
SNS × 動画マーケティングの現在
なぜSNS×動画に注目が集まるのか
「SNS上での動画視聴や、日常のコミュニケーション手段としての動画利用が急速に増えたことで、企業のマーケティング活動においてもSNS動画活用の需要が拡大しています」と語るのは、動画マーケティングに特化した情報を発信するWebメディア「movieTIMES」 を運営する瀧良太さん。
その背景として、スマートフォンやSNSアプリの普及、通信速度の向上、そして動画視聴メディアの増加により、いつでもどこでもスマートフォンで動画を視聴する習慣が広まっていることなどが挙げられるという。
すでに主要SNSも続々と動画機能を強化していて、スマートフォンでの動画視聴を加速させている。「各種調査データがこれを裏付けていて、 Facebookでの動画視聴時間のトータルが2016 年1月に1億時間を突破したことも公式に発表されてます。動画視聴のメインスクリーンがスマートフォンになる日もそう遠くないかもしれません」(瀧さん)
企業側もこうした動画視聴をめぐる変化を察知しており、日本より一歩先を行く米国のBtoB企業を対象に行った2016年の調査では、動画配信チャネルとして自社WebサイトよりもSNSを利用する率が上回っている。

米Regalix社がBtoB企業のマーケティング担当者に対して2016年に実施した動向調査では、動画配信チャネルとしてもっとも利用されているのが「SNS」という結果となった。SNSの価値の1つはその拡散性にあり、認知拡大という目的との相性が良いと考えられているのだろう ※State of B2B Video Marketing 2015を元に作図
従来は動画を制作したらとりあえずYouTubeにアップロードするという企業が大半だったが、各種SNSの動画機能が充実してきたことに加え、マーケティング予算が限られている企業でも少ない予算でスタート・運用でき、拡散性も期待できるSNS動画広告が普及してきたことの表れと言えるだろう。
クリエイティブ別の動画広告の効果

広告の配信タイプによって効果は大きく異なる。動画広告はクリエイティブの難易度は高いものの、伝えられる情報量や露出に対して得られるクリック率(CTR)は高いのでチャレンジする価値は高い。Digital Advertising Benchmarkレポートによると、通常のディスプレイバナー画像付きがPCで平均0.11%、モバイルで0.27%なのに対して、動画広告では0.42%と高CTRが得られた
SNSに限らず動画広告はクリエイティブ制作の難易度は高いものの、画像とテキストだけで構成されたPCのバナー広告よりも約4倍のクリック率という成果を上げた事例もある。もちろん業種によっても傾向が異なるが、動画広告と相性のよい業種のベスト3としては、①趣味系・興味系(CTR:0.82%)、②ショッピング系(0.67%)、③B2Bなどビジネス系(0.62%)が挙げられる(Digital Advertising Benchmark Report調べ)。
SNSユーザーから見た動画コンテンツ
さて、その一方でSNSの利用者は企業から発信されるコンテンツをどのように感じているのだろうか。動画、画像、テキスト、その他のコンテンツを比較した調査(The Science of Social Video調べ)では、もっとも好まれるのが「動画」 の31%であり、79%のSNSユーザーが企業やブランドを知るには動画がもっとも手軽で簡単だと回答した。
さらに同調査ではSNSでの動画視聴時間が昨年より長くなったと67%が回答しており、この傾向は今後も進むことが想定される。
また、米国での調査だが、どの動画メディアを好むかという設問に対してはYouTubeの50%とFacebookの36%が2強という結果となっている。
ほかには、SNS上での動画コンテンツ視聴が商品の購買の検討に影響を与えていると回答した人は74%、動画視聴後に実際の購買行動を起こした人は46%という興味深いデータもある。
ただし、自分との関連性が低いと感じるコンテンツや宣伝色が強いプッシュ型のコンテンツを視聴した後に購入意欲が下がったと答えた人も29%存在するため、動画コンテンツの内容によってはその企業やブランドの好意度を下げてしまう可能性がある。
「SNSでの動画広告が増加している一方で、戦略立案や効果検証の方法を模索している段階の企業が多いのも事実です。私たちも含めて多くの企業がそれぞれに経験を積み、より効果的な施策が展開されていくことを期待したいと思います」(宮下周子さん)
感情を動かす動画とSNSの相性は良好
動画マーケティングでSNSを積極的に活用するメリットとして瀧さんは上記の5つを挙げる。
「SNS×動画」5つのメリット

