Webディレクター/マーケターはもう知らないでは済まされない! SSL導入実践ガイド(2/4)

「SSL導入実践ガイド(1/4)」では、SSLが存在しないインターネットは危険であることを述べた。本記事では、もう少しSSLの基礎知識について理解を深めていく。また、よくある疑問や誤解についても解説する。

 

長い歴史を持つSSL

通信の安全性を確保するためのプロトコルであるSSLは、商用インターネットが普及しはじめた1995年にNetscape Communications社によって設計・開発された。いくつかの問題点を解消するバージョンアップを経て翌年にはSSL 3.0となり、それ以降多くのWebブラウザがサポートし、広く用いられている。

このSSLの正体はプログラム同士のデータ送受信(セッションの確立)に関する取り決めであり、「セキュア・ソケット・レイヤー」と呼ばれるように、通信の接続地点である「ソケット」に追加して、Webブラウズやメールの接続を安全なものにしてくれるものだ(01)。

 

01 SSLはいったい何をしているの?

SSLはプログラム同士のデータ送受信(セッションの確立)に関わる技術。クライアントとWebサーバなど通信の接続地点である「ソケット」にSSLを追加することで、WebブラウジングのためのHTTPやメールのIMAPといったプロトコルを安全なものにする

 

SSLからTLSへ

その後、インターネットの標準化団体である「IETF(インターネット技術タスクフォース)」によって、SSLをベースとした「TLS(Transport Layer Security)」が策定され、現在の最新バージョンは「TLS 1.2」となっている(02)。これらを総称して「SSL/TLS」、または単に「SSL」と表記されることも多い。

2014年、SSL 3.0にプロトコル自体の脆弱性(POODLE攻撃)が発見され、安全性に深刻な問題性が生じた。そのためSSLでの通信をWebサーバ側で制限して、TLSのみの接続を許可するケースが増えてきた。その結果として、SSL非対応の携帯電話や初期設定でTLSが無効になっているWebブラウザの一部バージョンなどではWebサイトに接続できなくなるという事態も起きている。

このように、現状ではSSLからTLSへの置き換えが急速に進んでいる途上にある。本特集では「SSL」の呼称を用いているが、数年後にはセキュリティのプロトコルはTLSの表記が一般的になる可能性が高いと思われる。セキュリティ技術職以外のWeb担当者も今から用語の使い方には留意しておきたい。

 

02 SSLとTLSってどう違うの?

SSLはNetscape Communications社が、TLSはIETF(インターネット技術タスクフォース)が策定する標準化規格。2014年に発見されたPOODLE脆弱性に対応するため、現在SSLからTLSへの置き換えが進んでいる 

 

さまざまな種類の暗号化

では、SSLの実際の働きを見てみよう。SSLを採用したWebサーバに利用者のWebブラウザから接続すると、通信相手と「暗号化」を開始するための手続きが行われる(03)。この暗号化によって、たとえデータの内容が途中から第三者によって覗かれたとしても、意味を読み取ることができない(解読するために天文学的な時間を要する)ため、安全に個人情報などのやりとりが行えるというわけだ。

暗号化の方式は利用目的によっていくつかあるが、一般的には暗号化するための鍵と解読(復号化)するための鍵が異なる「公開鍵暗号」方式を用いて通信相手を認証する。さらに、暗号化と復号化に同一の鍵を使用する「共通鍵」を生成することで、お互いに送受信するデータを暗号化して安全に通信できる環境が整うわけだ。

 

03 暗号化通信って何をしているの?

SSLによる安全なセッションが確立するまでの模式図。実際にはもう少し複雑だが、基本的には「公開鍵」を利用者に送付し、お互いの通信で利用するための「共有鍵」を生成して、安全な送受信を確立する

 

これだけ聞くと非常に複雑なやりとりをしていて、暗号化にはサーバもクライアントも処理能力が高くないといけないのではないかと思うかもしれない。しかし、セキュリティ専門家の園田道夫氏によると、実際には数学の理論を応用して処理の負荷が高まらないような工夫がされており、最近のWebサーバやデバイスであれば処理能力の面で問題になることはないという。もしWebサイト運営者として自社サーバの負荷が心配であれば、レンタルサーバのVPS(仮想専用サーバ)を使うという選択肢もあるという。

SSLの暗号化の基礎を理解したら、次は「認証」の機能について見ていこう。

 

 

04 SSLに対応するWebブラウザは?

SSL はPC やモバイル版も含め、現状のほとんどのWeb ブラウザでサポートされている。ただし、TLS での接続に関してはInternet Explorer の古いバージョンなどの一部では設定を利用者側で変更しなければならない場合もある

 

05 暗号通信していればもう安心なの?

SSLを使うライブラリ「OpenSSL」に、サーバから個人情報などが漏えいする深刻なバグが発見されたため対策は必須。この問題への警鐘として「Heartbleed(心臓出血)」というショッキングな命名がなされ、啓蒙のために左のようなロゴがつくられた。Webサイト運営者はこうしたセキュリティの動向に対してもキャッチアップしていく必要がある

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