[akippa]差別化の鍵は“人間味”

熱いファンが導いたアンバサダー制度

空き駐車場や個人宅の駐車場をスマートフォンで手軽にシェアできる「akippa」。駐車場不足の問題を、簡単で安価に予約できる仕組みで解決した駐車場サービスだ。2014年スタートながら全国に8,300拠点(2016年12月時点)を有し、コインパーキング業界3位に食い込む急成長を遂げている。そんな同社が、よりakippaサービスに対して熱い想いを抱いているユーザーを中心にアンバサダーの発掘と育成を始めている。

駐車場版シェアリングエコノミー

個人や組織が所有する資産を一部貸し出して他人と共有し、対価を得る「シェアリングエコノミー」の仕組みを活用した駐車場予約サービス。全国の空いている月極や個人の駐車場をスマホ片手に簡単にシェアできることから、現在急成長を遂げている

利用者数は2年で急激な伸び

2年で個人利用者数45倍の伸びを見せる。DeNAやトヨタ系ファウンドなどからの出資、外部からの人材強化により今後ますますの飛躍が見込まれる

駐車場シェアでは他の追随を許さない

他の駐車場シェアサービスと比べても、2位に4倍差をつけ断トツの1位だ

これまでのユーザーとのコミュニケーションでは、TwitterとFacebookを利用してきたakippa。そこから新たにアンバサダー制度を立ち上げるきっかけとなったのが、駐車場オーナー・利用者向け交流会(オフ会)の開催だ。直に顧客と接する営業担当やサポート担当のみならず、会社全体で利用者と交流する中で、毎回相当数の好評価や改善要望が集まっていた。オフ会や公式Twitterアカウント運営など、アンバサダー関連業務を担当する藤野佳那子さんは語る。

「こうした機会があれば次もぜひ関わりたい、と大変な熱量でご意見をくださる方がたくさんいらっしゃいました。そんな方々の思いに応えるには、ご指摘内容の改善報告などを行える場が必要だと。そこで距離感が密になる承認制非公開Facebookページを立ち上げました」

積極的なファンの存在、そしてFacebookページに滲む愛着心に対し、社内からもサービスを差別化する上での強みになるのではとの意見が出ていた。彼らの口コミがサービスを広げ、彼らが持つコミュニティが新たなオーナーを発掘してくれる可能性もある。営業施策とは別軸で、拠点を増やす方法が生み出せるのではないかとの予測もできた。そこで生まれたのがアンバサダー制度というわけだ。大まかには、任意参加のオフ会にて承認型非公開Facebookページを告知、参加したユーザーの反応や行動などの対応を基準に認定するといった流れになる。現在、その第一段階となるFacebookページへの参加者は40人ほど。土地や駐車場所有者のため世代は40~50代と高めだ。

「まだ選定中ですが、理想は『熱いアクションやフィードバックを返してくれそうなファン代表の発掘』です。ゆくゆくは利用者代表としてakippaの上層部や社員とともにサービス向上のための討論会に参加いただき、ユーザーさん全体に還元していくことが目標です」

投稿へのコメント数、利用者としての貸出・借入回数、保守管理面やサービス面での改善点などの提案、駐車場レビューの内容と選定基準項目は多岐に渡る。

「例えば、オーナーグループの全国集会を開いた時に代表として壇上で話していただけるようなロールモデルになってほしいのです。新人のオーナーさんがその人を目標にして、『自分もサービスを盛り立てていきたい』と思わせる存在というか。ですから、サービスの仕組みや機能のみならず社員についても熟知したご意見番的存在とも言えますね。賃貸の先輩として社外視点でお話できる方が発掘できたら、広報チームとも異なる広報活動ができると思います」

詳細は未定だが、年に一度「熱い想いを持ったアンバサダー」として表彰し認定する計画もある。彼らを筆頭に顧客エンゲージメント向上を図り、意見などをサービス向上に活かし、ユーザーに還元するサイクルをつくりたいという。

 

