
Web制作会社におけるAI活用
ワントゥーテン
顔認識や表情認識でユーザーに応じたコミュニケーションを

「麦とホップ The gold」のコンビニエンスストア限定発売缶(※一部取扱いのない店舗あり)に貼付のシリアルコードを入力すると遊べるデジタルコンテンツ。AIがユーザーの顔写真を認識し、オススメのバーチャル飲み友をマッチング。麦とホップ The goldを飲みながら、バーチャル飲み友とのチャットの時間を楽しむことができる
高い技術力で、Webにとどまらずさまざまなデバイスの開発も手がける「1→10(ワントゥーテン)」。同社がAI開発に取り組んだきかっけは、5年前のことだという。
「2012年にGoogleの研究するAIがYouTube動画から猫という概念を認識したというニュースがきっかけとなりました。これはディープラーニングの走りですが、大量のデータから特徴を把握するということに驚きました。現在では、AIは画像認識・音声認識・音声合成・表現など機能を絞った分野で大きな成果をあげていますが、これからはさまざまな分野を横断するようになると思います。ロボットやAIという観点では、人間に匹敵する知覚を有することも不可能ではないことに、大きな魅力を感じています」
そうしたAIの魅力を、どのように制作案件に取り入れているのだろうか。
「AIはバズワードとなり、たくさんのご相談をいただいています。ただ、現在の第3次AIブームは、ディープラーニングが基本にあるため、弊社がよく担当させていただく広告などのキャンペーンサイト案件とは、あまり相性が良くないように感じています。ご依頼からリリースまでのごく短期間でAIに学習させることができる特徴は、それほど多くないと考えているからです。ただ、顔認識や表情認識といった画像認識は、スケジュールに収まるよう、技術観点・表現観点の双方でご提案させていただいています。また、広告案件の場合は、AIに学習させた結果をわかりやすく表現に落とし込むことにいつも難儀します」
そうしたAI案件には、どのくらいの予算が必要になるのだろうか。
「内容によりますが、弊社では数百万から数億円まで見積もったことがあります。たとえば、AI が学習するデータをご用意していただけるか否かで予算は変わってきます。データが元々あれば、大企業でなくても導入可能だと思います」
AIの浸透で、Webやアプリのクリエイティブも変わっていくのだろうか。
「商品やプロダクトといったコンテンツは、サービスが向上していくと思います。しかし、Webサイトやアプリのユーザー体験という観点では、大きな発展はないように感じています。AIによってユーザーのデータ取得が今以上に増えることが、難しいと考えているからです」


「クロレッツ」の商品訴求と販売促進に繋げるための、AIと連携したジェネレート動画コンテンツ。ディープラーニングを応用し、オリジナルAIを独自開発。AIが顔写真からユーザーの恋愛タイプを診断し、その結果から2人の玉木宏さんから言い寄られる、自分がヒロインの妄想ドラマ動画を生成できる

面白法人カヤック
AIで人間や生活を面白くする

昨秋オンエアのドラマ「世にも奇妙な物語」の話題化施策として、マイクロソフトの女子高生AIりんなを女優デビューさせるというニュースを発信。LINEでりんなのアカウントに同ドラマの話題を振ると、「当日一緒に見ない?」とお誘いが入り、「見る」と答えると当日の放送5分前にりんなから案内が来るといった仕掛けを実施。AIがユーザーと「一緒にテレビを見る」体験を提供した
最先端の技術と一歩抜きん出たアイデアで話題を集めるプロジェクトを多数発信する「面白法人カヤック」。同社では、「AI部」を発足している。
「『AI部』では、問題解決や生活を便利にするというよりも、人間を楽しませることや生活を面白くすることを実現するためのAIの研究・開発に励んでいます」
AIに関する特許も出願中だという。
「AIの膨大なニューラルネットワークを最小単位に分散構成するためのアーキテクチャーに関する特許の出願を行いました。このアーキテクチャーでは、必要な最小のビット長に合わせることができるため、通信インフラで繋がっている端末を使ってニューラルネットの分散処理が可能になります。つまり、ハードウェアの物理上限値を超えたニューラルネットを構築できます。その結果、膨大なインフラコストを必要とせず、弊社が開発するAIを用いたサービスを安価にユーザーが利用できるようになります」 技術的な話は難しくなってしまうが、安価に利用できるようになるのは興味深い。実際、クライアント企業はAIにどのような反応を示しているのだろうか。
「まだAIを用いて何ができるのか想像がつかないケースが多く、クライアント側からの依頼はそこまで多くありません。しかし、弊社から施策の一つとしてAIを提案すると反応はよく、関心の強さを感じます。導入の予算感は案件次第なので一概に言えませんが、既存システムのカスタマイズなどで、比較的簡単に導入することもできます。AI技術はこれからさらに伸びるものだと思いますので、今後より体験の幅が広がると考えています。『AI部』でも、さまざまな面白い体験を提供していきたいと思っています」

ティファナ・ドットコム
業務効率化とインバウンド対応を一挙に解決

カスタマーからの問い合わせに音声やテキストで返答できるKIZUNA。大規模ECサイトの問い合わせ窓口に導入された際は、よくある質問やパターン化できる内容はすべてAIで対応したところ、コールセンターへの問い合わせ数が減少し、人件費を月間3,000万円削減することができた
クライアントの「売り上げをアップさせる」ことを理念とする「ティファナ・ドットコム」は、近年AIによるサービス提供にも力を入れている。
「AI事業を立ち上げたきっかけは、“業務効率化”と“インバウンド対応”のニーズが高まったことでした。昨今、長時間勤務が問題視されると同時に、人材不足も深刻です。限られたリソースで業務効率化を実現するために開発したのが、人工知能(AI)会話型エンジン『KIZUNA』でした。自然言語処理による聞き返し機能によって自然な会話ができ、日本語・英語・中国語・韓国語の4カ国語に対応しています」
コールセンターなどの人件費削減はもちろん、バイリンガルスタッフを確保する必要もなくなるというわけだ。
AIには、まだ高価な最先端技術というイメージがあるかもしれないが、このようにパッケージ化したサービスにすることで、中小企業にとっても無理のない導入コストを実現している。
「人工知能の中には、導入・運用コストが最終的に数千万~数億円単位かかるものもありますが、KIZUNAは月額38万円から運用できます。昨年のリリース以降多くの引き合いがあり、コールセンターや接客窓口を持つ企業、ECサイトや小売りなど、BtoC企業の関心が強い印象です」
同社では、Webサイトのリニューアルも得意としている。AIの浸透により、既存のWebデザインへの影響はあるのだろうか。
