はちえん先生直伝! 動画マーケティング成功術

動画マーケに取り組む前に誤った思い込みを捨てよ!

動画が大きな注目を集める今、 大企業は動画マーケティングに膨大な予算を割くと聞く。そんな話を耳にすると、中小企業は「予算も技術もないウチには無理」と諦め気分になるというもの。しかし! それは大きな勘違いだと断言したい。なぜなら、私がお手伝いをしている企業・店舗には「スマホ1台、予算0円」で自前で動画を制作し、売上を飛躍的に伸ばしているところがいくらでもあるからだ。では彼らのように成功するには何をすべきなのか。私はまず、2つの「思い込み」を是正すべきと考える。

間違った思い込みの一つは「大事なのは編集だ」というもの。予算が少ない企業に限って、テレビ番組のように編集された動画こそがいい動画だと信じ込んでいるがそれは違う! きれいで豪華な動画をつくっても、パンフレットを動画に焼き直したような内容では見る人の心には響かない。その一方で、動画の撮影や編集は素人レベルでも、その話し方や振る舞いに情熱やお客様への感謝が溢れ、わかりやすい商品の使い方や的確なアドバイスが盛り込まれていれば、必ず顧客はついてくる。「売れる動画」とは、顧客の心の琴線に触れる、“本質”を満たすものを言うのだ。

 

スマホ1台でいますぐ始められる動画マーケ

もう一つの思い込みは「機材がないから動画が撮れない」というもの。確かに数年前まで、動画制作は高性能なPC、高価な編集ソフトが必要な、プロ領域の作業だった。だが、今はスマホ1台あれば十分な画質での撮影、そしてプロ風の編集まで、簡単にできてしまう。

私が特におススメするのは、iPhoneやiPadで使える動画編集アプリ「iMovie」。私はこれまでiMovieを使った動画制作を、アナログ世代の中高年層を含む総計3,000人以上に講義してきたが、1人の脱落者もなく、全員が動画を完成させている。子どもからお年寄りまで、誰でも動画はつくれるのだ。

さてここからは「売れる動画」の9要素を、事例と合わせて紹介する。当該店の動画を視聴した上で解説を読み、自前動画マーケティング成功の秘訣を「体感」として吸収してほしい。

 

[秘伝その1]

動画で大事なのは編集ではない! 顔出しで「本当に大事なこと」を語れ

 

ぴあの屋ドットコムチャンネル

※YouTubeで「ぴあの屋ドットコム」で検索

動画には、綺麗な編集が必須…そんな思い込みを打ち砕くのは京都の「ぴあの屋ドットコム」の動画だ。同店は動画を活用し、中古ピアノを1年で1億3,000万円も売る中古楽器業界の有名店。なぜ、数十万~数百万円もする中古ピアノが、実物に触れることのできないネット販売でそこまで売れるのか? 私はその理由を「編集ではなく本質にこだわっている」ことと、社長の石山雅雄さん自らが「顔出しで登場」しているところにあると見ている。動画内での石山社長は、見る人を笑顔にさせる軽妙かつ暖かいトークで、傷や使い具合などを含めた中古ピアノの状態を嘘偽りなくレポート。そして顧客が知りたいピアノの音色は試奏でじっくりと聴かせる。撮り直し・編集なしの一発撮り、素人感が満載の動画だが、大事な要素を顔出しして語る様子に見る側は引き込まれる。石山社長は、取り扱うピアノは必ず動画を投稿している。その累計は4,000本以上! 圧倒的だ。「動画で売る」には編集にはこだわらなくてもいい。それよりも、お客様を楽しませ、知りたいことを、自分の顔で語るのだ。

 

[秘伝その2]

大成功間違いなしの動画1,000本! まずは文句を言わずに100本を目指せ

 

ファクトリーギア豊橋店

※YouTubeで「 澤山哲也FG」で検索

動画を活用して成功している事業所には、ある共通点がある。それは投稿本数が1,000本を超えていることだ。

では、なぜ多くの動画をYouTubeにアップすると、売り上げが上がるのだろうか。その理由は「Youtube動画が比較的検索に有利」だからだ。動画をアップした翌日にはそれが検索上位に表示されるケースも多い。となれば、動画をアップする回数が多くなれば、そのぶんだけ検索から流入する顧客が増えるということになる。

とはいえ、いきなり1,000本はさすがにハードルが高い。ならば、まずは100本が目標だ。総再生回数100万回を超える、工具業界の人気YouTuber、ファクトリーギア豊橋店の澤山哲也店長はこう話す。「100本を超えると、お客様から『YouTube、見てますよ』と言われる。200本を超えると、『YouTube、勉強になります』と言われる」

顧客からの反応がポツポツと現れる100本。そこから本数を重ねると、業界のプロとして注目され、澤山店長のように県外からファンがお店に駆けつけるようになる。まずは100本を目指そう!

