ど真ん中の商品訴求でビール・酒類商戦を勝ち抜く

 

前年比10%増、売上の加速に寄与

本施策「THE GOLD MISSION」は、サッポロビール(株)がコク系新ジャンルブランド「麦とホップ The gold」のWebキャンペーン施策として、2月前半と後半の二回にわたって展開。

01 麦とホップ「THE GOLD MISSION」について

サッポロビールの重点商品ブランドの一つであり、コク系新ジャンル(酒税法における「リキュール(発泡性)」に分類される酒類)「麦とホップ The gold」のリニューアル発売(2月2日)にあわせたデジタルプロモーション。クイズに答えると正解数に応じてプレゼント(抽選)がもらえるという施策で、屋外イベントによる話題化策も絡めながら、2月2日から15日までを第一弾、2月19日から3月3日までを第二弾としてそれぞれ公開した。

第一弾では2週間で約58万PVを達成。また、PR施策全体の成果にはなるものの、2月上旬の売上も前年比10%増を記録し、確実な結果も残している(01)。コミュニケーション全体としては、Webに限らずマス施策を中心に、リニューアル発売前後で膨大な広告量を投下。交通広告も積極的に行った。

「コク系新ジャンルブランドとしての価値向上を目的に、2016年2月2日のリニューアル発売日を目指して、PR戦略を練ってきました。大きな軸は、売上増という目的達成を通じて、これまでの愛飲者に商品の価値を再認識いただくこと。そのほか、20~30代にリーチしきれていないというブランドの課題を、PRとプロモーション全体で解消したいという狙いもありました」(サッポロビール・豊田崇文氏)

「若年層を中心とした、テレビCMではリーチしにくい層に届けることを意識してプロモーションを設計しました。特にWebキャンペーンの結果は顕著で、参加ユーザーのうち、多くの割合が若年層という結果が出ました」(読売広告社、以下読広・山本絵理香氏)

 

徹底した「商品ありき」の施策展開

コミュニケーション全体には、「MISSION」というキーワードを選択。表現において、麦とホップを通じて何かを企てていくというトーンを出しながら、各出稿先のタッチポイントの特性に合わせた最適化がなされたという。「クライアントのブランドの中でも、新規な取り組みにチャレンジしやすいブランド」(読広・外山毅氏)という考えのもと、PR・プロモーション全体に共通するのが、徹底して「商品ありき」を意識した仕上がりにすることだ(02)。

02 「麦とホップ The gold」全体のPR施策について

リニューアル発売時からテレビCMの放映をスタート。並行して各媒体に向けて広告出稿。Webキャンペーンも開始し、発売後初めての週末(2月6日、7日)に東京・渋谷パルコ前で屋外イベントも開催。「(麦とホップ)史上最大の麦芽量」など商品メッセージを含むブランド訴求を展開した

「大前提として、広告に接したすべての方々が“麦とホップの広告”とわかる施策にしたい。ほかにも、“(麦とホップ)史上最大の麦芽量”というキーワードを用意して、商品がリニューアルしたことを強く訴求したい。そうしたPRを通じて、お客様が店頭で麦とホップを想起しやすくしたかったのです」(豊田氏)

「ブランド名が残らない、ブランディングに寄与しないようなPRやプロモーション施策は求められていませんでした。接触した誰もが“麦とホップの広告だ”とわかる形、それでいて接触したくなるような状況をつくり出すことが、企画チームの使命でした」(読広・戸川進之介氏)

2月2日のリニューアル発売にあわせて展開されたWebキャンペーンや屋外イベントは、表現から仕組みまで、どの側面を取っても、商品ありきのスタンスを曲げずに企画された。

 

2週間で58万PVを達成した背景

ではWebキャンペーン「THE GOLD MISSION」は、いかに「麦とホップ」の施策であることを鮮明に打ち出しているのか。キャンペーンの内容としては、約900字の商品メッセージに隠れた謎の美女を見つけ出し、美女から出題されるクイズに答えていくというもの(03)。