Twitterでのエンゲージメント強化

一方、既存ユーザーの定着と平行して潜在ファンの発掘を進めるのが、2016年8月からスタートしたTwitterのakippa公式アカウントだ。フランクな「軟式アカウント」スタイルでサービスの魅力を伝え、認知度向上やユーザー層拡大の役割を担う。

「akippaを知らない人、名前は聞いたことがあるというレベルの人たちとも交流したいと考え、広報アカウントとは別で開設しました。フランクな空間で放たれる個人的なツイートには、時にサービス改善にも関わる重要な何かが現れます。その本音を随時拾って対応し、集約して社内共有することで活かしていければと思います」

現在フォロワーは780人弱。ネット民の気持ちを汲んだ関西式のゆるいカラミ方で、ジワジワと人気を広げている。

関西ノリの“軟式”ツイート

Twitterでのコミュニケーション例。利用者のツイートに重ねた自演タイプでは、「白々しくも憎めない」トーンを意識する

「広報やマーケターと違い固定の役割があるわけではないので、双方の“いいトコどり”ができたらと思います。広報のツイートを盛り上げ、マーケターのスポットページ公開を手助けし、サポート的な対応もする。間を?ぎながら『いつでもどうぞ』という間口の広い企業だと感じてもらえるようにしたいです」

“人”を感じるツイートは、サービスと重なり周囲に親近感をいだかせる。この潜在顧客向けに見える対応は、実はサービス利用者の離脱抑制力としても機能しているのだ。オーナーであれば他社が乗り換え打診の営業に行っても「akippaの担当さんと仲がいいから」と断る場合もあり、また、利用者なら競合の情報を提供してくれる場合もあるという。まさに他社に浮気させない『かすがい』。顧客拡大の可能性を開く対応は、既存ユーザーの定着も促し、結果的にアンバサダー候補の分母を増やすことにもなるのだ。

対話をしながらユーザーの要望を反映

他社サービスを利用したというユーザーの声に反応を入れつつ、マーケティングチームに情報共有。市場調査を行ってもらい、最終的に価格に反映させている

 

人にこだわる社風と施策

こうした「人にこだわる」施策は、同業他社と比較するとある種特殊に映るのではないだろうか。曰く「ネット企業なのに全然スタイリッシュじゃない」人間味あふれたスタンスは、同社の成り立ちや社風にも関係があるという。

「上下のないフランクさ、苦しい時こそ目の前のことを夢中でやる。粘ることなら負けない。そんな社風の影響はありますね。昔からサービス運営に関わる契約ごとも、価格や利点と同じレベルで『担当を好きになった』と成立したものが結構ありますから」

シェアパーキングサービス業界では断トツの1位。この理由は、利用者が目の前にいることをつねに考え、いかに誠意を持って対応できるかに注力してきた経験と信念の結果だ。

操作はいたって手軽な予約画面

利用者の予約画面。駐車場検索と予約が行える。詳細ページには周辺環境やバック入庫、建物の特徴などの諸注意が掲載される。オーナーが入力しているため記載内容の充実度は異なる。現地ではコーンが目印

対応駐車場をマップで表示

渋谷~新宿の山手線沿いにあるakippa駐車場分布図。15分単位の価格が表示されており、メイン駅から1~2駅先では料金にもかなり差が出る。利用者の頭の使いどころだ

駐車場オーナーの離脱率が減り、営業活動の具体的な改善点が見え、サポートチームの親身で人間味溢れる対応が際立っていく。今後の目標は、エンゲージメントを強めながらこのサイクルを回していくことだ。アンバサダー制度が定期的になれば、相互の連携も強まるはず。業界一位を貫き、他社との差別化を図る施策が本格的に動き出すのもそう遠いことではないだろう。

首都圏の駐車場需要

都心の駐車需要ヒートマップ。郊外でも駅前の幹線道路などでは需要が高いことがわかる

 

教えてくれたのは… 藤野佳那子
akippa(株) サポートチーム
  • URLをコピーしました!
目次