 

[秘伝その3]

「現場まる見せ動画」で顧客の安心感を勝ち取ろう!

 

タイヤショップ いなり大垣「inariogaki」

※YouTubeで「inariogaki」で検索

ホームページを見て発注を迷っているお客さん。記載されている内容には納得しているものの、なにしろ初めて取り引きする会社なので、書かれているとおりにきちんと仕事をしてくるれのか不安で決断できない…。

そんな課題をクリアするのが、「現場を見せる」動画だ。ここで紹介するのは、岐阜県大垣市のタイヤショップ、いなり大垣の近澤親一社長の作業の様子を撮影した動画。技術のある店員が、しっかりと作業をしている現場を見れば、顧客は安心してお願いできると確信できるだろう。

でも何を見せればいいの? そう思ったあなた。会社や店舗で毎日行っている、当たり前すぎて、あえて見せる価値を感じないような日常の業務を見せればいい。そこにこそ、顧客が求める価値があるからだ。外の人間は仕事の姿をまったく知らないし、イメージすることもできない。この「ギャップ」を埋めることが、信頼を生み、売り上げにつながるのだ。毎日の業務やサービスに取り組む姿をそのまま動画にする。それだけで顧客の不安は解消できるのだ。

 

[秘伝その4]

顧客の信頼を勝ち取る必殺技。「タイムラプス」で仕事全部見せ!

 

美容室 ワイルア

※YouTubeで「 美容室ワイルア」で検索

商品・サービスを高く売るには、ストーリーが大切だと言われる。そのストーリーを構成する要素の一つが、完成までの「工程」だ。商品やサービスが、プロの卓越した技術でどのようにして完成していくのか。その本質は写真と文章だけでは決して伝えきれないものだ。

となると、ココこそ動画の出番ということになるのだが、何時間もかかる工程をそのまま動画にして公開しても、長すぎて誰にも見てもらえない。

そこで活躍するのが、コマ送り形式の早送り動画「タイムラプス」だ。例えば10秒おき、30秒おきと時間を空けて連続でシャッターを切るため、長時間の工程を数十秒、数分で見せることができる。

東京の美容室、ワイルアの藤川隆之さんの動画は、カットからトリートメントまでの工程をタイムラプスで30秒に圧縮し、そのすべてを公開している。その結果、高い技術に信頼感を抱いた顧客が続々と来店する人気美容室になった。タイムラプス動画はいろいろなアプリで撮影可能だが、筆者は「Hyperlapse from Instagram」を使っている。操作も簡単で効果大。ぜひ、試してほしい。

 

[秘伝その5]

初めてのお客様に向けた「店内案内動画」をつくってみよう

 

三喜屋靴店

※YouTubeで「 三喜屋靴店チャンネル」で検索

「どんなお店なのか顧客に知ってほしい。見学だけでも構わないから来店してほしい」

たとえ店がそんなふうに思っても、お客様はそう簡単には来店してくれないものだ。特に小さな店舗の場合、店員と1対1の状況になりやすいため、声をかけられて見学だけで帰れなくなるのでは…などと警戒する人も少なくないだろう。興味があるのになかなか来店につながらない。そんな課題をクリアするのが、「店内案内動画」だ。

岐阜で三喜屋靴店を運営する宮木良朗・桂子夫妻は、「初めてのお客様」に向けた動画で、ていねいな挨拶に始まり、ゆっくりと店内を案内していく。動画ではその様子だけでなく、その雰囲気をきちんと映すから、顧客はスマホの小さな画面からでも、店内の様子だけでなく、二人の人柄まで見てとるだろう。これが決め手となって、遠く県外からも靴を作りに顧客が訪れるという。

店内案内の動画は、実際にお店を訪れた気になってもらうことが大事。大事なお客様が来店したというイメージで撮影したい。

 

[秘伝その6]

リピート率向上も! 商品の説明書は「トリセツ動画付き」で配布しよう

 

花創人ガーデニング教室

※YouTubeで「 はなそうにん」で検索

商品の使い方がわかるはずの取扱説明書。それがわかりにくいと、不満はより大きくなる。あなたの扱う商品やサービスの取扱説明書はどうだろう。不満を感じている顧客がいる可能性があるならば、「取扱説明動画」でクリアしよう。

