キーワード02「シェア」:IoTが拓く「シェアリングエコノミー」●特集「IoTの現在」

東京都千代田区で実証実験中の「ちよくる」。区内の約50カ所にサイクルポートが設置されており、自由に自転車を借りることができる。真っ赤な電動アシスト自転車が印象的だ。「ちよくる」という愛称と、自転車のカラーリングは、公募で決められた

「コミュニティサイクル」という新しい形

「貸し自転車」といえば、観光地などで提供されているものを思い浮かべる人が多いかもしれない。今、都市の新たな交通手段として、それとはまったく違う「コミュニティサイクル」という「自転車を共有する」実験が始まっている。厳密な定義があるわけではないが、コミュニティサイクルとは「一定の地域内に複数配置されたステーションで自由に貸出・返却できる貸し自転車で、借りたステーションとは異なるステーションに返却することが可能なシステム」などとされており、世界各国で導入されている。

現在、東京・千代田区、港区などで実証実験が行われているのは、(株)NTTドコモが開発したシステムだ。このシステムでは、自転車本体が通信機能を持っていることが大きな特徴だ。電動アシスト自転車に、GPS機能や遠隔制御機能(貸し出し・返却管理やバッテリの残量把握)などを搭載しており、自転車のさまざまな情報をリアルタイムに把握できる。これは、まさにIoTだ。運営側は効率的な自転車の配置やメンテナンスの時期が把握でき、ユーザー側は利用可能な自転車がどこにあるかを携帯電話やWebサイトで確認して、予約もできる。また、これらの情報を蓄積し、交通状況を分析していくことも予定されている。

SuicaなどのICカードを自転車のリーダーにかざすことで貸し出しや返却が可能だ

自転車本体にはカードリーダーが設置されていて、ICカードやスマートフォンをかざすことで、貸し出しや返却、決済が可能になっている。そのため、従来はサイクルポートごとに必要だった登録機の設置が不要となり、自転車を置く場所さえあればシステムの導入が可能になった。これが実現できたのは、通信技術の発達によるところが大きい。なぜNTTドコモが「シェアサイクル」を開発したかという理由も通信の活用にある。このように、従来の仕組みとインターネットを結び付けることで、新しい価値を創造できそうなモデルは、あらゆるところにある。

利用登録はWebサイトから行うが、このような登録機も数カ所に設置されており、外出先で登録することもできる

インターネットが可能にした個人間カーシェアリング

DeNAの「Anyca」(エニカ)は、個人間でのカーシェアリングを実現したサービスだ。個人間カーシェアリングは、国内ではさまざまな障壁があって参入が難しかった。

Anyca

OBD2コネクタで自動車に設置して、物理的な鍵の受け渡しを不要にするスマートキーデバイスの投入も間近だ(右)。写真のスマートキーデバイスは開発中のもの

Anycaでは、自動車オーナーおよび利用者の登録からシェアのやり取りまで、すべてがスマートフォンアプリで完結している。現在は、シェア当日に必ず顔を合わせて鍵の受け渡しを行う必要があるが、今後は、自動車に搭載して鍵と連動させることで、その手間がなくなる「スマートキーデバイス」の投入が予定されている。つまり、IoTによって、本当にアプリだけで完結できるようになるのだ。

 

「鍵」をシェアして集中管理するスマートロックという仕組み

「Akerun(アケルン)」は、後付型のスマートロックデバイスだ。これは、ドアの室内側の鍵のツマミ(サムターン)に取り付けて、スマートフォンなどから鍵の施錠をコントロールするものだ。物理的な鍵が電子操作できることになり、ネットワークから鍵の状態を把握したり、遠隔操作をすることも可能になる。

Akerun

既存の鍵のサムターン(ツマミ)にかぶせて設置する。ネットワークからの操作で、このデバイスが鍵を回す

また、物理的な鍵がなく、鍵権限の付与・回収が自由にできるため、数百人に鍵を配布したり、一時的な鍵を発行したりすることも可能だ。配布する鍵によって解錠できる時間やドアを指定するといったインテリジェントな管理ができるため、すでに、賃貸住宅の内覧用に一時的な鍵を発行するといった用途でも使われている。また、さまざまな職種の人が働く「場」を共有するコワーキングスペースや、民泊(空き家・空き部屋を使って利用者を泊めること)などで一時的に貸す部屋など、新しい「シェア」の形に活用できる。

ドアの外に設置して、スマホを近づけるだけでAkerunで施解錠できる「Akerun Touch」というオプション製品もある

同様のスマートロックはアメリカでは急速に普及が進んでおり、アイデア次第で、新たなシェアリングエコノミーのサービスを展開することができそうだ。

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