6カ月間まったく効果が出ないわけではない。サイトのアクセス数が増えたり、記事がソーシャルメディアでシェアされたりと、手応えは感じられるはずだ。大切なことは、すぐに売り上げを求めたり問い合わせ数の増加を期待したりするのではなく、そこにたどり着くための段階的な指標(KPI)を設定し、着実に育てていく姿勢である。

 

成功を左右する二つのカギ

Content Marketing Institute社の最新の調査によると、米国でコンテンツマーケティングに取り組んでいる企業のうち、効果を感じているのは38%という結果になっている。「それしか成功していないのか?」と不安になるかもしれないが、この結果について筆者は「米国でもコンテンツマーケティングのポテンシャルを最大限に発揮できている会社はまだ少ない」という意味だととらえている。調査結果を見ながら、コンテンツマーケティング「成功のカギ」を分析してみよう。

03の表は「効果を感じている」「平均的」「効果を感じていない」と回答した企業の体制や取り組みだ。ポイントは「戦略の存在」と「社内運用チームの存在」の二つだ。この二つの要素の存在の有無が、現在のコンテンツマーケティングの成功を大きく左右する。

 

03 コンテンツマーケティングが成功するためのポイントは?

(出典:2015 B2B Content Marketing Trends – North America: Content Marketing Institute/MarketingProfs)

 

「戦略」とは、目的とそれを実現するための施策、そして成果を評価するための測定指標がセットになったものだ。戦略がなく、目的が明確になっていなければ、施策の評価のしようもなく、評価できなければ、ヒトやカネといった経営資源を追加投入することもできない。したがって、本特集で繰り返し述べているように、コンテンツマーケティングに取り組む際は、「目的は何なのか」「何を達成したら成功なのか」「そのために何を測るのか」を定めてスタートしよう。そうでないと、残るのは古い記事だけが並んだオウンドメディアと疲弊したマーケターだけということになりかねない。

二つ目の「社内運用チームの存在」は、すべてを内製化せよということではない。重要なのは、上記の「戦略」とセットで「責任の所在」を明確にすることだ。外部のライターや制作会社を利用して編集チームを構成する場合にも「コンテンツ発信の責任者」は明確に社内に置くこと。運用を外注するにしても、できれば「分析担当者」(+効果測定のためのゴールと指標)は社内に置くようにしたい。

 

Text:亀山將 (株)イノーバ
米国、欧州でマーケティングを修める。企業向けイベント企画、各種新規事業の立ち上げ支援を経て(株)イノーバに参画。執筆やセミナー登壇を通し、コンテンツマーケティングの認知向上に尽力。著作に『いちばんやさしいコンテンツマーケティングの教本』(共著/インプレス)がある。 http://innova-jp.com/
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