ここで紹介するのは総再生回数100万回を超える、園芸界の人気YouTuber、花創人ガーデニング教室の尾関純子先生の動画だ。尾関さんは「ふわふわアート水苔」という、自社商品の扱い方を実演形式の動画で解説。動画のURLを商品ラベルにQRコードで貼り付けている。購入者はスマホで動画を見ながら作業ができるというわけだ。写真と文章では断片的になりがちな情報も、最初から完成まで連続で見られるため、理解しやすいのも当然だ。

正確に扱うことで初めてメリットを享受できる商品などは特に、この取説動画を使うメリットは大きい。さらに、解説する「人」のキャラクターに触れることで、その会社そのもののファンになるという二次的効果もある。お客様の不満を防ぐ以上の効果が得られる説明書動画。ぜひ、活用してみよう。

 

[秘伝その7]

“次の顧客”の心をワシ掴みにする魔法の「お客様の声」動画

 

東伊豆北川温泉 星ホテル

※YouTubeで「星ホテル」で検索

顧客の心を、たった1本でワシ掴みできる…そんな魔法の動画が、「顧客の声」動画だ。その事例として紹介するのが、静岡の東伊豆北川温泉、星ホテルの石原万里子社長の動画。その内容は、日帰り・宿泊に来館いただいた顧客に、その感想をインタビューするというもの。ここで実験! まずは下で紹介しているチャンネルから、動画をご視聴いただきたい。そのうえで質問。この動画を見て、星ホテルをどんなホテルだと感じる? おそらくは“顧客の笑顔”から、少なからず好印象を抱いたのではないだろうか。ここに重要な事実が一つある。それは、わずか数分前までその存在すら知らなかったホテルを、今のあなたは「なかなか良さそうだ」と認識しているということ。これが動画の威力だ。

しかも、近隣の同種施設のホームページで、顧客の声を動画として配信しているライバルは見当たらない。つまり、ネット上で他ホテルとの比較された場合に、この動画が、利用を決断するための大きな要因となり得るのだ。効果抜群の「顧客の声動画」は、真っ先に取り組むべき動画なのだ。

 

[秘伝その8]

これは裏技! 効果抜群 お客様の声の「読み上げ動画」

 

タレパン工房 株式会社丹羽シートメタル

※YouTubeで「タレパン工房」で検索

秘伝その7で紹介した「お客様の声動画」の効果は抜群なのだが、お客様に出演してもらいにくい業種もあるだろう。出演をためらうようなコンプレックス型の業種、あるいはECサイトなども簡単には動画は撮れないだろう。それでも「お客様の声動画」 を使いたいという場合は、「読み上げ式」で顧客の声を紹介するというアイデア系の裏技がある。

犬用のステンレス製トイレトレイを製作・ネット販売している丹羽シートメタルの丹羽英晶社長の動画がそれ。丹羽さんが顧客からのアンケートを読み上げることで顧客の満足度を伝えることに成功している。ここでポイントとなるのが、真面目な人柄が伝わる一生懸命な話しぶり。こうした様子から、顧客と向かい合う姿勢や、ものづくりへの思いを汲み取る顧客が多いのだ。

こうした動画の効果もあって、丹羽シートメタルは客単価4万円以上の商品を年間100台以上も販売している。

顧客の出演が難しくても、アンケートであれば回収できるというケースはある。あとは感謝の気持ちをもって読みあげる。必ずや伝わる動画になるだろう。

 

[秘伝その9]最後の手段はこれ!  連日放送の「テレビ番組」(風)で奇跡を起こせ

 

広島手芸雑貨店 れちぇ

※YouTubeで「れちぇ」で検索

はっきり言いますが、YouTubeに動画をポツポツと投稿する程度では再生回数は上がらないし、ファンも増えない。しかし、連日放送する「テレビ番組」を作るくらいの気概で臨めば、素人でも奇跡的な成功がも可能だ。

ここで紹介するのは、手芸業界の人気YouTuber、広島手芸雑貨店れちぇの向井田奈津子店長の動画。向井田さんは、れちぇで取り扱う手芸パーツを使って、毎日一つの手芸作品を手づくりする「ワンデイワンハンドメイド」、略して「ワンハン」という動画を連日公開している。これが人気で、チャンネル登録者は1万7,000人、再生回数400万回。店の売上はなんと4倍に成長!

ポイントは、①自分の顧客が興味を持つテーマで企画を立て、②動画は数分の見やすい尺に、③定期的に配信し続けること。参考にしたいのは「キューピー3分間クッキング」。顧客が思わず見たくなる、わかりやすい企画、タイトルが重要だ。

YouTubeチャンネルを大きく育てたいのであれば、「自社のテレビ番組」をYouTubeで構築しよう。

 

 
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