Web時代の職人クリエイター集団「RIDE MEDIA&DESIGN」

Webメディア『箱庭』から漂うセンスの良さとメディアへの愛情

「Webメディアを立ち上げる! ターゲットは20代女性! 美容とファッションの記事を出せ! ライター確保! PVをむしり獲れ! SEOを死守しろー!!」‥‥そんな切羽詰まったWebメディア戦国時代。似たり寄ったりのコンテンツで、拡散狙いのアイキャッチ。うーん、嫌気がさしてしまう! という中で、「あ、これは本当に好きな人がやってるな」というメディアがある。中の人の愛情がとくとくと注がれていて、見ているこちらまで笑顔になってしまう。それが、女子クリエイターのためのライフスタイルつくりマガジン『箱庭』だ。取り扱うジャンルは、アート、デザイン、カメラ、DIY‥‥。そのテンポ感たるや、なんともユルい。自分たちのペースで、好きな情報をセンスの良いアイキャッチ画像とともに発信している。

そんなマイペース進行であるのに、コアなファンを集めてワークショップを開催し、書籍を出版し、シェアハウスまで運営しはじめた。好きこそモノの上手なれというか。これは間違いなく「ニッチメディアの横展開成功」例である。

さてさて、このWebメディア。どんな会社が運営しているのか? その名も、「RIDE MEDIA & DESIGN」。

ご存じだろうか? もしかすると、本誌読者の中には知らない方も多いかもしれない。だって彼らは、広告賞の文脈にも、スタートアップの文脈にも立ち入らない。ファッションに根ざし、カウンターカルチャーを愛して、コーヒースタンドまでオープンさせてしまっているクリエイティブ集団だ。

代表の国府田さん、副社長の酒井さん、取締役の斉藤さんにお話を伺った。

 

Company Profile

RIDE MEDIA&DESIGN(株)

組織形態:株式会社

資本金:3,000万円

事業内容:ITクリエイティブ事業(Web制作、システム構築、Eコマース)、メディアコンテンツ事業(メディア制作、コンテンツマーケティング)、ライフスタイル事業(自社メディア「箱庭」、「ABOUT LIFE COFFEE BREWERS」、佐々木俊尚「LIFE MAKERS」、インフルエンサーマーケティング「THE WAVE」の運営)

スタッフ数:56名(2015年11月現在)

設立:2006年8月

 

国府田淳 Atsushi Koda

ファウンダー&CEO

アパレル、ファッション誌の編集、Webディレクターを経て、2006年にRIDE MEDIA&DESIGN(株)を設立。Web&メディアディレクション、編集&ライティング、コミュニティ運営、有名人のインタビューワークなど、職種に捉われないクリエイターとして活動している。

酒井新悟 Shingo Sakai

COO

グラビア、エンタメ、ファッション誌の編集を経て、RIDE MEDIA&DESIGN(株)設立に参画。2年前からは本格的に企業の課題に応えるコンテンツマーケティングを伴ったプランニングをメインに活動している。

斉藤裕介 Yusuke Saito

取締役/クリエイティブ事業本部長

アパレルブランドにてECマネージャーなどを経て、2006年にRIDE MEDIA&DESIGN(株)創業メンバーとして参画。現在は、クリエイティブとマーケティングを中心にアパレルブランドやWebのプロデュースを行う。

 

個性が主体になる時代だからこそ大事になるスタッフのチカラ

 

ーーみなさんは創業メンバーなんですよね。当時のことを教えてください。

国府田:2006年のことですね。各々がフリーとして仕事をする選択肢もありましたが、みんなで集まった方がもっと面白くなるだろうと思って、メディアを作る人、Webの人、デザイナーが集まって会社を作りました。当時、その3つを一緒にできる会社って少なかったんですよね。だから特徴が伝わりやすいように、RIDE MEDIA&DESIGNという社名にしたんです。長いですけど(笑)。

ーー確かにわかりやすいです。「Webの人」として参加されたのは斉藤さんですよね。前職はWeb制作会社に?

斉藤:いや、僕はもともとアパレル業界でEコマースを運営していました。プログラミング等はずっと好きでやっていたんです。だから今も、関わる案件にはWebディレクター兼MDとして入ることが多いですね。たとえば、限定ジャケットを企画提案したりと。

ーーマーチャンダイザーってヤツですか?MDとWeb職を兼任してる人、初めて出会いました。他にも、デザイナーの東出さんが『箱庭』の編集長に抜擢されたり、スタッフ個々の能力がそのまま仕事に直結しているように思います。

国府田:これからは大きな組織よりも個性が主体になる時代ですから、個人が熱量を傾けられるモノとコトに対して、そのまま仕事へとつなげられるようにしてほしいんです。

 

OFFICE & PEOPLE

陽の光が差し込むオープンな雰囲気のクリエイティブラボ。

風通しの良さをそのまま表したような空間でした

 

 

 

ーー素晴らしいですね! でも、全員が個性を輝かせることなんてできるんでしょうか? ぶっちゃけ「みんなの輝きを陰ながら支えてる稼ぎ役のエンジニアさん」もいらっしゃるのでは?

