キーワード05「ロボット」:すべてのIoTは「ロボット」化する●特集「IoTの現在」

Palmi

「ロボットから話しかける」ことを実現しており、指示待ちのロボットと一線を画している。また、持ち主の顔を覚えたり、環境によって成長する方向が変わるなど、経験を積むほどにいろんな言動や行動を変えていくという「成長するロボット」だ

ロボットと人との接点

「ロボット」と言っても、人によってさまざまなイメージがあるだろう。アトムやガンダムといったヒューマノイド型のものが思い浮かぶかもしれないが、実は「センサー」「知能・制御」「駆動系」が備わっていればロボットであり、自動車、家電、携帯電話、住居など、多くのモノは「ロボット」と呼べるのだ。そして、それはとりもなおさず、IoTにほかならない。つまり、その形に関係なく、すべてのIoTはロボット化するといってよいだろう。

 

コミュニケーションロボット

たとえば、「Palmi」は音声認識と発音機能、顔認識などができるロボットだ。起動したばかりの状態ではPalmiは話す言葉も少なく、動作もぎこちないのだが、ユーザーとの対話によって成長する。最初は二足歩行もできないが、人とコミュニケーションことで、さまざまなことができるようになる。単なるおもちゃの域を越えた本格的なロボットでありながら、家庭内のIoTとして一つの形を提示している。

Musio

米国と韓国に拠点を置く企業AKA LLCが発売する、英語学習ロボット。AKAが開発した学習エンジン「Muse」を通して言語情報と画像情報を収集しながら、対話自体を学習していく。家庭内のIoTコントローラーとしても利用が想定されており、利用範囲は英語教育にとどまらない

「Musio」は英語の語学学習用に作られたロボットだが、内部にディープラーニングの機構を盛り込んだということで世界的にも話題となった。語学学習というと、ロボットが問題を出して、人が答えるという単純なものを思い浮かべるかもしれないが、Musioの場合は回答者の発音もネイティブスピーカーのそれと比較することで、正しい発音が身に付くような仕組みになっている。英語表現のパターンを学習サンプルとして用いていることから、発話者が間違った英語を話した場合には、Musioが正しい英語に言い直してくれるのだ。

 

MITメディアラボ発の家庭向け人工知能搭載ロボット

 

Jibo

米JIBO社が発表した、家庭用アシスタントロボットだ。カレンダー、出前の注文、写真やビデオの撮影、メールの送信や読み上げ、IoTコントローラー、子供の教育など、さまざまな機能が搭載される予定だ

米国・ボストンに拠点を置くJIBO社が開発した「JIBO」は、「一つ目小僧」のような風貌に反して、単なるコミュニケーションロボットに収まらない。MITメディアラボの准教授が中心となって開発しており、画像認識技術によって家族を認識し、音声認識技術によって人と会話を行う。画像と音声という入力情報を、内蔵された人工知能によって解釈し、人にさまざまな行動でフィードバックするのだ。

最大の特徴は、「一つ目」のディスプレイがロボットの表情も表しており、感情表現をすることだ。また、体が回転するように作られていて、いろんな角度に「振り向いて」人と対話する。このとき、その人を区別して、その内容を変えるのだ。現状では、指示したことを実行するというロボットが大半だが、JIBOの場合、「ロボットと人」ではなく、「ロボットと私」という関係が築けることになる。

ロボットが家庭に普及していくには、こういった「関係性」や「それに応じたコミュニケーション」が重要になってくる。

 

IoTとしてのロボット

IoTとしては、コンシューマー向けのロボットは「人との接点」であり、インターネットにおけるUX(ユーザー体験)を担うことになる。これまで、センシングした情報を人にフィードバックする部分としては、スマートフォンやPCが多かったのだが、IoTの世界での人へのフィードバックは必ずしもディスプレイとは限らない。音声であったり動きであったり、さまざまで、ある意味すべてのフィードバックはロボット的なもので行われるといってもよい。

したがって、今後は、ディスプレイに表示される内容やタッチのしやすさだけではなく、ダイレクトに「感じる」体験をどのように作りこんでいくかがポイントとなるだろう。

 

 

小泉耕二
IoT専門Webサイト「IoTNEWS」代表。(株)アールジーン代表取締役。IoTのインスピレーションをかき立て、仲間作りを促進するため、日夜さまざまなテーマで取材をしている。 https://iotnews.jp/
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