[ビジネス編]仕事効率が劇的に上がる、数的センス

仕事のデキに影響する、数字の力

ビジネスと数学のかかわり方を研究し、「ビジネス数学」という新しいジャンルを開拓して約10年が経ちます。「ビジネス数学」の講座や企業研修、検定試験などを通し、多くのビジネスパーソンと接する中で、仕事ぶりがちょっと残念だなと周囲に思われがちな人に共通する、“あること”に気づきました。それは、数字を基にものごとを考え、判断する能力がやや低いということ。数的センス、数字リテラシーがまだまだ磨かれていない人は、「一生懸命に取り組んでいることは認めるけれど、何を伝えようとしているのかわからない」という残念な印象を与える傾向があります。彼らの話を聞くのは、内容を一つひとつ紐解く必要があるため時間がかかります。忙しい上司や先輩が積極的に受け入れることはないでしょう(20)。しかし、「会話に数字を入れて」声をかけることができれば、おそらく状況は変化します。この変化こそが、「ビジネス数学力」を向上させる第一歩です。

ビジネス数学力は「把握力」「分析力」「選択力」「予測力」「表現力」の5つのスキルを駆使することで、その力が発揮されます。たとえば残念なビジネスパーソンに、グラフ作成の演習問題を出すと、漫然とExcelのグラフツールでグラフを作ります(21)。なぜこの様式のグラフにしたのですか? と問うと「なんとなく」と答えます。グラフは、「分析力」を駆使してデータを把握、分析したうえで、提案したい内容や伝えたいことをわかりやすく盛り込んでこそ役割を果たします。受け手が説明を受けなくても、判断基準や根拠を読み取れる表現とは…と考える意識、つまり「表現力」を持つことが大切です。

 

ビジネスの効率を上げる数字との付き合い方

計算ソフトを信じすぎるのも、残念な人の傾向です。ソフトで計算した数字をそのまま資料に使ったら、実は数式が間違っていて大きな損失を出してしまった、ということも起こりかねません(22)。また、「割合」に対して苦手意識を持っている人が意外に多い。これは数字を記号だと思っていたり、「数式」で考えていることが原因です。仕事ができる人というのは数字を扱うとき、いきなり数式を用いるなどして正確な数字を求めません。「だいたいの概算としてこのくらいの数字(数値)になるだろう」と、「把握力」を活かして全体を捉えたうえで、その範囲内で考えています。ビジネス上で扱う数字は学問の数字とは違い、必ず単位があり、実物実体があります。その実物実体を含めて数字をビジュアル的に捉えることが、数字と上手に付き合うコツであり、ビジネスの効率を上げる秘訣です。

仕事をしていると、メリットとデメリットを比較し見極めて、スピーディーに決定を下していくような業務も多々あります。そのような場面でも、数字の力は大いに役立ちます。たとえば、人材選考で誰を採用するのか、どの企業と取引をすると売り上げが拡大するだろうかなど(23)、失敗、損失を防ぎたいときにこそ「予測力」「選択力」のスキルを活用して、論理的に選択してほしいものです。

 
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