国府田:(笑)。そういう出向型のお仕事のご相談はありますね。でも、お断りしています! いや、正直いうと僕は引き受けそうになるんですけど、斉藤が止めてくれるんですよ。

斉藤:売上のためだけに、社員を犠牲にはしたくないし、犠牲にはできないですからね。

酒井:役員が3人いると、抑止力が働くというか。会社を持続させていくための、客観的な判断ができるんです。

ーー絶妙なバランスですね。あとRIDEさんは、渋谷にすごくお洒落なコーヒースタンドを開いていますよね。どうして突然コーヒーを?

国府田:7年前に新規事業の会議をしていた時に、斉藤がアメリカのコーヒー事情について話してくれたんです。当時はスペシャルティコーヒーなんて言葉も知らなかったから「これからはコーヒーだ」と言われても最初はピンと来なかったんですけど‥‥。僕らは音楽やファッションから生まれるカウンターカルチャーで育ってきて、次のシーンは何が主役になるか、というのを常に探しています。そんな中、コーヒーの刺青を入れるくらいコーヒーを愛している坂尾くんという男に出会って。彼と話をする中で「これはカウンターカルチャーの精神だ!」と感動し、1年半前に彼と一緒に「ABOUT LIFE COFFEE BREWERS」を立ち上げたんです。

ーー道玄坂上のおしゃれスポットに、そんな裏話があったとは。最後に、これからの展望は?

国府田:RIDEは独自のスタイルを貫いてきたので、それが続かなかったらもう、カッコ悪くて仕方ないです。だから持続可能な組織でいられるよう、オルタナティブな精神でやっていきたいですね。あくまで地道に‥‥。そして今は、海外の展開にも力を入れています。僕らが好きなものが日本ではマイノリティだとしても、世界に出たら仲間が沢山いて、マジョリティになり得ます。だから国内に終始せず、世界が唸るクリエイティブを作っていきたい、という気持ちです。

 

 
 

 

CREATIVE

RIDE MEDIA&DESIGNだからこそ実現できる、作品を紹介します

EASTPAK日本公式サイト

世界的なライフスタイルバッグブランド「イーストパック」の日本公式サイト。「ブランド情報」「通販」に加えて高感度層に向けて発信される「オウンドメディア」の3つを主軸としたWebプロジェクト。ハイクオリティなビジュアルをはじめ、オウンドメディアの「BAG’S LIFE」(http://bagslife.jp/)ではすべての記事を同社で制作。商品ラインナップや販売戦略などのMD部分も含め、ブランディングを意識したコンセプトメイクから携わっている

 

CONVERSE – JACK PURCELL 80周年特設サイト –

コンバースを代表するスニーカー「JACK PURCELL」の80周年記念特設サイト。「80周年記念ビジュアル」として、コスチュームアーティスト・ひびのこづえ氏によるセレモニーウェアを展開したほか、メモリアルイベントも開催するなど、新作ジャックパーセルの世界観をアーティスティックに表現。Webサイトでは、セレモニーウェアと新作ジャックパーセルを360度で閲覧できるなど、ファンならずとも魅了するコンテンツを作り上げた

 

アマノ食堂

フリーズドライを中心とした乾燥食品を製造、販売する天野実業(株)のオウンドメディア。「おいしい食・人・暮らしのあれこれが集まる場所」をコンセプトに、ユーザーにとってためになる、楽しくなるような食生活に役立つ情報を提供している。旬の食材の歴史・調理方法・生産者インタビュー、アマノフーズスタッフによる連載などバラエティに富んだ記事を月20本程度配信。編集力に裏打ちされた記事の数々は、読み応え十分な内容となっている

 

箱庭

同社のWebクリエイターが「なんかいいな」と思うものを発信することから始まった、女子クリエイターのための“ライフスタイルつくり”マガジン。「自分たちが一番の読者である」という視点で掲載される記事は、他のメディアにはない「箱庭らしい」と形容したくなるようなユニークで雰囲気のあるものばかり。ワークショップを開催するなど、クリエイターを繋ぐハブ的な役割も担った価値あるWebメディア

 

◎取材後記 RIDE MEDIA&DESIGNは、Web時代の職人クリエイター集団!

魂を売らず、愛をこめて、カルチャーを生み出しているRIDE MEDIA&DESIGN。とても豊かな空気が流れる人たち。なんと魅力的なのでしょうか。ちなみに『箱庭』には、私が寄稿させてもらった漫画家・安野モヨコさんのインタビューも掲載中なのです。女子クリエイターに向けた言葉を書きました。良かったら「安野モヨコ 箱庭」で検索して、見てみてください!

 

 

Text:塩谷舞(しおたん)
1988年大阪生まれ、京都市立芸大卒。PRプランナー/Web編集者。(株)CINRAにてWebディレクターとして大手クライアントのコーポレートサイトやメディアサイトなどを担当。その後、広報を経てフリーランスへ。お菓子のスタートアップBAKEのオウンドメディア「THE BAKE MAGAZINE」の編集長を務めたり、アートに特化したハッカソン「Art Hack Day」の広報を担当したり、幅広く活躍中。 ciotan blog:http://ciotan.com/ Twitter:@ciotan
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