SNSの多くは動画コンテンツを共有し、拡散するのに適した仕組みを備えている。また、SNS運営側も動画コンテンツの時代を見据えてさまざまな新機能を投入している。将来的にフィードが動画で埋め尽くされる日が訪れるかもしれない
まず、多くのSNSはユーザー同士が投稿をシェアできる機能を備えており、コンテンツが拡散しやすい環境と言える。その中で特にシェアされやすいと言われるのが、「泣ける」「笑える」「すごい」といった“心を動かす”コンテンツだ。
もちろんテキストや静止画でも感情を揺さぶることは可能だが、情報伝達量が多い動画は特にその性質が強く、SNS でも拡散されやすいというわけだ。
さらに主要SNSでは、フィードやタイムライン内の動画は自動再生されるため、さまざまな投稿が並ぶ中でも動画は目を引きやすいという強みがある。最近は、画面占有率が高く、よりインパクトが強い縦型の動画に対応するSNSも増えており、動画の最初の1~2秒でユーザーの関心を引ければ、動画を視聴してもらえる可能性は高い。
また、ユーザー側の心理としても、何らかの情報を求めてSNSのフィードを眺めていることが多いため、YouTubeのような本編前に挿入されるインストリーム型広告と比較すると、企業による動画広告であっても比較的許容されやすいとも言われている。そうした意味においてもSNSと動画広告の相性は良好と言えそうだ。
効率的に動画が届くSNS特有の仕組み
広告配信におけるターゲティング精度の高さもSNSの魅力だ。アカウント開設時に登録した属性情報のほか、投稿内容やシェア・閲覧履歴などから割り出される興味ジャンルなどをもとに、きめ細かなターゲティング設定ができる。
またTwitter、Instagram、MixChannelといった一部のSNSでは、多くのフォロワーを抱える人気ユーザー(インフルエンサー)がいる。プロモーションやキャンペーンにこうしたインフルエンサーを起用し、彼らを通して商品の魅力を伝えることで訴求力をより高めることも可能だろう。
動画マーケティングに活用できる国内主要SNSの基本属性

5大SNSそれぞれの国内でのユーザー数とコアとなる年代、性別をSNS別にまとめてみた。それぞれに特色があるので、最適な配信先を選んでいく必要がある。各SNSの詳しい特徴については次ページより解説していく
※各社媒体資料などから調査
ライブ配信など新しい動画コミュニケーションも登場
そして近年のトレンドとしては「ライブ配信」の盛り上がりも見逃せない。主要SNSは軒並みライブ配信機能を実装しており、高額な撮影機材を用意しなくてスマートフォンだけで気軽に「生中継」できる。
ライブ配信は「今」起こっていることをリアルに伝えられるだけでなく、コメント機能を通してユーザーと双方向のコミュニケーションが図れ、従来の一方通行の動画配信よりも高いエンゲージメントを期待できる。活用シーンもさまざまで、イベントや試合の中継、新製品発表、セミナーやカスタマーサポートなどで用いられるケースがすでに登場している。
「すべてのSNSは今後も動画に関連する機能をさらに強化していくことは間違いありません。新機能や仕様変更のニュースも毎月のように流れてきますので、乗り遅れないよう、最新情報をキャッチアップすることが大切です」(瀧さん)
企業がSNSで公式アカウントを開設するのは珍しくなくなったが、さらにその先を見据えて今からSNSでの動画活用に慣れておくことが担当者にとって必要なことなのは間違いないだろう。ここからは、動画コンテンツと特に相性がよい国内主要SNSについて、さらに詳しく見ていくことにする。

- 教えてくれたのは… 瀧良太
- (株)LOCUS 代表取締役。社長業に加え、クライアントの動画マーケティング支援、「movieTIMES」編集長、セミナー講師など、新たな動画ビジネスの創造に最前線で携わっている。

- 教えてくれたのは… 宮下周子
- (株)LOCUS 経営企画室「movieTIMES」編集部。movieTIMESとしてマーケター視点に立った動画マーケティング情報の発信に取り組む。海外の動画マーケティング動向にも精通。