03 継続的な再訪問を促す施策の仕組み

商品を説明した長いテキストに潜む謎の美女を、画面を拡大しながら探し、美女から出題されるクイズに3択で回答。全問正解までに50問で、しかも難問ぞろい。1日にトライできる回答数を25回と限定しつつ、FacebookやTwitterでシェアをすると回答数が増やせる仕組みにした(上限50回)。抽選で1名に100万円相当のQUOカードが当たるほか、正解数に応じたプレゼントも用意された

50問全問正解の中から抽選で1名に100万円相当のプレゼントや、正解数に応じたプレゼントを用意し、「広告への滞在」と「継続的な訪問」に狙いを定めた構成にしている。美女探しを通じて画面を拡大し、テキストに潜む商品名や“コク”などのキーワードも自然と目に入ってくるという設計は、ユーザーの操作に訴求要素を見事に絡めた仕上がりといえる。

「ユーザーと商品の関係を強固にするには、何度も体験したくなる仕組みが求められます。そこで、広告そのものをコンテンツにして、美女探しやクイズというゲーム性を盛り込みながら、広告への長期接触や継続的な訪問を促す仕組みを提供しました」(山本氏)

東京・渋谷パルコ前で行われた屋外イベントもしかり。目立つ装いも手伝って、イベントへの参加の有無を問わず、行き交う人々にとって目につく場(広告)になった(04)。

04 商品色が強い屋外イベントで行列。60分待ちも

東京・渋谷のパルコ前で開催された屋外イベントの総参加数は、2日間でのべ1,500人。スマートフォンから発する静電気に反応する「静電インク」によって特殊加工された大型ポスター(2.1×6メートル)に、(イベント用アプリにログインしてもらい)スマホをかざしながらアタリを探す。アタリだと商品3本、ハズレだと1本プレゼント。SNS上の情報拡散対策に専用ボードも用意された。GOLDを基調にした色は遠くからも目立ち、見た目の珍しさや宝探し的なわかりやすさも加わって、約60分待ちという行列も生んでいる

「Webキャンペーンの誘引策として、参加者には商品とともにリーフレットをお渡ししました。その週末は、明らかにPVがよかったです。こうした体験が多くの人の店頭想起につながればと期待しています」(読広・白石直己氏)

 

広告に長期接触を裏づける結果も獲得

THE GOLD MISSIONの第一弾がもたらした約58万というPVは、ユーザーの大半が若年層だったという属性分析も出ている。短期間で得た若年層中心のPVとして、豊田氏も一定の手応えを感じているという。また、ユーザーの訪問数をあらわす「セッション」数は約16.5万にのぼり、そのうちの約1万3,800セッションが10~30分という長期接触したユーザーであるという結果も出ている。

続く第二弾は、第一弾でファン化したユーザーに向けた施策として提供した(05)。

05 ヘビーユーザー向けに訴求した第二弾

2月19日から3月3日までは第二弾のWebキャンペーンを実施。仕組みはそのままに、プレゼントは抽選で1名に「麦とホップ」の発注専用携帯電話。第一弾のアタッシュケース入りQUOカード(100万円分)と比べると、限られたユーザーにしか響かないが、よりコアなファン層に絞った展開とした。クイズの難易度は、第一弾以上に難しい。3択という気軽さと当たり外れを繰り返しながら、“ついつい滞在している時間”を増やし、深いブランド体験につなげた

「限られた予算の中で、ファン向け施策が求められていました。そこで、第一弾でつくってきたシェアの仕組みを活用しながら、ファンを中心とした話題化を狙いました」(山本氏)

「こうした積み重ねによって、“次は何をする!?”という循環に発展させたかったのです」(白石氏)

1年の総売上目標数を達成するために、今回の追い風も後押しにしながら夏に向けて新施策も準備中と、最後に豊田氏は語った。本施策のような膨大な出稿量を実行できる企業は限られる。しかし、商品色を全面に出した広告でユーザーの長期接触や再訪問を引き出せるアイデアについては、参考にしたいところだ。

Interview with>> 上段左から、(株)読売広告社(以下、読広)山本絵理香氏、サッポロビール(株) ブランド戦略部 豊田崇文氏、読広 外山毅氏、下段左から読広 戸川進之介氏、読広 白石直己氏
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